今回は(財)日本ダム協会が主催する“東北ダム巡りツアー”(10月22日−23日 ダムマイスター研修会「東北のダムを巡る」)に同行させて頂いたということで、その時の感想などを“一ダムフリークの視点”から紹介させて頂きたいと思います☆
…とその前に当日の天候ですが、両日とも雨時々曇り。とても『ダム巡り日和』とは言えない空模様でした。 まぁたまにはそんなダム巡りも良いじゃあないですか! “水の染み入るコンクリート色”ってのもなかなか味わい深いものです。
では今回訪問したダムを順を追って見ていきましょう!!
・胆沢ダム[建設中](ロックフィルダム・岩手県奥州市)
…まず1基目はコチラ!ロックフィルな『胆沢ダム』でございます♪ この写真だけ見ると完成しているように見えるかも知れませんが、今まさに建設中です。 堤高132メートル・堤頂長723メートルのダイナミックな堤体は、完成すれば『徳山ダム』(岐阜県)に続き国内第2位の堤体積になるとのこと!! いやはや。こんな巨大ダムの建設現場に訪問できるなんてかなり幸せでございます☆
…普段でしたらダム付近の『胆沢ダム・学習館』までしか行くことはできませんが、今回はダム関係者の皆様のご協力の元、なんと現場の中までも見学できました! 堤体内部(写真下)にも立入ることができたのももちろん嬉しいのですが、今回印象に残ったのは、建設に使用した『90トンダンプ』!!!!(写真右上) タイヤだけで2メートルはあろう代物でした! いやー、ダムを1基造るってのは本当に凄いことなんですね? 全てが“規格外”の想像を絶するものでした!
…ちなみにこの写真の場所は上流側…つまり完成すればダム湖になる場所です。 こ、このアングルからダムを見ることができるなんてっ!!
胆沢ダムの完成予定は2013年。次にここを訪れるときはもう完成しているかも知れませんね☆ ということで、今まさに“詰めの作業”を行っている非常に熱いダムでございました。
・石淵ダム(ロックフィルダム・岩手県奥州市)
…胆沢ダムでの興奮が冷め止まぬうちに到着した次のダムはコチラ!先程のすぐ上流に位置する『石淵ダム』です♪ なんとこのダムは“日本初のロックフィルダム”(竣工1953年)である上に、胆沢ダム完成と同時に姿を消す(水没する)ダムでございます!!!!
う〜ん。非常に歴史あるダムですが、もうすぐこの勇姿も見ることができなくなってしまうんですねぇ…。 残念なのは確かなのですが、ここまで来た以上はもう前に進んで行くしかないですよね?
…戦後まもなく着工(1946年)したこともあり、どこを見回しても非常に年季の入った造りとなっていました。 取水塔(写真左上)は現在のそれとは大きく異なり、高さの違う取水口が複数付いたものでした!このタイプは自分は初めて見たなぁ…。 また、ダム下流域は2008年の『岩手・宮城内陸地震』の傷跡がまだ残った状態も一部あり、堤体にはその際の点検用に取り付けられた“単管パイプの足場”が残されたままでした。(写真左下) ちなみに写真右下は、案内して下さった管理所の方が身につけていた“熊対策用の鈴”です。 自分もこの先ダム巡りを続けていくのであれば…う〜ん。やはり用意しておくべきだな。
※天端より上流側を臨む …さて。この写真の右上、小高い場所に“青い印”が見えるのがお解かりでしょうか? 実はこの高さが“胆沢ダムの常時満水位”(平常時の最高水位)です。 胆沢ダムが完成…試験湛水を行うと同時にこの景色も見ることができなくなる訳ですが、役目としては“来年の田畑への水の供給を果たすまで”とのこと…。
何て言うか声を掛けてあげるなら、 「お疲れ様!あともう少しだけどヨロシクね☆」…で合ってるのかな? ちなみに水没後は胆沢ダムの“貯砂ダム”的な立場で静かに湖底から見守ってくれるそうです。
このダムは今回のツアーで自分が一番印象に残ったダムだと思います!
…さてさて、ここからは2日目に突入。 まずはなんと“日本に12基しか存在しない”というこんな珍しい型式のダムからスタートです♪
・湯田ダム(重力式アーチダム・岩手県西和賀町)
『重力式アーチダム』というのはその名の通り“アーチのフォルムをした重力式コンクリートダム”のことで、構造的には“両サイドの岩盤の力と自らの重みで水を堰き止める”という、美しさと力強さを両方堪能できる何とも得した気分になれるダムです(笑)
と言っても別に最初から狙ってこの型式にした訳ではなく、当初は『アーチ式コンクリートダム』の予定だったのですが、建設時に地盤的な問題が発覚し今の型式に変更されたそうです。
これまで自分が訪問してきたダムの中だと、埼玉県秩父市の『二瀬ダム』なんかもこの重力式アーチという型式でしたね☆
ちなみに竣工は1964年。建設中の胆沢ダムは別として今回訪問のダムはどこも年季の入った所ばかりです。
…ここ湯田ダムでもダム関係者様のご好意で堤体内(監査廊)の見学ができました♪(写真上部) ダムの内部は確かに涼しいのですが、湿度と階段の上り下りが多い移動で結局暑い思いをしたかな?(笑) 写真右上はなんと“コンジットゲート室”(常用洪水吐)での様子です! 監査廊は見る機会があっても、ここまで立入ることができるのはなかなかおいしかったですね♪
ダム湖(写真左下)の名前は『錦秋湖』 周辺の山々はちょうど色づき始めた位で、もう少し経てばその名前の通り紅葉で更に美しい景色を見せてくれていたのではないでしょうか☆
・田瀬ダム(重力式コンクリートダム・岩手県花巻市)
…さて今回の東北ダム巡りツアー、最後に訪問したのがこちら『田瀬ダム』でございます♪ あ。ここまでかなり簡単に書いてますが、ダム一箇所につき3時間位滞在していましたので実際はかなりのボリュームです(笑)
ちなみに先程の湯田ダムにいた時、カメラの予備バッテリーを取りに途中でバスに戻ったのですが、バスの運転手さんには「みなさんホントにダムが好きなんですねぇ…」と“お褒めの言葉”をかけて頂きました! …やったね☆
※天端より中秋の下流域を臨む 田瀬ダムは国直轄ダム第1号として昭和16年に着工したそうですが、太平洋戦争の激化に伴い3年後に工事は一度中止に。 戦後、台風による周辺被害を考慮し更に大きくした上で昭和29年に完成したという、なかなか波乱万丈な一途を辿ってきたダムです。 ここでもダム関係者様のガイドの元、監査廊の中を見学したり、普段では立入ることができないダムの下流直下まで足を運ぶことができました。
…こちらは堤体内の管理用で使われているケーブルカーです。 普段はダムの外観だけで満足してしまうので、“監査廊に入った”ということでもう十分になってしまうのですが、今回のツアーでダムの内部を“普通に”歩き続けていくにつれ、こういった設備一つ一つにも興味が湧いてきたような気もしました。
今回は普段一人で出かけるダム巡りとは異なりかなり特別だったのは承知ですが、実際にもっとこういう機会を増やして“多くの人に広く公開してあげて欲しい!”とも同時に思ってみたり…。
て言うか、ダムの役割や必要性を伝えるのであれば、言葉だけじゃどうしてもわからない部分も多いですからねぇ…。
※ダムカード …あとこれは今回全てのダムで共通していたことですが、堤体直下に行くと(自分も含め)皆さん全員“ダム大撮影会”となっていました(笑) やっぱりこのアングルからがみんな見たいんですよね☆ 中でもここ田瀬ダムはどうしても木が立ち塞がって皆さんかなり苦戦されていたご様子。
「やっぱりダムカードの写真が一番かもね…」
以上、『東北ダム巡りツアー』の個人的な感想でございました☆
いやはや。散々言ってきましたが、本当に貴重な体験だらけで、自分にとっては忘れることのできない素敵なダム巡りができたと思います!
…ま。でも先程も話しましたが、ぶっちゃけ今回はかなり特別扱いですよね(笑)
こういう体験がいつでもできる訳なんかありえないし、実際は個人で訪問して頼んでも大体断られるだろうし…。
だからこそこのツアーに参加した意義ってのも十分ありますが、じゃあこれに参加する機会が無かった多くのダム好きの人は実際に見ることができないのか?…て話な訳で。
う〜ん。いつ行ってもこういう体験ができれば良いのになぁ…。 現実的に難しいのはわかりますが、せめてもっと開放する機会・条件を増やして欲しい!
今回のツアーに参加できた喜びと同時に、一方ではそう思っていたりもしたのでありました。
|