平成26年10月18日(土)、ダムマイスター研修会「浅川ダム見学会」が行われました。今回の参加者は、14名(うち協会より2名)です。全国的に秋晴れに恵まれる中、長野では少し寒さを感じる一日となりました。また、今回の見学会には、NHKの取材スタッフも同行することになりました。近日、インフラ見学特集番組の中で全国放送が予定されているそうです。
NHKの取材スタッフ
1.現場事務所
最初に現場事務所において、浅川改良事業の概要とダム建設工事の現況について詳細な説明がありました。また、浅川がかつては危険な天井川であり、その改修事業の経過については特に力点が置かれました。
浅川ダム現場事務所での説明 浅川ダムは、今年7月に本体の最終打設を完了し、現在はダム完成への最終段階に入っています。このダムの建設に関しては、過去に複雑な経緯がありました。ダムサイトは、長野の市街地に本当に近いところにあります。
日没後の工事現場 日没後、堤体上流側から下流(長野市内)方向を望むと、市街地の灯りが目前まで迫っていることが分かります。また、想定される氾濫区域には、北陸新幹線の車両基地など流域外の住民にとっても重要な施設があります。浅川の氾濫から生命と財産を守るためには、やはり、この場所にダムを作らざるをえない・・・これが正解だと思います。
浅川の想定氾濫区域内にある長野新幹線車両センター(北陸新幹線車両基地)
2.天端橋梁
見学者一行は、徒歩で天端橋梁に移動します。貯水池側を見ると、赤白看板でサーチャージ水位の標高が示されていました。建設中のダムでは、もう一つの青白看板で常時満水位を示すのが通例です。しかし、浅川ダムの場合は、平常時は全く水を貯めないため、青白看板は設置されていないということでした。
天端橋梁より貯水池側 下流面は、非常用洪水吐の左岸寄りに常用洪水吐きが設けられさらにその左に魚道が設けられています。非常用洪水吐右側の突起物は、バルブ放流室となるものです。このバルブは試験湛水時のみ使用されるということです。
天端橋梁からの浅川ダム下流面 堤体直下は、現在のところ工事関係者以外立入禁止となっていますが、完成後は一般開放されるそうです。工事用に供用されている仮設橋の直下には、新しい橋が設置されます。すでに橋台の一部が完成していました。その橋の上からバルブ放流を行っている浅川ダムを見学できるのは、試験湛水期間のみということになります。
浅川ダム左岸部 堤体左岸部のコンクリートの色が少し違う長方形の部分が、最終打設が行われた場所です。
3.貯水池側
浅川ダムのコンクリート打設で3年近く活躍してきたタワークレーンはまもなく解体準備に入ります。オペレーション室は、冷暖房完備・トイレ付のもので最新鋭の設備であるということです。
タワークレーン タワークレーンの足元には、浅川を転流させるための一次締切堤がありました。
一次締切堤上流面 この一次締切堤は、ダム竣工時にはスリットが入れられ透過型の砂防えん堤とほぼ同様の外観に変更される予定です。その後は、主として流木を捕捉する設備として利用されるそうです。
一次締切堤下流面
4.常用洪水吐き内部
堤体左岸直下の仮設通路から常用洪水吐き内部に入ります。
堤体直下より常用洪水吐き内部へ 魚道と常用洪水吐きの呑口側(堤体上流面)は同一です。しかし、堤体内は魚道の部分と常用洪水吐きの部分が画然と分離されていました。見学者が歩いている部分が常用洪水吐きの流路となります。
常用洪水吐き内部、前方が上流面、向かって右側(堤体左岸側)が魚道 常用洪水吐き流路の部分は下流側に向って上り勾配が付いており、水量が少ないときはその勾配に阻まれる形で、水は魚道側のみを流れる構造になっています。水量が多いときには、その勾配を越流することで、常用洪水吐き側にも通水する仕組みになっているそうです。すなわち、人の手による操作は全く必要がないということです。
常用洪水吐き内部に設置された銘版 常用洪水吐きの流路の部分は、ステンレスでライニングされており砂礫によってコンクリートが摩耗しないように施工されています。内部に設置されている銘版には、「試験湛水用ゲート」の文字も刻まれていました。
5.おわりに
今回は、普段立ち入ることができないような場所まで見学させていただきました。最後にはなりましたが、貴重なお時間をさいて対応していただいた長野県浅川改良事務所と浅川ダムJV工事事務所の皆様にこの場をお借りして深くお礼を申し上げます。
夜間も作業が進められる浅川ダム 『100年かけて築いた財産が100年に一度といわれるわずか数時間の豪雨ですべて流出した。』今年もこのような報道が目立ちました。いつ発生するとも分からない災害から、住民を守るために浅川ダムの工事が日夜進められています。 浅川ダム現場では、これまで無事故で工事が行われてきたそうです。完成までにはまだ相当の時間が必要です。安全第一で工事が完了し、竣工の日を迎えることを願ってやみません。
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