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ダムマイスター東北研修会報告

安 部  塁
 
1.はじめに

 平成23年10月22日〜23日にかけて、東北地方のダムを巡るダムマイスター研修会が行われました。その内容をご報告いたします。この研修会について当初、案内のメールをいただいたときには、レンタカーを利用して見学をする内容になっていました。小規模な見学を想定していたのかもしれません。しかし、予想外に参加希望者が多かったためかバスをチャーターしての研修会となりました。
 この研修会では日本ダム協会さんはじめ関係諸機関による格別のはからいで通常見学が困難な場所から、各ダムを見学できることになります。

見学予定のダムは、次の通りです。
*初日
 胆沢ダム…建設中
 石淵ダム…胆沢ダムの完成により水没
*2日目
 湯田ダム…監査廊及び堤体直下からの見学
 田瀬ダム…監査廊及び堤体直下からの見学

 バスは所定の10時15分に東北新幹線北上駅前を出発しました。バス中、ダム建設の記録映画を鑑賞し、所々で竹林先生に解説を加えていただきます。現在、東北自動車道は被災者車両無料化の影響により、料金所付近での大渋滞が日常化しているそうです。このため、一般道を通るルートで胆沢ダムに向かいました。前日までの天気予報では悪天候が予想されていましたが、何とか小雨で済むような雲行きです。


2. 胆沢ダム

 胆沢ダムは、わが国最大級の堤体積となるロックフィルダムです。
 まず、はじめに胆沢ダム学習館において資料やダムカードなどが配布されました。展示の模型を用いてダムの役割などの説明を受け、その後、現地への移動となります。胆沢ダムは、堤体・洪水吐工事はすでに完成しています。2012年の試験湛水に向けて取水設備・放流管設置など最終的な工事が進められていました。保安帽が貸与されバスは、いよいよ現場に向かいます。場内となりますので、バスの運転手さんも保安帽を着用することになります。

 堤体直下には、電源開発さんによる発電所が建設されるそうです。
 かつて排水路(転流工)として利用されていたトンネルに吐口から入ります。
 トンネル内では放流管の設置工事が進められていました。「放流管」といっても直径4メートルもある大きな管です。当日は、この放流管を上段放流管から下段放流管に分岐させるポイントの工事を見学させていただきました。


胆沢ダム放流管設置
 トンネルは、NATM工法で掘り進められたらしく、壁面にこのようなものがありました。


胆沢ダムトンネル
 さらに監査廊への見学となります。漏水計などの計測機械が設置されています。

 建設重機なども直接手に触れて見学することができました。胆沢ダム建設では、それぞれ運搬重機にGPSアンテナが装備されました。これによって、車両の現在位置が正確に把握できるようになったということです。素人の私にとってはあまりピンと来ない話ではありましたが、プロ中のプロである中村先生が、この点に大変感心されていました。
 最先端の技術を駆使して盛り立て工事が行われたそうです。


胆沢ダムダンプカー(90t)
 胆沢ダムは、東日本大震災の直接の被害は受けなかったものの、震災直後の一時的なガソリン不足のため資材の輸送に遅れが生じ、工程に影響があったということでした。

3.石淵ダム

 下流の胆沢ダムが完成すると石淵ダムは完全に水没することになります。胆沢ダムが完成すると水没することになる管理支所で資料一式をいただき、堤頂部へと徒歩で進みます。普段は閉鎖されているロック堤体部の上も開放されました。現在は使用廃止されている排水塔も間近で見学できました。

 石淵ダムは、平成20年の岩手・宮城内陸地震で堤体に被害を受けています。リップラップに残る傷跡がいまでも生々しさを呈していました。


石淵ダム
 胆沢ダムの完成によりこのダムが水没することはやむを得ないとしても、左岸にあるダム建設殉職者の慰霊碑がどうなるか気になるところでした。国道交通省の職員さんの話によると、慰霊碑は高台に移設するということでした。

 ダム巡りでは、慰霊碑との対面は避けることができません。私は慰霊碑に対しては、感謝の念を持って「安らかにおやすみ下さい」と手を合わせるようにしています。この日、石淵ダムの慰霊碑に手を合わせていたのは、りえま氏だけであったような気がします。彼女はおそらくどのダムでも、そのようにされているのでしょう。ダム巡りのマナーとして慰霊碑には敬意を表すべきであると思いました。

4.湯田ダム

 研修2日目は、湯田ダム・田瀬ダムの見学です。北上市内のホテルからバスで湯田ダムへ向かいます。昨日同様、一般道を利用して見学することになります。途中、石羽根ダムを遠目に見ながら湯田ダムに到着しました。

 管理支所にて資料一式をいただきます。湯田ダムは、建設途中に右岸部で大陥没が発生、しかしその事故を乗り越え設計は変更することなく竣工したということです。このため、陥没事故の痕跡は外観では全くわからないということでした。

 一行は堤頂部を見学した後、いよいよ堤体内に入ります。エレベーターが6人乗りであったため、何回かに分乗します。湯田ダムに2門あるコンジットゲートの操作内室を見学します。


湯田ダムゲート
 その後、エレベーターと階段を利用して右岸下流広場に案内されました。この研修の最大の見学ポイントです。この場所から見上げることができる「幸せ」の絶頂です。


湯田ダム右岸
 一部の見学者は、許可を得て左岸の下流にまで降りて行きました。この場所から戻るためには延々と続く階段を上らなければなりません。


湯田ダム左岸
5.田瀬ダム

 田瀬ダムは北上川5大ダムの中で最も早く着工されたダムでした。戦争中に一時中断し、戦後、工事を再開したダムでした。このダムも堤体下流直下は一般には立入できません。竣工年が古いためエレベーターは設置されておりません。保守点検用に懸垂式モノレールが昇降設備として導入されているようですが、これは2人乗りです。団体の見学は、階段を上り下りするのが早いことになります。


田瀬ダム堤体内
 監査廊コンクリートは木目調でした。これはデザインによるものではなく、製材した木板を型枠として使用したからだと思います。最近のプレキャスト工法ではありえないことです。
 田瀬ダムは、着工は石淵ダムより早いものの、完成は石淵ダムに1年程後れをとりました。田瀬ダムは、その後に誕生した湯田・四十四田・御所の各ダムに負けない総貯水量(1億4,650万立方メートル)を誇ってきました。まもなく胆沢ダム(総貯水量1億4,300万立方メートル)が完成します。しかし、最先端の技術を尽くして完成する胆沢ダムにその座を譲ることなく、北上川5大ダムの総貯水量トップの座を維持し続けます。


田瀬ダム
6.おわりに

 食事会等の部分に関しましては、割愛しましたが、中村先生・竹林先生といった重鎮のお話を聴くことができ大変有意義であったと思います。

 ダムを、『コンクリートのかたまり』という人がいます。これは誤りです。ダムには相当高度の頭脳を持った装置というべきです。ダムは自然をコントロールし、私たちに恵の水を与えてくれる巨大なロボットです。胆沢ダムが無事に完成し、東北復興のシンボルとなる日が来ることを待ち望みます。

[関連ダム]  胆沢ダム(再)  湯田ダム  田瀬ダム
(2011年11月作成)
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