先日第5回の結果が発表された「(財)日本ダム協会ホームページ 写真コンテスト」はいくつか部門があって、おそらく一番応募作が多いであろう「ダム本体」部門の他に、「工事中のダム」部門というのがある。 毎回、審査員の選評に「施行中の写真が少ない」といった趣旨の感想が書かれていて、ならば撮ってみようかという気にもなるのだが結構難しい。
まず、僕の住んでいる関東近辺に建設途中のダム自体が現在ほとんどないというのが第一の理由だが、その他にダム工事特有の理由があるんじゃないかと最近ふと思った。
「工事現場の写真」という言葉を聞いて思い浮かべるのが、去年出版された西澤丞氏による首都高山手トンネルの写真集や、コンテストの審査委員長をされた西山芳一氏によるトンネルの写真集である。切羽に見える荒々しい岩肌や壁面を埋め尽くすセグメントの模様、トンネルボーリングマシンを初めとする数々のトンネル掘削用建設重機が建設用の照明による絶妙なライティングで照らし出されて、あまりに日常とはかけ離れた風景にページをめくるたびに思わず息を飲む。
完成したトンネルも日常的かと言われれば違うだろうし、車を運転していて通過するトンネルに格好いいなって思う事もしばしばある。でもやっぱり工事現場の風景とどっちが上かと聞かれれば工事現場に軍配を上げざるを得ない気がする。ある意味、工事中のあの瞬間が風景としての「旬」なのだ。
翻って、ダムに話を戻してみる。ダムの場合緑深い山奥の渓谷が、工事によって上流でせき止め転流されて、建設地点が切り開かれる。そして大量のコンクリートや岩を積み上げられ最終的にダムの完成となるわけだ。見慣れたものから見慣れないものへと徐々に変化していくのがダム工事ということになるだろう。となるとトンネル工事の例から云えば、「旬」というのは完成した物でありそれが逆に「工事中写真の難しさ」に繋がるのではないかという気がするのだ。
とは言うものの工事中の写真というのは一度きり、昨今の情勢を考えれば工事自体を目にする機会というのもそうある事ではないと思う。だからこそ、ダム工事特有の良い風景を模索しないのはなにか損しているような気がしてくる。現場をしっかり見てみる必要があるよな、と思う。
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