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(なお表記のダムは型式、目的、堤高、総貯水容量の順で、A:アーチダム、B:バットレスダム、E:アースダム、G:重力式コンクリートダム、R:ロックフィルダム、GF:重力式コンクリートダム・フィルダム複合ダム。F:洪水調節・農地防災、N:不特定用水・河川維持用水、A:かんがい用水、W:水道用水、I:工業用水、P:発電用水、S:消流雪用水を表す)
■明治期〜大正期
明治16年 富山県発足 17年 常願寺川、庄川の改修始まる 18年 堤池(白岩川)の竣工 E A 15.7m 14.4万m3 23年 神通川等大洪水 24年 デ・レ−ケ水害調査実施 26年 常西合口用水完成 28年 デ・レーケ来県神通川の治水計画策定 29年 庄川大洪水 36年 神通川馳越線工事完成 大正元年 庄川河口部で小矢部川と分離 3年 台風、県下大洪水 8年 浅野総一郎 庄川水力電気・設立 小牧ダム建設着手 10年 野津池(小矢部川)の竣工 E A 15m 6.3万m3 13年 県営第1号、中地山、松ノ木上流 発電所開始 15年 立山砂防事業開始(初代所長赤木正雄)
この期は農業用水のためのアースダム2基が築造されたに過ぎない。明治年間大洪水52回も多発し、県民を苦しめ、予算の大半が河川改修事業に費やされた。大正末期には発電が開始され、水力発電の利用の方向がみえてきた。
■昭和初期(昭和元年〜20年)
昭和3年 奥池(白岩川)の竣工 E A 18m 2万m3 東岩瀬港第1期改修工事完成 神通川と分離 4年 真川ダム(常願寺川)の完成 B P 19.1m 4.8万m3 真立ダム(常願寺川)の完成 B P 21.8m 2.6万m3 5年 祖山ダム(庄川)の完成 G P 73.2m 3385万m3 小牧ダム(庄川)の完成 G P 79.2m 3795.7万m3 6年 祐延ダム(常願寺川)の完成 G P 45.5m 879万m3 8年 庄川流木事件和解 9年 庄川、黒部川等大洪水 10年 富岩運河の完成 11年 小屋平ダム(黒部川)の完成 G P 51.5m 212.5万m3 12年 日中戦争始まる 14年 庄川合口ダム(庄川)の完成 G P 18.5m 62.6万m3 日本発送電・設立 白岩砂防ダム完成(日本一の高さ63m) 15年 仙人谷ダム(黒部川)の完成 G P 43.5m 68.2万m3 16年 久婦須第2ダム(神通川)の完成 G P 18.6m 13.2万m3 太平洋戦争始まる 17年 小原ダム(庄川)の完成 G P 52m 1174万m3 配電統制令により北陸配電(株)設立 富山県営水力電気事業、日本発送電(株)に吸収 18年 利賀ダム(庄川)の完成 G P 31m 111.3万m3 20年 砂林溜池(上市川)の竣工 E A 19.8m 16万m3 赤祖父池(小矢部川)の竣工 E A 31m 76万m3 富山市大空襲、太平洋戦争終わる
昭和初期は、戦争の時代であったが、14基のダムが築造され、用途として、農業用水3基、発電用水11基、型式はアースダム3基、バットレスダム2基、重力式コンクリートダム9基で、平均堤高37.3m、平均総貯水容量 700.2万m3である。 とくに、発電用水ダム11基は、富山県の各河川が急流のため水力発電に適していることが実証され、今後のダム開発はこの水力発電を目的として、その重要度を占めてくる。 なお、近代的な祖山ダム、小牧ダム事業では、ダム建設によって阻害される筏流しなどの流木業者との厳しい争いが生じ、「庄川流木事件」として日本中の話題となった。そののち、全国的にダム建設に伴い筏流しの舟運が徐々に廃れ、木材は陸路輸送に変わっていく。
■昭和中期(昭和21年〜40年)
昭和23年 大池(小矢部川)の竣工 E A 15m 18万m3 土生新池( 小矢部川)の竣工 E A 16m 56万m3 24年 蛇谷池(小矢部川)の竣工 E A 19.5m 36万m3 26年 桑ノ院池(上庄川)の竣工 E A 23m 79.4万m3 電力再編により北陸電力(株)設立 27年 井田川に洪水おこる。上市川数ケ所堤防決壊 「富山県総合開発計画」の決定 青山士、県総合開発審議会の水政策委員長となる 28年 和田川に洪水おこる 神二ダム(神通川)の完成 G P 40m 866.3万m3 桜ケ池(小矢部川)の竣工 E A 26m 145.2万m3 29年 富山産業大博覧会(城址公園)の開催 大鋸屋林道溜池(小矢部川)の竣工 E A 19m 16.4万m3 神一ダム(小矢部川)の完成 G P 45m 574.2万m3 神三ダム( 小矢部川) の完成 G P 15.5m 145.5万m3 33年 菅沼ダム(神通川)の完成 G P 22m 52.4 万m3 34年 有峰ダム(常願寺川)の完成 G P 140m 22,200万m3 新中地山ダム(常願寺川)の完成 G P 35m 6.8万m3 荻野昇医師神通川イタイイタイ病は神岡鉱山の廃水と発表 35年 若土ダム(神通川)の完成 A AP 26.4m 20.7万m3 小俣ダム(常願寺川)の完成 G P 37m 76.1万m3 36年 中山ダム(神通川)の完成 G P 24m 11.1万m3 室牧ダム(神通川)の完成 A FNP 80.5m 1700万m3 38年 黒部ダム(黒部川)の完成 A P 186m 19928.5万m3 八尾ダム(神通川)の完成 G P 21m 30万m3 富山空港(神通川河川敷)開港 三八豪雪(死者15人、行方不明者1人、家屋全半壊 185戸) 39年 上市川ダム(上市川)の完成 G FNP 64m 505万m3 和田川洪水おこる 40年 太美ダム(小矢部川)の完成 G P 30.5m 35.2万m3 千石池(下川川)の竣工 E A 32m 27万m3
昭和中期は戦後経済復興から高度経済成長期の時代であるが、21基が築造され、用途として農業用水7基、発電用水11基、発電用水を含めた多目的ダム3基、型式はアースダム7基、アーチダム3基、重力式コンクリートダム11基で平均堤高43.6m、平均総貯水容量2214.7万m3である。 特筆することは、富山県の経済復興において、青山士が県総合開発審議会の水政策委員長となり、河川総合開発に尽力していることと、ハイダムの有峰ダム、室牧ダム、黒部ダムの築造がなされ、水力発電による電力供給に大きな役割を荷なったことである。
■昭和後期(昭和41年〜63年)
昭和41年 刀利ダム(小矢部川)の完成 A FAP 101m 3140万m3 42年 和田川ダム(庄川)の完成 G FAWIP 21m 307万m3 43年 是ケ谷(小矢部川)の竣工 E A 15.5m 26万m3 富山新港の開港 44年 富山県中心に集中豪雨大水害(死者5人、負傷者24人) 46年 立山黒部アルペンル−ト全線の開発 48年 第一次石油危機おこる 49年 白岩川ダム(白岩川)の完成 GF FNW 50m 220万m3 寺尾ダム(余川川)の完成 E F 29.2m 54.3万m3 千束ダム(庄川)の完成 G P 33.5m 13.2万m3 利賀川ダム(庄川)の完成 G FP 37m 270万m3 51年 高戸池(余川川)の竣工 R FA 23m 43.3万m3 53年 角川ダム(角川)の完成 R FN 58.5m 155万m3 子撫川ダム(小矢部川)の完成 R FNW 45m 660万m3 赤尾ダム(庄川)の完成 G P 29.2m 146.5万m3 56年 小口川ダム(常願寺川)の完成 G P 72m 271.8万m3 五六豪雪おこる 57年 古洞ダム(鍛治川)の完成 E A 32m 348万m3 59年 熊野川ダム(神通川)の完成 G FNWP 89m 910万m3 五ケ山トンネル(延長3072m)の開通 五九豪雪おこる 60年 出し平ダム(黒部川)の完成 G P 76.7m 901万m3 上市川第2ダム(上市川)の完成 R FNP 67m 780万m3 61年 北又ダム(黒部川)の完成 G P 35m 69万m3
昭和後期は、高度経済成長後期の時代といえるが、22年間のうち17基が築造され、用途として農業用水2基、発電用水5基、洪水調節1基、多目的ダム9基、型式はア−ス式3基、ア−チ式1基、重力式コンクリートダム9基、重力式コンクリートダム・フィルダム複合ダム1基、ロックフィルダム4基で、平均堤高47.9m、平均総貯水容量 489.1万m3である。特筆するダムは、洪水調節を含めた多目的ダムの刀利ダム、和田川ダム、白岩川ダム、子撫川ダム、熊野川ダムの完成がみられ、和田川ダムは初めて水道用水、工業用水を用途としている。
■平成期(平成元年〜17年)
平成2年 朝日小川ダム(小川)の完成 G FNP 84.5m 528万m3 台風19号による久婦須川の洪水 4年 五位ダム(小矢部川)の完成 R A 57m 880万m3 城端ダム(小矢部川)の完成 G FNS 59m 300万m3 布施川ダム(片貝川)の完成 R FNS 58.5m 135万m3 5年 境川ダム(境川)の完成 G FAWIPS 115m 5990万m3 臼中ダム(小矢部川)の完成 R FA 68.9m 695万m3 7年 常願寺川へ流す栃津川放水路の完成 梅雨前線に集中豪雨、黒部川上流に大量の土砂堆積 出し平ダム緊急排砂(3回行う) 10年 県内に集中豪雨おこる 大谷ダム(黒瀬川)の完成 E FAS 29.5m 32.5 万m3 11年 立山大橋(常願寺川)の開通 12年 湯谷川ダム(神通川)の完成 R A 63.7m 163.6万m3 「貯水池土砂管理国際シカポジュウム」の開催 13年 宇奈月ダム(黒部川)の完成 G FWP 97m 2470万m3 出し平ダムとの連携排砂実施 14年 久婦須川ダム(神通川)の完成 G FNPS 95m 1000万m3 富岩運河牛島閘門、立山泥谷砂防堰群、 庄川小牧ダムが国登録有形文化財に指定 17年 富山市と大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村合併
平成期には、10基が建設されており、用途として農業用水2基、多目的ダム8基、型式はアースダム1基、重力式コンクリートダム5基、ロックフィルドダム4基で、平均堤高71.7m、平均総貯水容量1217.4万・である。なお、三八豪雪、五八豪雪、五九豪雪の被害を受けて平成期に入り、わが国では初めて消流雪用水の機能をもった城端ダム、布施川ダム、境川ダムが完成したことは特筆に値する。 前述のように、明治期から富山県におけるダム建設は64基に及ぶが、このうち、多目的ダムを含め発電用水の機能をもったダムは39基と60%を占めており、急流河川を利用した富山県のダムの特徴を如実にあらわしているといえるだろう。 堤高ベスト5をみてみると、@黒部ダム(関西電力(株)) 186m A有峰ダム(北陸電力(株)) 140m B境川ダム(富山県) 115m C刀利ダム(農水省) 101m D宇奈月ダム(国交省)97m、一方総貯水容量ベスト5は、@有峰ダム 22200万m3 A黒部ダム 19928.5万m3 B境川ダム5990万m3 C小牧ダム(関西電力(株))3795.7万m3 D祖山ダム(同)3385万m3となってる。現在、富山県の舟川ダム(小川)と国交省の利賀ダム(庄川)の建設が進捗している。
以下、昭和36年以降、富山県所管の管理中11基のダムについて水系ごとに記してみたい。
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