第14回 日本ダム協会ホームページ 写真コンテスト
"D-shot contest"
入賞作品および選評


各委員の全体評

第14回D-shotコンテストは、348点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成29年2月23日に日本ダム協会にて行いました。
その結果、今回は下記の作品が選ばれました。




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最優秀賞
「夜明けと共に」
長野県・浅川ダム
撮影者:かみさと
<選評・西山 芳一>
  ダムは比較的高地に在るので雲海を写し込むには絶好の被写体であるにもかかわらず、今までそういった応募作品は多くありませんでした。「雲海の城郭」を撮るのと同じように、ある程度の気象の知識、何度もチャレンジする忍耐力、そして幸運に恵まれなければ作品にはならないということでしょう。でも、おそらく極寒の中、うまく撮りましたね。神々しく見える遠い山々、層になった雲海と湖面に映った光との淡いコントラストをダムの天端と左右の山が分断し、静けさの中に自然のダイナミズムを感じさせる作品です。





「ダム本体」部門

優秀賞
「コケノムスマデ」
埼玉県・二瀬ダム
撮影者:ハル
<選評・萩原 雅紀>
  この場所、知ってるんですよ。もう何回も行っているし、15キロ制限の標識も見たことあります。たぶん同じ場所から同じような向きで写真を撮ったはず、と思って自分の写真を見返してみたら、苔も標識も写っていませんでした。悔しい。いったい何を見ていたんだ、と当時の自分を問い詰めたいです。厳しい自然の中で共に過ごしてきた、ダムの頼もしさと標識の哀愁が同時ににじみ出た、すばらしい作品だと思います。


入選入選
「夕景シルエット」
宮城県・長沼ダム
「石畳の迷宮」
宮城県・青下第3ダム
撮影者:kazu_ma 撮影者:yfx
<選評・萩原 雅紀>
  こういう写真、撮りたいんですよね。空の青も綺麗だし、太陽のまわりのグラデーションも美しく、適度に散らばった雲もいいアクセント。仲良く並ぶゲートピアは、ゲートが上がったり降りたりしていて、まるで学校帰りに肩を組んで歩く男の子たち、というようなイメージが浮かびました。ダム本体部門の中では僕がいちばん気に入った、素敵な写真だと思います。
<選評・萩原 雅紀>
  石張りの堤体にこの色の逆光、という組み合わせは人のノスタルジーを刺激する鉄板の組み合わせですね。青下第1〜第3ダムはまだ行ったことがないのですが、懐かしいなあ、子供の頃よく遊んだなあ、などと錯覚してしまいました。それだけでなく、縦位置構図にしたことで堤趾導流壁や越流部が強調された、セクシーな作品だと思います。


入選
「真夜中の太陽」
島根県・御部ダム
撮影者:IronJohnny
<選評・萩原 雅紀>
  いやー惜しい!たぶん第11回とか第12回なら最優秀賞を争ったのではないかと思います。そして水面に映った太陽がもう少し堤体に近ければ、もっとテーマが明確になったかも知れません。でも、上から覗き込んでるのに下から見上げたように見える、というのはダムのスケールならではですよね。モノクロの効果も見事な、クールな作品だと思います。




「ダム湖」部門

優秀賞
「秋雪」
埼玉県・有間ダム
撮影者:しまじろう
<選評・窪田 陽一>
  雪がまだ全てを真白に覆い尽くしてはいない時節の湖の水塊を包囲する山々の地形が、まるで生き物の如くうずくまり、互いに見合っているかに見える構図を切り取った、確かな視線を感じる作品です。雪に覆われ始めた木々は広大な奥行き感を生み出し、手前の岸で水面に突き出した地形は、曇天に差し込む光を導く雲間に向かって、今にも飛びかかりそうな動きを秘めています。コントラストや明るさを調整したと思われますが、撮影者自身が現地で感得した風景に率直に迫った結果でしょう。


入選入選
「A Whiter Shade of Pale」
群馬県・四万川ダム
「摺上の目覚め」
福島県・摺上川ダム
撮影者:どらいばあ 撮影者:勝山 輝夫
<選評・窪田 陽一>
  一見、何を撮影したのか、と訝しくなりそうな作品です。タイトルはイギリスのロックバンド、プロコル・ハルムのデビュー作にして世界的な大ヒットを記録した「青い影」そのものですが、影が青く見えるという現象を実際に目にすることはあまり多くはないかも知れません。その瞬間に出会えたとしても、目撃した通りの風景として捉えられるとは限りませんが、審査員が見た印刷された画像でも、何を撮影したかは十分伝わりました。
<選評・窪田 陽一>
  摺上川ダム及び関連施設の景観デザインに携わった一人として見過ごせない作品です。このような壮大なスケール感溢れる景観を眺められる視点場を見出すことは、相当山歩きに慣れている健脚でなければできません。高校時代にワンゲル部員兼写真部員だった自分の経験を思い起こしました。評者も逆光好きですが、日の出の光芒が山陰に遮られることなく湖面に一直線の輝きを放った絶妙の瞬間と構図を捉えた作画力を讃えたいと思います。



入選
「斜陽に染まる」
栃木県・黒部ダム
撮影者:ハル
<選評・窪田 陽一>
  僅かなさざ波があるものの、ほぼ無風に近い湖面に山肌を覆い尽くす紅葉が鏡映の姿に倒立する、静謐感溢れる佳作です。沈み行く夕陽に呼応して深まり行く稜線の影が、彫りの深い表情に移ろう山々の時間を告げています。欲を言えば、ほんの僅か視線を下げて、暗がりを深め行く湖面を捉えていれば、間も無く訪れる夜陰をうかがわせる効果があったでしょう。





「工事中のダム」部門

入選入選
「未知との遭遇」
愛媛県・鹿野川ダム
「雨と紅葉と」
群馬県・八ッ場ダム
撮影者:ぺこにゃん 撮影者:広瀬あきら
<選評・森 日出夫>
  完成したら二度と覗けない、巨大放水路の上流立坑を下から見上げた写真です。ダム再開発現場の上流側ですから、水面下50mの位置で見学者はチョット恐怖を感じながら天に開いている巨大な孔を撮影したのでしょう。過酷な環境下で、このような異空間を作り上げる日本の土木技術に感嘆する撮影者の気持ちが伝わる1枚です。
<選評・森 日出夫>
  紅葉に染まる雨の一日と、一日でも早いダムの完成を目指す現場の緊張感のアンバランスが、見るものに強い印象を与える作品です。紅葉の赤と、林立する大型クローラクレーンのブームの赤が印象をさらに強めます。八ツ場ダムは、この写真が日本に掲載される頃には定礎式を終え、いよいよ打設の最盛期を迎えます。巨大な堤体は、しばらくみなさんの被写体になっていくことでしょう。




「ダムに親しむ」部門

優秀賞
「懐旧」
神奈川県・三保ダム
撮影者:DamWalker
<選評・中川 ちひろ>
  ああ、いいなあ。すごく、いいなあ。これ、ダムなんですよね? どう見ても日本庭園です。「今日はダムでのんびりしようか」そんな会話が交わされたのでしょうか。きっと夫婦であろうこの二人の後ろ姿からは、どこを見ているかも、どんな表情をしているかもわかりません。でも、このたった一枚の写真から醸し出されるふんわりとしたあたたかさ。見た人は、さまざまな想像をすることでしょう。「なんかいいな」がある写真は魅力的です。


入選入選
「夕焼けとともに」
高知県・中筋川ダム
「EL600」
栃木県・川治ダム
撮影者:サーフライダー 撮影者:yfx
<選評・中川 ちひろ>
  思わず上半分に文字を乗せて、ポスターにしたくなってしまいます。かっこいい写真ですね! この方は仕事終わりにレースの練習のために毎日自転車に乗っているそうなのですが、思わず降りて写真を撮りたくなったのでしょうね。その日の風景はその日しかないですし、シャッターを切った瞬間に、その瞬間は終わっていきます。感動したその時を写真におさめることで、見返したときにまた感情が蘇るから不思議ですよね。記憶に残すも良し、写真に残すも良し。感動した瞬間の蓄えは、多ければ多いほど豊かだと思います。
<選評・中川 ちひろ>
  こ、怖い…。高所恐怖症ではありませんが、足もとがヒヤッとします。通常、写真にすると実際に見ている景色より迫力が劣ることがほとんどなのですが、この栃木県の川治ダムの写真はその逆です。参加するとどうってことないのだとか(ホント?)。全然信じられないのですが、これが写真の面白さ! 俯瞰で撮る、横から撮る、縦で撮る、横で撮る、順光で取る、逆光で撮る、ファインダーに入れる要素を選ぶ…。自由自在に撮り方を選択することができます。何を伝えたいかによってどう撮るかが変わりますが、これは、効果的に写した一枚だと思います。




「テーマ」部門 『雨』

優秀賞
「一閃!」
岡山県・苫田ダム
撮影者:小南 宣広
<選評・宮島 咲>
  傘をも揺るがすような強い雨を感じる作品ですね。私がこの場にいたならば、今日のダム撮影は諦めて早めに退散することでしょう。そんな悪天候の中、駐車場からトボトボ歩き、シャッターチャンスを狙った努力は素晴らしいと思います。轟く稲妻が撮れた瞬間、その疲れは一瞬にして吹き飛んだことでしょう。あえて難を言うならば、堤体全体を入れてほしかったという点でしょうか。大雨でも、こんな素晴らしい写真が撮れるということを実感できる作品でした。


入選入選
「緑煙る」
福島県・摺上川ダム
「天端に映る空」
福島県・堀川ダム
撮影者:勝山輝夫 撮影者:kazu_ma
<選評・宮島 咲>
  雨のダム巡り。天端を歩くのは躊躇しますが、ダムサイトを車で周遊しているとこんな景色に出逢います。やや大粒の雨越に見る対岸の緑。雨音しか聞こえない静かな湖。動いているものは雨粒と自分だけだと錯覚してしまいそうな雰囲気を感じる作品です。ちなみに、写真は色々露出を変えて撮られたのでしょうか。もう少し暗くすると、もっとシットリとした落ち着いた仕上がりになったのではないでしょうか。
<選評・宮島 咲>
  雨というテーマとしては、もしかしたら怪しい作品なのかもしれません。しかし、雨が作り上げたと思われる水たまりが、この地に雨が降ったことを実感させるものとなっています。この作品で何より素晴らしいのが、水たまりの中の世界です。私は水たまりの中に小さな宇宙を見ることができました。輝く銀河系の太陽、アスファルトの乱反射は宇宙の星々、映った雲はいくつもの星雲。皆さんはどう見えますか?


特別賞

「春近し」
長野県・豊丘ダム
撮影者:滝沢康幸
<選評・西山 芳一>
  一瞬、ドローンによる空撮かと思いきや、堤頂から上流のダム湖をのぞき込んで撮影されたようですね。画面構成としては不安定な初々しさを感じてしまい、落選かなと思いましたが撮影者の年齢を見るとナント御年○○歳! その年齢を感じさせない唐突で荒々しい写真に絶句です。比べりゃ小僧の私も見習いたいものですね。今後も変わらぬ目でダムを見続け、撮り続け応募してください。




全体評


審査委員プロフィール
西山 芳一 (土木写真家)

  当コンテストでは、数年前をピークにダム自体の存在感を誇示するような作品が数多く見受けられました。しかし最近、スポーツに例えるとダムの個人戦というよりも自然との調和のとれた団体競技的な作品が増えてきたようです。素敵なことですね。あくまで個人的意見ですが、ダムは人為により自然の中に存在させてもらっている構造物ですので謙虚であるのが当然だと思い、私がダムを撮影するにあたって先ず考えるのはダム自体のことよりも、もちろんそれが十二分にダムを演出してくれることは分かっていますが、そのダムが存在する地域特有の気象や風土そして植生なのです。でも、スーパーな個人戦だったら見てみたいものですね。
窪田 陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授)

  何回頃までの傾向だったか、よく覚えていませんが、同じような複数の写真が異なる部門に分かれて応募されていたり、写真の内容が各部門で想定される範囲を越えていて「ここではなく、あちらの部門に応募してくれれば良かったのに」ということがたびたびあったと記憶しています。でも今回はそのようなことはあまりなかったように思います。また、過去の入賞作品を参考にしたとわかる作品も少なかったと感じました。作品のタイトルは、見ての通りの説明的なものから、写真そのものから受ける印象との関係が即座にわからないようなものまで、相変わらず千差万別ですが、ひねりすぎだと思うような表題の作品は少なかったように感じました。中でも、「ダムに親しむ」部門は、人物を含むことが多いのですが、「親しむ」という、人物あるいは人物群とダムの間に生じる関係を、写真としてどのようにとらえるか、という課題にはまだまだ考察の余地がありそうではないかと思います。それは他の部門でも言えることかもしれません。「この部門、命 !」というマニアの力作を改めて期待します。
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター)

  今年の応募総数は昨年の282作品から大きく上回り、348作品となりました。応募総数は第8回(2011年締切)の449作品をピークに、第11回(2014年締切)まで減少が続きましたが、その後は増加の傾向にあります。
  第8回までコンテストを牽引してきた先駆者の方々は、第9回頃を境に応募を控えるようになり、第11回頃からダムに興味を持つようになった方々が現在のコンテストを牽引しているのだと思います。その証拠に、過去多くの賞を受賞した方々の顔ぶれを現在はほとんど見ることができず、逆に、新しい方々が受賞するケースが多く見受けられるようになりました。
  応募された作品も過去の作品に束縛されていないものが多く、それでいて、従来の基本事項がしっかり保たれている作品であるという印象を受けました。ただし、応募総数が多かったため、中には、ありふれた作品も多く見受けられたことも事実です。
  「ありふれた作品」という表現は、プロカメラマンではない私が申し上げるには非常に心苦しいですが、それらの作品を見て、正直、嬉しさを感じました。ダム巡りを始めた当初はこの様な作品が多くなるものです。そして、何基もダムを見ることによって、心に響く作品を撮れる様になるのです。私はこれらの作品を見て、ダム愛好家が着実に増えていることを実感し、やがてこの業界を引っ張ってゆく方々が誕生する未来を見ることができました。
  最後に。魂を込めて応募して下さった作品に対し、この様な表現をしてしまったことを申し訳なく思います。ぜひ、次回も今年以上のステキな作品を応募して下さいませ!
萩原 雅紀 (ダムライター/ダム写真家)

  昨年はスケジュールが合わず参加できなかったので、2年ぶりに審査員を務めさせていただきました。なにより驚いたのは応募数の多さ。そして、見たことのないダム、見たことのない景色も多く、ドキドキしながら全ての写真を拝見しました。個人的には「このダムのこの景色を見せたい!」、というような、撮影された方のダム愛が伝わる作品が多かったように感じました。そして、僕ももっと人に見せたくなるダムや景色を見つけて、素敵な写真に残したいなあと気持ちを新たにしました。
中川 ちひろ (編集者)

  最近子どもの写真展を見に行きました。もう自由で視点が面白くて。感覚だけで撮った写真って、直球で心に響くし無敵だなと感じました。
  審査に参加させていただく機会が増えるにつれ、無意識のうちに新鮮な写真を求めている自分がいます。今回は見慣れた印象の写真が多かった一方で、よく観察しないと気づかないようなところに焦点を当てているものもチラホラ見受けられ、そのような作品に出会ったときは嬉しく思いました。
 残念ながら入賞には至らなかったのですが、ダム写真だからと言って、必ずしも迫力や力強さだけを求めているわけではありません。特に私はとても感覚的に選ばせていただいていますので、「響くか響かないか」だけです。他の人が気づかないような小さな世界に目を向けられる視点を持った人は、ささいなことにも感動したり感謝したりできる人のような気がします。素敵ですよね。
 写真は皆似たような機械を使っていますし、とりあえず押せば写ります。だからこそ楽しいし、人の心を動かすことが難しいのだと思います。頭で考えると大人はどこか似通った作品になりますが、もしも感覚だけに頼ったなら、いちばん個性が出やすいポイントだと思います。
 子どものように無邪気に、深く考えずに押してみる。ちょっと視線を下げてみる。それだけで、自分も知らなかった世界が見えてくるかも知れませんね!
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長)

  今回も、ダムの持ついろいろな魅力を感じさせてくれる作品が数多く出品されて、選考委員の一人として、また、ダム技術者として楽しませて頂きました。
  テーマ分けの特色が、今まで以上に出ていたという感じを強く受けた回でもありました。「本体部門」ならば、ダムの持つ荒々しさ、機能美、「ダム湖部門」は逆に自然に溶け込む優しさ、「工事中のダム」では、その巨大さ、厳しさが際立つもの、「ダムに親しむ」ではその語の通り、ダムを楽しんでる感じが出ているものが選出されました。撮影の技術は当然のことながら、テーマに沿ったわかり易いシンプルさも必要だと思います。

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