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◇ 6. 竜門ダム(菊池川水系迫間川)の建設

 菊池川は、その源を熊本県阿蘇郡深葉山に発し、阿蘇外輪山の渓流をあつめ、菊池市を流下して迫間川、合志川、岩野川等を合わせ菊鹿盆地を貫流し、狭さく郡に入り、和仁川、江田川等を合流し玉名平野に出て玉名市において有明海に注ぐ。その流域面積は996km2[山地部787km2(79%)、平地部209km2(21%)]、幹川流路延長71qである。

 年平均降水量は2,400o程度で、そのうち6、7月の梅雨期に年間降水量の1/3〜1/2の降雨があり梅雨前線による集中豪雨により、菊池川流域では、昭和28年6月、昭和54年6月、昭和57年7月、平成2年7月、平成5年6月、平成9年7月と、洪水がおこっている。

 竜門ダムは、菊池川河川総合開発事業の一環として、菊池川支川迫間川の菊池市龍門、斑蛇口地点に、平成13年多目的ダムとして完成した。

 竜門ダムに関する書は、菊池川河川総合事業を記した建設省菊池川工事事務所編・発行『五十年史』(平成3年)、竜門ダム工事記録の写真集西松建設・青木建設・錢高組建設共同企業体編・発行『竜門ダム建設の道』(発行年不明)、大分県の津江分水を扱った山村振興調査会編『あすの中津江を考える』(中津江村・昭和52年)がある。


『五十年史』

『竜門ダム建設の道』

『あすの中津江を考える』
 菊池川の当初改修計画は、昭和3年6月、昭和10年6月洪水を基本として昭和15年より改修を行ってきた。しかし、その後昭和28年6月、昭和37年7月には当初の計画高水流量に匹敵する洪水が発生し、洪水流量の集中増大の傾向にあり、基本高水流量改訂の必要に迫られ再検討を行った。その結果、基準地点玉名の基本高水流量を4,500m3/sに改訂し、そのうち700m3/sを上流ダム群竜門ダム等で調節し、計画高水流量を3,800m3/sとした。

 竜門ダムは、次のように四つの目的を持っている。

@ 洪水調節
 竜門ダム地点において、計画高水流量540m3/sのうち440m3/sの洪水調節を行い、100m3/sの一定量放流とし、菊池川の洪水を低減させる。

A 流水の正常な機能の維持
 竜門ダムは、渇水時において、下流の既得用水の補給等流水の正常な機能を維持と増進を図るために必要な水量を確保し、河川流況の改善を行う。


B 灌漑用水
 竜門ダムを水源地として、次のように既得用水を補給する。
(イ) 菊池川中流部の「菊池台地地区」(うてな、花房、合志の各台地)の農地約4,682haに、ダム地点より最大6.031m3/sの灌漑用水を補給する。
(ロ) 菊池川下流部の「玉名平野地区」の農地約1,380haに、白石堰地点より最大3.616m3/sの灌漑用水を補給する。

C 工業用水
 工業用水は、熊本県の有明、長洲地区、福岡県大牟田地域新産業都市に対し、白石堰より取水し、長洲、荒尾地区へ0.63m3/s(55,000m3/日)、大牟田地区へ0.527m3/s(45,000m3/日)を補給する。

 竜門ダムは、地質、地形上の観点から重力式コンクリートダムフィルダム複合ダムの型式で造られた。( )はフィルダムを指すが、その諸元は堤高99.5m(31.4m)、堤頂長380m(240m)、堤体積84.4万m3(23万m3)、総貯水容量4,250万m3、有効貯水容量4,150万m3である。

 なお、竜門ダムでは、三つの導水路が施工されており、その諸元は、立門導水路(構造馬蹄形コンクリート、延長4.2q、最大通水量10m3/s)、津江導水路(構造馬蹄形コンクリート、延長12.2q、最大通水量10m3/s)、迫間導水路(構造円形コンクリート、延長2.97q、最大通水量2.5m3/s)となっている。

 ダムの補償は土地取得面積147.3ha、建物住家87戸、非住家168棟、学校1、神社7、付替道路17.2q、発電所1、漁業権1式である。
 起業者は国土交通省、施工者は西松建設・青木建設・錢高組建設共同企業体で、事業費は1,810億円を要した。



 この竜門ダムは、次のように五つの特徴をあげることができる。

@ 県境を越えた広域的な導水計画
 竜門ダムの流域面積は、26.4km2と小さいため、菊池川本流の立門地点(立門導水路)、隣接する筑後川上流・下筌貯水池内の大分県日田市中津江地点(津江導水路)から、各河川の流量に余裕があるときに、それぞれ10m3/sを限度として、竜門ダムへ導水する計画である。

A わが国最大級の複合型式ダム
 前述のように、竜門ダムは堤高99.5m、堤頂長380mの重力式コンクリートダムと、堤高31.4m、堤頂長240mのロックフィルダムとで構成された複合型式のダムである。ダムサイト一帯の基盤岩は、古生代の変成岩類とこれに貫入する花崗岩類よりなる。花崗岩類はその組織および岩質により、花崗閃緑岩、巨晶花崗岩、花崗片麻岩類が複雑に貫入している。これらの花崗岩類の表層部は風化して、マサ化が左右岸ともあって、特に右岸台地部のマサ化は厚い所で70mに達している。これらの花崗岩類およびマサ化を覆って新生代に活動した阿蘇火山の噴出物である熔結凝灰岩、火山灰などが右岸に厚い所で30mに達し、その上部にロームが広く分布し、平坦な台地を形成している。
 このようにダムサイトの地形、地質および透水性などからダム型式の検討を行った結果、左岸〜右岸中腹までは重力式コンクリートダムの築造が可能であり、地質が複雑である右岸台地部は、ロックフィルダムとすることが、最も適合していると判明したので、ダム型式は複合となった。
 この型式のダムはわが国では数少なく、同タイプのダムの中ではわが国最大級の規模を誇っている。

B わが国初の1mリフトによる本体施工
 従来のRCD工法による重力式コンクリートダム工事では、コンクリート締固め用の振動ローラーとしてBW200を用い、一度に50p〜75pの厚さのコンクリートを締め固めていたが、竜門ダムでは、新しく開発された締め固め機械である振動ローラーのSD450を導入することにより、わが国初の一度に100pずつ締め固める施工法を採用し、良好な品質のコンクリートダムを建設した。
 この施工法は、ダム工事のスピードアップとコストダウンを図る上で、画期的な成果を上げることができ、以降のわが国のダム建設にも採用されている。
 さらに、ダム工事期間中死亡事故ゼロという輝かしい記録を達成し、RCD工法が労働安全性の面でも優れた施工法であることを実証した。

C 水質保全対策
 竜門ダムでは水質保全対策と選択取備を設置し、取水する高さを選択できるようにして、水温を考慮しながら澄んだ層から取水できるようにしている。また、浅層ばっ気、深層ばっ気ともに可能となるばっ気循環設備を設置し、水質保全対策をおこなった。

D 交通至便の里ダム
 菊池市は、阿蘇観光ルートの北の玄関口に位置し、「菊池温泉」、「菊池渓谷」の2つの観光拠点を中心に年間200万人の観光客が訪れる。竜門ダム菊池市の市街地から車で約10分、熊本市の中心部から約1時間の距離にあり、交通の便に恵まれている。竜門ダム湖周辺は、ゲートゾーン、にぎわい交流ゾーン、自然発見ゾーン、サイレントスポーツゾーン等を整備し、市民たちの憩いの場として、地域に開かれたダムとなっている。

 前掲書『竜門ダム建設の道』には、平成4年11月18日ダム打設完了式において、子供たちによるタイムカプセルを埋設した写真が掲載されている。タイムカプセルを開く日は、30年後の2022年11月18日の予定。さて、そのときは、きっと新たな感動がよみがえることであろう。


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