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訪れた日は前日の雨の影響で、5門あるクレストゲートから一斉に放流が行われていた。
轟々と音を響かせ舞い上がる水飛沫。 丸山ダムは当初、関西電力(株)の発電専用のダムとして計画がスタートし、後に旧建設省との共同事業として治水を目的に加えられ完成している。
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その為、このダムには洪水調節を操作する国土交通省の管理所と、発電をコントロールする関西電力の管理所の二つが存在する。
写真は国土交通省のダム操作室。大雨などで定められた流入量を超えると、関西電力の管理所からゲート操作のバトンを受け取る。
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監査廊の入口に掲げられる「静中動」の文字。
竣工当時の関西電力社長 太田垣士郎氏の書である。
見上げる堤体の肌は長い歳月を語りかけてくる。
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手動扉の時代を感じさせるエレベータで天端へ移動。
大きなゲートピアを迂回するようにダム湖側へクランクする天端通路。
部分的に縞鋼板となっており、足元に放流の鼓動が伝わって来るように感じた。
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天端から右岸を見ると関西電力の管理棟が見える。新丸山発電所への取水口はこの入り江の中にある。
雨による出水のため、今日の湖面は濁ってしまったが、普段の湖水は深く澄んだグリーンである。
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振り返って左岸を眺める。 森に囲まれてダム建設時のクレーン架台跡が見える。赤白のラインは「新丸山ダム」の天端位置を示す。
森の中にはかつては建設資材が残されていたが、使用できるものは関西電力が総力戦で挑んだ黒部ダムへ送られたのだという。
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放流中のゲートの上から下流を望む。視線の奥は景勝地蘇水峡。
ダム直下には2つの橋が架かる。 一つは丸山ダム建設用に掛けられたもので、馬車を想定しており現在は歩道として使われる。
そのすぐ下流の橋は、新丸山ダム建設に合わせ新しく架けられたもので、着々と世代交代が進められているのを感じる。
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クレスト部分の横顔を観る。
力強いピアが印象的であるが、上部のアーチ形状やゲート間の扶壁を渡る回廊、丸く下流側へ望むテラスなど、装飾を抑えながらもその形はエレガンスを感じさせるもので、上流にある関西電力大井ダム、笠置ダム直系の血脈を感じる部分だ。
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クレストには一定間隔で角柱状のアクセント。その上部はテラスになっている。 このテラスはダム湖側もシンメトリーに配される。
車両の往来を想定するその後の天端にはほとんど見られない様式だと思う。
青々としたつる性植物が茂る堤体は味わい深い。
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天端を後に左岸を下流へ歩くと不思議な塔が見えて来る。
これはダム建設時の骨材選別塔の遺構だそうだ。 他のダムでは見る事のないもので、何故この丸山にだけ存在するのかはわからない。
積極的に新しい工法を導入した丸山ダムの建設は、それ故に発展途上の技術も多かったのではないだろうか。
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