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洪水吐き拾弐景
《最終景》 留萌ダム
〜カスケード付の漸縮導流部〜

写真・解説:箱石 憲昭

フィルダム洪水吐きは堤体と分離あるいは隣接して設置される。留萌ダムでは,洪水吐き型式やダム型式の変更など紆余曲折を経て,最終的に堤体分離型の正面越流式洪水吐きが採用された。越流幅に対して減勢工の幅が約半分となっており,そのため,越流頂直下流で30°という急角度で幅を狭める漸縮導流部が採用されている。

北海道開発局開発土木研究所(現独立行政法人土木研究所寒地土木研究所)で水理模型実験が行われ,越流部下流にカスケード(階段)を設け,流れを加速させずに流向を変えて合流させる工夫がなされている。減勢工は,幅の狭い常用洪水吐きからの放流時に減勢工内に平面渦が発生して流れが不安定にならないよう,複断面となっている。

留萌ダムには,本体工事中に勤務する機会を得た。職員や施工業者の方々と話してみて,ダム建設に関する仕事を長く経験しても,洪水吐きの水理に携わる機会はなかなか無いであろうことを実感した。そこで,留萌ダムの洪水吐きの水理設計について調べて,職員に説明する機会をつくった。思い立つのが遅く,すでに洪水吐きはほとんどできあがっていた。説明会終了後,職員から「洪水吐きの形の意味がよくわかりました。知っていれば、もっともっと思い入れを持って作ることができたのに」と声をかけられた。うれしいけれど残念な,複雑な気持ちだったことを,昨日のことのように思い出す。

(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
[関連ダム]  留萌ダム
(2017年5月作成)
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