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洪水吐き拾弐景
《第参景》 二瀬ダムの高圧ラジアルゲートとスキージャンプ式シュート

解説:箱石 憲昭  写真:本誌編集部(撮影協力 二瀬ダム管理所)

昭和36年(1961年)に竣工した二瀬ダム。前回に紹介した田瀬ダムでは成しえなかった高水頭での部分開放流を可能とした,日本初の高圧ラジアルゲートが設置されている。高圧ラジアルゲートは米国で開発され,1950年代にデービスダムやルックアウトポイントダムに設置されたが,その直後にこの二瀬ダムにも設置されている。設計水頭約69mという当時としては世界有数の高水頭であることを考慮し,同じく高水頭に対応したルックアウトポイントダムのゲートを参考に,ゲートの振動の防止と水密の確保に対する入念な検討がなされている。その結果,ラジアルゲートの軸に偏心装置を有し,戸当たり側に額縁状に設置された水密ゴムに扉体を圧着して水密を確保し,ゲート動作時には圧着をゆるめる扉体圧着式が我が国ではじめて採用された。

クレストゲートからの放流水脈は,スキージャンプ式のシュートから空中放流される。このシュートはやや左岸寄りを向いているため,河川の線形に沿って放流されるよう,シュート台の横断形は右岸下がりの片勾配となっている。当時土木研究所で行われた水理模型実験では,この片勾配を石膏でいろいろ作り替えながら最適形状を見いだし,改めて木で製作して最終検証をしている。


(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
[関連ダム]  二瀬ダム
(2015年1月作成)
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