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堤体下流面のステップが特徴的な中筋川ダム。当初は通常の堤趾導流壁型洪水吐きとして設計された。施工段階に入り、景観上単調になりがちな堤体下流面にアクセントを加えることと、非常用洪水吐きからの越流水脈の減勢効果を期待し、階段式洪水吐きの検討が要請された。土木研究所において、水理模型実験によりステップ高さや越流部形状、さらには堤趾導流壁高が検討された。越流水脈が流れ下って加速してからステップにあたると、流れの剥離により負圧が生じ、キャビテーション発生の危険がある。そのため、越流頂からステップ化し、流れがステップ上を徐々に加速しながら流れ下るようにしている。一方、常用洪水吐きからの放流水は堤体下流面に出てきたときには既に高速流となっている。そのため、常用洪水吐き部分の堤体下流面はステップ化していない。堤趾導流壁高は当初案の6mに対して5mに低減している。
常用洪水吐きは、敷高を制限水位にあわせた洪水期用と、常時満水位にあわせた非洪水期用の2条が配置されている。しかし、下流から見るとその違いがわからない。堤体下流の開口形状をそろえるよう工夫をこらしているのである。
堤体から突出するエレベータと水位計のタワーの形状を揃えたり、堤趾導流壁の下流を埋め戻して圧迫感を無くしたり、景観上の工夫が行きとどいたダムである。
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