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昭和29年(1954年)に国直轄の本格的重力式コンクリートダム第一号として竣工した田瀬ダム。我が国初の高圧洪水調節用放流管が採用されている。洪水調節容量を確保するため,利用水深を大きくするべく堤体の低い位置に高圧放流管4条を配置している。当時はまだ高圧ゲートの製作経験が国内に無かったことから,米国から高圧スライドゲートを輸入し据え付けている。その後,同型のゲートが国内で製作され,2年後に完成した五十里ダムに国産第一号の高圧ゲートとして据え付けられている。
放流管は円形で水平に配置されており,負圧が発生しないように下流側で楕円形にしぼりこまれながら,堤体下流面に沿うように曲げられている。当時の高圧スライドゲートは全開全閉操作が基本であり,放流条数を変えることで段階的に流量調節を行うものであった。そのため,平成10年(1998年)には,堤体に削孔して部分開放流が可能な高圧ローラゲートを有する放流設備が増設され,これを併用することで,きめ細やかな流量調節が可能となっている。
戦後の荒廃した国土を相次いで襲った水害に立ち向かうため,新たな技術に果敢に挑戦した当時の技術者の熱意が感じられるダムである。
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