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1973年度に完成した百谷ダム。常用洪水吐きの敷高を常時満水位に、非常用洪水吐きの敷高をサーチャージ水位にあわせた、完全自然調節のゲートレス洪水吐きを採用した最初のダムである。流域面積が小さく洪水到達時間が短い地点でのダム計画が多くなり、洪水調節を確実に行うために採用されるようになった形式である。筆者がダムの水理設計に関わりはじめた20数年前は、ゲートレスの常用洪水吐きを「穴」に、ゲートレスの越流式の非常用洪水吐きを「坊主」に例え、このタイプのダムを「穴あき坊主ダム」と呼んでいた。が、事例が増えて当たり前になってしまったためか、最近はあまり聞かない。普段は貯留しない洪水調節専用の流水型ダムが「穴あきダム」と呼ばれるようだが、これには少々違和感がある。
非常用洪水吐きの幅の広い越流部と、幅の狭い下流河道のすり付けは、越流頂を堤体上流側に円弧状に張り出させ、下流に向かって幅を絞り込むことにより対応している。現在では堤趾導流方式によって対応することが多いが、堤趾導流方式が登場するのはこのあとのことである。
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