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洪水吐き拾弐景
《第壱景》 宮ヶ瀬ダムの洪水吐き

解説:箱石 憲昭  写真:ダム日本編集部
 

このダムの上流面には,非常用洪水吐きとしての自由越流堤が幅広く並んでいるのが見える。下流に回るとダムの真ん中に3門だけとなる。上流の自由越流頂からの流れは,一旦天端に設置された水路に流れ込み,真ん中にまとまって堤体下流面を流れ下ることとなる。高さ156mのこのダムの両岸斜面は急勾配で,堤趾導流方式の採用は困難であり,天端側水路方式が採用されている。宮ヶ瀬ダムは,この方式が採用されている数少ないダムの一つである。

高位常用洪水吐きには,堤体内の放流管を水平に配置し,堤体下流寄りに設置された高圧スライドゲートの下流に曲管を配置して,放流水脈を強制的に堤体下流面に沿わせる整流曲管付放流管が採用されている。全面レヤー工法であるRCD工法の工程への影響をできるだけ少なくするべく土木研究所で開発された形式である。

低位常用洪水吐きには,我が国最大の設計水深115mを誇る高圧ラジアルゲートが据付けられている。

1990年代に, 「21世紀への贈りもの」として工事の最盛期を迎えていた宮ヶ瀬ダムに勤務する機会を得た。毎年開催されていたウォーク大会で,多くの方々とともに歩いたあの場所は,今は静かな湖底となっている。日々高くなっていく堤体を見上げたあの場所では,多くの方々が高位常用洪水吐きからの観光放流を見上げ,その迫力に歓声をあげている。


(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
[関連ダム]  宮ヶ瀬ダム
(2014年10月作成)
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