第18回 日本ダム協会 写真コンテスト
"D-shot contest"
入賞作品および選評


各委員の全体評

第18回D-shotコンテストは、324点の作品応募がありました。これらの作品を対象に、最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を2021年7月7日に日本ダム協会にて行いました。
その結果、今回は下記の作品が選ばれました。



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最優秀賞
最優秀賞
「土砂降りのライトアップ」
栃木県・川俣ダム
撮影者:ハル
<選評・西山 芳一>

通常、雨降りでの撮影は嫌なものですがライトアップのおかげで素晴らしい作品になりましたね。勢いよく吐き出される放水の下から右岸に沿って立ち上る霧はまるで動いているかのように見えます。ダム撮影の場合は雨降りだからといって諦めず、とりあえずは行ってみましょう。霧が素晴らしい演出をしてくれることが多々ありますので。





「ダム本体」部門

優秀賞
優秀賞
「水鏡に放つ」
長野県・小渋ダム
撮影者:ハル
<選評・萩原 雅紀>

ものすごい数の応募作の中で、ひと目見て息を呑み、目が離せなくなる美しさの作品でした。おそらくここは普段は立ち入ることができない場所だと思いますが、見学イベントの際に撮影されたのでしょうか。そしてライトアップ中の夜景で放流中、しかも風のない日ということで、そうとうな計算と偶然とが重なり合った結果だと思いました。水鏡に合わさったアーチダムの堤体が蝶の羽のようにも見えて、とても印象的です。





入選入選
入選 入選
「寒河江ダムのクレストゲート」
山形県・寒河江ダム
「the border」
富山県・黒部ダム
撮影者:徳竹 孝城 撮影者:中村 直人
<選評・萩原 雅紀>

寒河江ダムの洪水吐を天端から見下ろした光景で、これは誰でも撮れる場所と構図だと思いますが、夜景でライトアップ中なのでしょうか、コンクリートと影までもがシンメトリーに強いコントラストで浮かび上がっていて、クールな色合いも含めて非常に心を掴まれた作品です。

惜しむらくは、手前の手すりの支柱部分を中心に配して欲しい(もしくは切ってしまう)のと、肝心のピントが欄干のコンクリートに合ってしまっているところ。個人的には奥にピントを合わせ、絞りを開けて手すりをボカして距離感が出す感じが好みです。

<選評・萩原 雅紀>

この横長の構図が規格なのか、意図的なものか分かりませんが、天端の道路が左下の角から右上の角に収まっていて、全体のバランスがかなり計算されたものだと感じました。強いコントラストがとてもクールで印象的です。「the border」には境界とか縁(ふち)とか縁(へり)といったような意味があるそうですが、この作品からもさまざまな「the border」を読み取ることができ、作品に奥行きを持たせていると感じました。



入選入選
入選 入選
「威風堂々」
香川県・豊稔池ダム
「整と乱」
佐賀県・厳木調整池
撮影者:ごま 撮影者:kazu_ma
<選評・萩原 雅紀>

このコンテストでもおなじみのフォトジェニックな豊稔池ダムですが、そういえばマジックアワーの景色はこれまでありそうでなかったような気がします。黒っぽい石積みの迫力のある堤体が、淡い夕日を浴びていつもよりやわらかな印象になっていると思います。偶然訪れたのが夕方だったのか、最初からマジックアワーの豊稔池ダムを狙っていたのか分かりませんが、もし後者であれば、欲を言えば空や堤体の色がもっと金色に輝いた、あざといくらいの豊稔池ダムの姿も見てみたいな、と思います。

<選評・萩原 雅紀>

どっしりと微動だにしないコンクリートの堤体と、激しく流れる越流した水の対比を狙ったものでしょうか。大雨のあとなのか、太陽の光も出ている中での迫力のある越流の姿や濁った水の激しさに圧倒されます。正面からの姿で個人的にはいちばん好きな構図ですが、定番といえば定番でバランスが取れすぎていて逆にインパクトが弱まっている気もするので、構図や切り取り方や光の加減にもっと切り込んだものを応募しても良いのでは、と思いました。



入選
入選
「Supporting character」
広島県・温井ダム
撮影者:じゅんいち
<選評・萩原 雅紀>

堤体そのものではなく、堤体を彩る脇役にスポットを当てた写真ですね。フーチング階段やその手すりは連続性が面白くて、僕もよくこのアングルの写真を撮ります。縦構図で延々とした道のりを見せることで堤体の大きさが想像できます。とはいえ素材としては単調なので、この場合たとえばキャットウォークの屋根で連続性が切れてしまうのが少し残念だなと思いました。画面が手すりでいっぱいになるくらい寄るとか、コントラストを極限まで強めてみるとか、脇役が主役になるくらい思い切った挑戦も見てみたいと思います。





「ダム湖」部門

優秀賞
優秀賞
「萌えるいのち」
三重県・君ヶ野ダム
撮影者:あさやん
<選評・八馬 智>

水位が上昇したダム湖の中に静かに佇む、新緑の葉をつけた樹木。水面が鏡となり、画面の中心に大きな緑の円が形成されています。写真の構図は静的かつ堂々としたものでありながら、自然と人為が混在するダム湖特有の雰囲気や、水が引くと見られなくなる一時的な様相が、とても繊細に描かれています。独特の世界に誘われるような、幻想的な印象を与えてくれる作品です。



入選入選
入選 入選
「うっとり・・・・。」
北海道・雨竜第一ダム
「Symmetrical」
群馬県・八ッ場ダム
撮影者:糸賀 一典 撮影者:キリブチユウスケ
<選評・八馬 智>

空に浮かぶ夕陽と湖面に浮かぶ反射が、湖畔に佇む三人の人物と樹木のシルエットを浮かび上げています。中心性、水平性、垂直性が際立つ安定感に優れた荘厳な構図ですが、人物と樹木によってしっとりとした物語性が導入されています。実際の風景を観ている人の視線を借りて、写真の印象を強化していく手法が巧みだと感じました。

<選評・八馬 智>

静かなダム湖面を一隻のボートが波を立てて進むシーンを切り取り、陽光にきらめく繊細な水面の表情が油絵のような微細な彩りを付与しています。二等辺三角形を中心かつ水平に据えるという、極めて安定的な構図をシンプルかつストレートに具現化した作品です。平面的なのに広大な空間を感じるという不思議な気分になりました。




入選
入選
「雲を湛える千苅ダム」
兵庫県・千苅ダム
撮影者:moto
<選評・八馬 智>

雲海の切れ目からダムの堤体と湖面が見えるという、たいへん幻想的で浮遊感がある作品です。山や雲を照らすやや傾いた陽の光、上空に広がる青空、そして、近景・中景・遠景に展開する紅葉した樹木も、とても美しく調和していますね。まるで観光ポスターのように完成度が高い写真は、ここに行ってみたいと思わせてくれます。





「工事中のダム」部門

入選入選
入選 入選
「渓谷に潜むもの」
宮崎県・山須原ダム
「アースダム耐震化工事」
埼玉県・鎌北湖
撮影者:kazu_ma 撮影者:太田 正実
<選評・森 日出夫>

「山深い渓谷に忽然と現れた巨大な人工物」的なSF映画のワンシーンを思わせる作品です。発電用ダムの改築工事のようですが、山奥での工事であることから施工スペースが限られ、支材の出し入れにも苦労しているのが見て取れます。遠景の深い緑の中で、大型クレーンのアームが天を指し、ダム本体がくっきり浮かび上がる様は、見るものに大きなインパクトを与えます。

<選評・森 日出夫>

近年、農業用ため池の耐震補強が進められていまして、この工事もその状況を撮影したものです。下流面の幅を厚くして、耐震化するもので、工事最終段階の表面被覆しているところです。機械ではできない細かい部分は手作業で行われ、それがダム機能確保に大きな意味を持ちます。撮影者の意図がよくわかる作品です。



入選
入選
「散水」
三重県・川上ダム
撮影者:浅山 博子
<選評・森 日出夫>

大型ダム工事も堤体上部の施工に進んでいるところで、狭隘なスペースで人も機械も忙しそうです。その写真の中で、下流面が濡れている事にお気づきでしょうか。ダムコンクリートの品質向上を目的に、施工中は上下流面、また水平の打設面もずっと濡らしておくのです。地味ですが、この現場のダム技術者が品質確保に真摯に取り組んでいるあかしを写し取った一枚です。





「ダムに親しむ」部門

優秀賞
優秀賞
「帰路も大冒険」
群馬県・中之条ダム
撮影者:ハル
<選評・中川 ちひろ>

無骨でかっこいい写真ですねえ……。ん、ナニナニこれ!! 思わず笑ってしまいました。印象に残るワンカットです。本人たちは、ただカヤックを運んでいるだけなのに、それを集団で見たときのインパクト! さらに海ではなく、ダムにいるこの違和感。笑ってしまいました。左端にある赤い橋、青と黄色のカヤックの色味をもう少し強調したら、さらにポップな印象になり、かつ、主題が明確な写真になると思います。でも、ダム写真で笑うことはめったにないので、よくぞ撮ってくれました!



入選入選
入選 入選
「滝」
鹿児島県・鶴田ダム
「デカダム」
岩手県・四十四田ダム
撮影者:kawasemi285 撮影者:yfx
<選評・中川 ちひろ>

この写真のポイントは、先頭の人が持つ、自撮り棒付きカメラが入っていることです。これがなかったら、この「滝」の大きさがそこまで巨大だという印象になりません。それに手でカメラを持っているだけならば、写真に対してあまりにも存在感がないため対比するどころか気づきません。この棒があることで、目線が自然と棒の先に行き、ああこんなにこの滝は巨大なのかと気づくのです。物の大きさを伝えるためにタバコの箱を置くアレです。ところで、自撮りでどんな写真が撮れたのか、ちょっと気になりますね。

<選評・中川 ちひろ>

パキッとした青空のもとに、マシーンのようなロボットのような、巨大な物体が突如現れたような一枚です。赤が効いていますね。偶然居合わせた人の配置もバランスがいいです。プロの写真家が何気ない街のスナップを撮るときは、この、「偶然」のバランスを瞬時に見つけます。撮るプロは、観るプロでもあるのです。ダムが主役ですが、自分が動きながら、すべてのバランスが気持ちよくなる位置からシャッターを切ってみてください。これ、縦位置だとさらに良かったと思います!





「テーマ」部門 『光』

優秀賞
優秀賞
「ススキと滝沢ダム」
埼玉県・滝沢ダム
撮影者:太田 正実
<選評・宮島 咲>

太陽とススキとダム。これらだけに光が当たって、その他の部分は闇に包まれています。太陽光の下、ご自身のテクニックで、見せたいものだけに光を当てた作品に心を惹かれました。同じ一つの太陽光で、ダムコンクリートの固さと、それとは正反対の、ススキの柔らかさが同時に表現されているところが素晴らしいです。色彩的に地味な作品ですが、それが逆に想像力を掻き立て、固さと柔らかさ感じ取らせるのでしょうか。



入選 入選
入選 入選
「緑にいぶし銀」
埼玉県・間瀬ダム
「鈍き輝き」
群馬県・草木ダム
撮影者:子持ち・アッカーマン 撮影者:子持ち・アッカーマン
<選評・宮島 咲>

濡れたコンクリートに反射する光、キラキラと輝いて美しいですね。そして、コンクリートの固さを和らげる樹々がしっかりと写り込んでいることで、穏やかな気持ちにさせられます。この間瀬ダムは、天端高欄や桁の造りも特徴的なので写真に収めたくなるのですが、あえて木の枝で隠しているのがいいですね。それにより、堤体の輝きをより引き立てています。

<選評・宮島 咲>

天端から直下にある副ダムを眺めるアングルでしょうか。光の美しさの中に、水の迫力を感じる作品ですね。ホロージェットバルブから放たれた水が、副ダムの水面を波立たせています。太陽の光が様々な方向へ反射し、まるで大海原の様です。作品のタイトルは「鈍き輝き」ですが、本当はもっと輝いて見えていたかと思います。比較として、露出を上げた写真も見てみたいと思いました。




入選 入選
入選 入選
「朝光 洪水吐を照らす」
鹿児島県・鷹巣ダム
「湖と海の水光」
長崎県・桜川ダム
撮影者:kazu_ma 撮影者:kazu_ma
<選評・宮島 咲>

まるで絵画の様な作品ですね。導流部と海。この写真の右側に草ボウボウのアースダムの堤体があるのですが、それを感じさせない綺麗なアングルだと思います。登ってくる太陽を待っての撮影は大変だったでしょう。この作品は、ただ撮っているだけではなく、色々考え、一番良いタイミングを狙って撮ったという努力がヒシヒシと伝わってきます。

<選評・宮島 咲>

ダムとダム湖と東シナ海です。ダムフォトコンテストのメインであるはずのダムは、黒いシルエットのみなので、ちょっと驚く作品に感じました。輝く海と、輝くダム湖。その間を仕切る真っ黒な堤体。ぱっと見、海とダム湖が、まるでインフィニティープールの様に繋がり、光の反射具合も相まって、ダム湖と海が同じ高さにあると勘違いしそうです。







全体評


審査委員プロフィール
西山 芳一 (土木写真家)

コロナ禍の中でもこれだけの作品数と良質な作品が集まったことは嬉しく、応募者の方々の努力には敬服しております。今回の審査ですが、このご時世ですので審査員が一同に介することができずに個別に審査し、最後に殆どの審査員がリモートということで最終審査を行いました。幾度も対応したり審査員のもとまで駆けつけたりと例年とは異なって大変だった事務局の方々には感謝いたし、応募された方々には審査の結果発表が遅れてしまったことを心からお詫び申し上げます。

さて、今回の応募作品に関しては総じて昨年よりはレベルは上がっているものの、ずば抜けて良いといったものは見当たりませんでした。審査の票が割れているのでリモートでの最終審査は大変。しかし、それぞれの写真を見るとキャンディッドなものや広告写真でも使えそうな作品などなど、ダムの写真でもかなり多様性が出てきたなと思わせる今回でした。技術はもちろんのこと、写真の歴史やダムに限らず著名な写真家の作品も見て勉強し、ダムの写真に応用するのも一考かと思いますよ。

八馬 智 (都市鑑賞者/景観デザイン研究者)

僕は今年から審査委員のメンバーに加わりました。当初はダムの写真ばかりを見る審査会の想像ができませんでしたが、表現のバリエーションの豊かさには素直に脱帽しました。この写真はどうやって撮ったのだろうか、このショットを得るまでにどんなトライアンドエラーをしたのだろうか、偶然と意図はどのくらいのバランスなのだろうか、そんなことを妄想しながら膨大な量の写真に向き合う体験は、たいへん刺激的でした。今後の機会もいただければ、楽しんでいけたらいいなと思っています。

最後に一言。魅力的な写真なのに、タイトルを見てがっかりする場面は多々ありました。表現の意図を象徴する最大の材料であるタイトルには、もっともっとこだわり抜いてほしいですね。

宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター)

今回のコンテストはコロナ禍での開催となったため、どうなることかと心配しましたが、応募作品数、応募者数とも前回とほぼ同じでしたのでビックリしたと同時に、うれしさがこみ上げてきました。作品はどれも力作ばかりで、色々と目移りしてしまいました。特に、ダム本体部門は優れたものが多く、甲乙つけがたい状況の中、泣く泣く選考したことが心苦しかったです。

私はすでに数回、このコンテストの審査委員を務めさせていただいておりますが、近年感じたことがあります。昔は、撮影者が異なるにも関わらず、同じ様なアングルの作品が多かったのですが、近年は同じ様な作品が少なくなってきていることです。これは、応募された方々の努力かと思います。一般的なアングルではダメで、奇をてらったアングルや、絶好のタイミングで撮ったものでないと、人の心を引き付けられないと感じ取っていただけたからでしょう。

また、応募者の方々の高齢化も進んでいることがわかりました。10代、20代の若い方が減っており、逆に、50代以上の方が年々増加しています。これは、参加者の流動性が低い事を意味します。今後は、若い方も気軽に参加できるものにしなければならないと考えています。

萩原 雅紀 (インフラ系YouTuber)

もうしばらくの間、自分自身が「気合を入れてダムの写真を撮」っていないような気がするので、ちょっとおこがましい気持ちで審査させていただいていて、毎度のことながらかなり消耗します。そんな朦朧とした意識の中で、やっぱり毎年思うのは「あと少しここがこうだったら、あそこがああだったら」という作品がとても多いこと。もしかすると撮影したときはコンテストを意識していなくて、締め切りが近くなってからそういえば、と手持ちの中からお気に入りを応募されているのかも知れませんが、ようやくコロナ禍も落ち着く先が何となく見えてきたところで、これからの1年、ぜひコンテストを意識した、「狙った撮影」に出かけてみてください。僕もこれまでより意識を持った1年にしてみます。

中川 ちひろ (編集者)

今回は、風景画のような美しい写真が多くて、私はとても癒されました。いっぽうで少し気になったのは、同じ方が似たようなカットを送る傾向があることです。写真は、撮って終わりではなく、選ぶ視点、「観る」こともとても大事です。選ぶことを審査員に委ねずに、どうか自分の目を持ってください。

観るポイントですが、まずは直感を大切にしてください。その後、日を分けて見返します。見続けると良し悪しの判断が鈍るので、新鮮な目を持ち続けることが大事になってくると思います。

撮るときは、たくさん撮っていいと思います。どんどん動いて、さまざまなアングルから撮影したり、引いたり寄ったりし、その中からベストを選ぶことに時間をかけてみてください。上手に撮ろうとしなくていいのです。上手な写真は、プロが撮った広告写真やカレンダーなどで見慣れているので、上手下手よりも、記憶に残る写真が見られたら嬉しいです。

森 日出夫 (Web広報委員会 委員長)

新型コロナ蔓延下で移動が不自由な中、たくさんの作品が集まりうれしい限りです。やはり雄大なダム堤体、ダム湖を見ると鬱積した気持ちも晴れる思いです。今回応募された作品を見ますと、そんな背景もあるのかダムの形を全面に出すものが多い傾向にあると感じました。18回も続くとどこかで見た構図が多くなると思いきや、新鮮に映るものがたくさんあり、みなさんの想像力には感服します。今回も十分頭を悩ませていただきました。


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