先日、いわゆるシルバーウィークに宮崎に帰省したついでに近くのダムを見てこようと思い立った。近くには瓜田ダムや広沢ダムなどがあるが、これらはすでに行ったことがあるので、まだ行ったことがないダムに行ってやろうと考えた。 そこで「ダム便覧」で調べてみると、「薩摩原ダム」というダムが割と近い。場所を確認してみようとしたら、これが「位置未確認」ダムだという。
「ダム便覧」にはそれぞれのダムの所在地が住所、緯度経度、yahoo!地図へのリンク、DamMapsへのリンク、2万5千分の位置地形図へのリンクという形で表示されている。まことに親切この上ないのだが、中には、住所は書いてあるものの、緯度経度、地図へのリンクが無いダムがある。これらは「位置未確認」ダムということで、「位置確認済ダム」の一覧表の右側にまとめてある。 ざっと見てみると、結構な数のダムが「位置未確認」のままである。中には計画中のダムもあり、これらはダムサイトが明確に定まっていないとか、もしかすると昨今の民主党政権の公共事業見直しの影響を受けて幻のダムとなってしまうかも知れない。こういうダムは別として、実在するのに「位置が未確認」というダムは何となくミステリアスな雰囲気が漂う。 こういったダムを尋ね当てるのは、まるで少年探偵団的なドキドキ、ワクワク感が伴うものである。そして、探し当てたときに新事実の発見があったりもする。
さて、「薩摩原ダム」をダム便覧(現在では既にダム便覧には掲載されていない。その理由は後ほど明らかになる)で調べると住所が出ているので、これを元に地図で探す。まぁ、これが通常のやり方だ。「薩摩原ダム」の住所は「宮崎県東諸県郡国富町大字八代南俣」とある。これを地図で探すとこの住所のあたりにそれらしい貯水池(ため池)は一つしか見あたらない。ただし、これぞと思ったダムは地図上では「籾木池」と表示されていた。 実はダム便覧には既に灰エースさんが現地で撮った「薩摩原ダム」の写真がフォト・アーカイブスに収納されているし、灰エースさんの「ダム好きさん」のサイトにもいくつも写真が掲載されている。それらにもちゃんと「籾木池」あるいは「籾木ため池」の看板が写っている。しかしどこにも「薩摩原ダム」という文字は見あたらない。堤体が「薩摩原ダム」で貯水池(ダム湖名)が籾木(ため)池なのだろうか? さて、実際に現地に行ってみた。親父から借りたクラウンにはカーナビなどという気の利いたものは付いていない。道路地図だけが頼りである。普通、ダムだと川沿いに走って行けば辿り着くものだが、「薩摩原ダム」の場合、地図で見ても現地に行っても大きな川はない。こんなところにダムがあるんだろうか?という農地の中の細い農道をおそるおそる進む。と、道ばたに「籾木池」と書いた矢印看板が見えた。よし、間違いない、と力を得てハンドルを切る。
クラウンはこういう場合、正直言って不便である。狭い道には気を遣う。しかし、親から只で貸してもらっているので文句も言えない。 慎重に車を進めていくと砂利を敷き詰めた広場に出た。先客の車が2台停まっている。どうやら釣り人らしい。バス釣りのようだ。そんなことを考えつつため池へと向かう。まずは左岸に立っている看板を撮影。これは農業用水の役割を描いたものだった。次は「わき見と徐行に心掛けて下さい」の注意看板。あとで気づいたが、「わきみと徐行に心掛けて」というのも変な言い方だ。こういった面白い看板の発見も現地探索での醍醐味かも知れない。
看板を撮り、モニュメントを撮り、石碑を撮り、堤体を撮り、ダム湖を撮り(ダム湖自体は同じ宮崎県の川南町にある「青鹿溜池」と雰囲気が似ている)、最後には、下流から堤体全面を撮ろうと、緩やかな斜面を降りていった。何とか堤体全景を撮り、この日は帰路に着いた。
後日、ダム便覧などへフィードバックすべく写真や情報を提供。裏付けを取っていただいた後、「薩摩原ダム」はダム便覧から姿を消し、現在は位置の確認された「籾木溜池」と名前を変えて掲載されている。 なお、「薩摩原ダム」が掲載されていた時点では、現在施工中の「浜ノ瀬ダム」も位置未確認であったが、籾木溜池を訪れた4日後に「浜ノ瀬ダム」建設現場にもお邪魔して、無事位置の確認を終えた。この2ダムを確認したことで、宮崎県の「位置未確認ダム」はすべて姿を消した。
|