平戸島は長崎県北部に浮かぶ島で、全域が平戸市に属しています。九州本土とは平戸大橋で結ばれているため、自動車での訪問が可能です。島の北西には、生月大橋で結ばれた生月島があります。池の上第1溜池は同島の中央部西側に位置する根獅子(ねしこ)地区にありますが、先に生月島のダム(神の川ダム、桜川ダムなど)を訪問した帰路に向かいましたので、比較的交通量が多いと思われる国道383号ではなく、山間部を走る県道19号からのアクセスとなりました。
生月大橋の入り口から30分近くかけて根獅子地区に至り、カーナビを頼りに狭い農道に入っていきます。やがて、少し開けて下方に溜池を見下ろすカーブにさしかかります。あらかじめ地図で確認していた「池の上第2溜池」だと思われます。池の上第1溜池はこの溜池の上池にあたりますので、付近に車を停めて徒歩での接近を試みます。 池の上第1溜池は、空中写真で見る限りは現在でも湛水が見られていて現役の溜池だと思われるのですが、地図上にも管理道が表示されていません。第2溜池を見下ろす位置から山道がありましたので徒歩で登っていったのですが、道は溜池の反対方向へカーブしていき、溜池方向へは向かわないようです。 一旦農道まで戻ったところで農作業をしている方に尋ねたところ、偶然にも2つの溜池の管理者の方でした。第1溜池までの道を聞いてみたのですが、わかりにくいだろうとのことで、現地まで案内していただけることとなりました。軽トラに同乗させていただき、最初に目星をつけた場所からかなり離れた位置で山道に入ります。ひどく荒れた急坂をゴトゴトと登っていくのですが、自分の車(普通車)で進入していたらと考えると恐ろしくなりました。山道は右岸の堤体下で終わっており、軽トラであればかろうじて方向転換できる程度のスペースがあります。堤体は草で覆われ、裾部は山の斜面と一体化しているようです。 管理者の方に再確認したところ、ここが第1溜池で間違いないとのことです。位置(緯度・経度)はダム便覧上のデータで合致していました。
天端に至る道はありませんので、堤体を直接登ります。天端には防獣の電気柵が仕掛けられており、意外と言えば失礼ながら、きちんと管理されているようです。 天端からは下方に第2溜池が見えています。フォトアーカイブスに掲載されただいさんの写真のとおりです。
洪水吐は流入式で、右岸側にあります。訪問時は水流はなく、歩いて渡れる状態でした。
管理者の方が突然「お猿さんもいますよ。見ますか?」と言われ、右岸から続く薮へ入って行かれました。何のことかと思ってついていくと、薮の中に小さな猿の石像が座っています。石猿は溜池の方を向いており、溜池を見守っているかのようです。子供を抱いているように見えることから、雌猿なのでしょう。池の守り神として祀られているものだと思われます。
山道を下り、今度は農道から見下ろす位置にある池の上第2溜池に案内していただきます。こちらは周囲が開けており、さほど接近に難はありません。天端は綺麗に草が刈られていました。
天端の中程に記念碑があり、隣には第1溜池と同じような大きさの石猿が鎮座しています。こちらは雄猿のようですが、山の上の雌猿と夫婦なのかも知れません。 猿の視線をたどると、山上に第1溜池の堤体が見えています。雄の石猿は、第2溜池と併せて第1溜池も見守っているかのようです。
記念碑には溜池の整備経緯が記されています。以下に表面の全文を掲載します。(■=不明)
海や港のイメージが強い平戸市ですが、平戸島中央部には棚田が広がり、たくさんの溜池が造られています。このたびは、島の農業の一端を垣間見ると同時に水神様にも会え、楽しい訪問となりました。お土産には、もちろん平戸名物のカスドースを買って帰りました。