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ダム温故知新
《第11回》 小ヶ倉ダムを訪ねて

写真・文 安河内 孝

長崎市には、日本ダム史に名を刻む本河内ダム及び西山ダムなど数多くあり、その中で少し印象の薄い小ヶ倉ダムであるが、石積の表情は黒ずみ、どっしりとした独特の落ち着いた佇まいを見せている。長崎市は港町だけあって、古いダムが良く似合う。当ダムは、1926年(大正15年)に竣工、水道用の粗石コンクリート造重力式ダムで、設計は東京市の上水道を手がけたことで有名な中島鋭治。彼は竣工前の1925年に死去している。ダムの高さは約41.2m、長さは約135.6mあり、竣工当時は日本で最も高い水道用ダムであった。

周辺は公園として整備され、市民の目にも触れ易い堰堤で、ダム直下まで行くことが出来る。この本提の下流側にはアーチ型の副ダムがあり、ずっしりした黒い本堤と、赤茶色に映える副ダムが対照的な印象を与えている。使用している花崗岩は瀬戸内産で、重厚な壁体に特徴がある。ダム及び管理橋は、2009年に選奨土木遺産に、2010年には国の登録文化財に指定されている。

黒ずんだ石積みと白い遊離石灰が作る模様は、古代魚シーラカンスの魚体を彷彿とさせる。

登録有形文化財の管理橋。橋詰めのすりつけ部も曲線を描き、細部への職人のこだわりが感じられる。
(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
[関連ダム]  小ヶ倉ダム
(2012年11月作成)
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