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ダム温故知新
《第13回》 大湊第一水源池堰堤を訪ねて

写真・文 安河内 孝

小ぶりな堰堤ではあるが、風格は大ダムにもひけを取らない。
 当堰堤は、旧海軍要港部水道として、現在の青森県むつ市に1909年(明治42年)竣工し、1945年(昭和20年)まで使われた後、当時の大湊町に引き継がれ、1976年(昭和51年)まで市民の上水道として使われた。堤高7.9m、堤頂長26.5m、貯水量5,000m3と小規模ながら、日本で初めて試みられたアーチ式の石造堰堤である。表面に見えている張石は、下北半島で一番高い釜臥山の安山岩である。石積みの施工は、遠く九州の石工を呼んだと言われている。

 設計は、東京の丸ビルなどの設計をした桜井小太郎である。桜井は、留学先のロンドン大学で建築を学んだ後、イギリス王立建築士会の試験に合格、帰国後1896年に海軍に入っている。

 アーチ式にした理由は、地盤が良くないため、荷重の分散が期待できるアーチ式を採用したものと推測される。アーチ式ダムの設計概念に基づく施設といえるかどうかは別として、「アーチ式ダムとしては我が国最古のもの」と、現地の説明看板に書かれている。

 貯水池の側壁・底面も全て石張りで仕上げられており、2001年に選奨土木遺産に、2009年には国の重要文化財に指定されている。


ダム直下のかわいらしい石橋も、いっぱしの石積みアーチ形状をしている。
(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
[関連ダム]  大湊ダム
(2013年7月作成)
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