《このごろ》
試験湛水越流を見学(その2)

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5.大津呂ダムへ

 丹生川ダムの越流は続いていたが、夕方の6時頃には福井の高浜に取った宿に着いておきたいと考えていた。できれば、その前に大津呂ダムの場所も確認しておきたい。
 そこでまだ午後1時にもなっていなかったが、丹生川ダムに別れを告げて、一路進路を大津呂ダムへと取った。ダムマニアのひろ@さんがそちら方面の道路事情に詳しいので、アドバイスを受けた結果、一般道だとかなり時間がかかりそうなので、大回りにはなるが高速道路経由で敦賀まで行くことにした。敦賀から先は一般道だ。

 高山西から連絡道に乗り、飛騨清見から東海北陸自動車道に乗る。ここから名古屋まで南下する。名神高速を経由して北陸自動車道に入り走っていくと、周囲は雪景色に変わっていった。空は鉛色に変わり、冬の日本海側らしい雰囲気が取り囲む。
 敦賀インターで降りると、そこからは一般道である。平野を走り、海沿いを走り、たまに市街地を抜ける。美浜、小浜と原発関係のニュースなどで良く耳にする地名が続く。目的地は大飯原発のおおい町。まさに今話題の町である。

 夕方5時過ぎにおおい町に入る。この辺りだろうと見当を付けて進んで行くとセメント工場のようなものが左手に見えてきたのでその方向にハンドルを切る。結果として工場自体はダムとは直接の関係はなかったが、ダム現場はその向こうにあった。道なりに進むとゲートが開いていた。誰もいない。通常ならば警備員がいる筈なのだが…と思いつつ進んでいくと、どうやらダムの直下流への道のようだった。部外者無断進入禁止という感じだったのでそこでUターン。

 位置の確認もできたので、カーナビに場所を登録し、今夜の宿へと向かう。
とにかく寝られればいいやとネットで予約を入れた一番安い宿だったが、安いだけのことはあった。宿は海水浴場の民宿集落で、狭い道が縦横に走っており、その両側に民宿が数多く建ち並んでいる。カーナビは目的地に到着したと言うが、周囲は民宿だらけ。どれが目的地なのか分からない。その後なんとかたどり着き、車中泊は免れた。

6.大津呂ダムの越流

 翌朝は、8時に大津呂ダムの現場作業所に行く約束だったので、7時半過ぎに宿を出る。8時ちょっと前に作業所に着くと、朝礼の最中であった。邪魔にならないように、朝礼が終わるまで道ばたに駐めた車の中で待機。曇天で、風が冷たい。昨日の丹生川ダムが春の兆しだったのに比べ、冬に戻ったような感じだった。ジャンパーを着込み寒さに備える。
 朝礼が終わると、こちらの姿を認めた清水建設のT所長がやってきて車を敷地の中へ誘導してくれた。
 ヘルメットと長靴を貸してもらい、今度は現地の車に乗り換えてダムサイトへ向かう。

 まずはダムの上流に設置された展望台からダム湖を一望。満々と湛えられた水は今にも非常用洪水吐きから溢(あふ)れんばかりである。堤体が下流側に出っぱった「く」の字に屈曲している様子が良く見てとれる。大津呂ダムの特徴の一つである。


 次に、堤体へ向かう。
 左岸天端には二階建ての管理用の建物がすでに出来上がっている。私の知る他のダムでは「管理所」「管理支所」といった名前が多いが、ここは「大津呂ダム監視所」と、何だか厳めしい感じがする。周辺は赤土がむき出しで、まだ周辺整備中という雰囲気が漂っている。


 次にダム直下流へ移動。減勢工周辺も今まさに施工中という感じで、両岸の護岸ブロックもまだ全てが張られているわけではない。減勢工の下流水路にはブルーシートが敷き詰められていた。コンクリートを打設してまだ間がないらしい

 放流管から一旦減勢池に放出された水は、再度ポンプアップされ、コンクリート打ちたてらしい河床部を迂回して下流側で放流されている。放流管からの水を止めればいよいよクレストからの越流となるわけだ。この時点では、減勢池の堰堤もまだ越流していない。
 放流開始までまだ時間があるので下流側から堤体左岸側を上って、天端を歩いてみた。越流部を覗いてみると、粗朶のようなものが若干引っ掛かっている。越流と共に流れ落ちてくれないと美しい水紋が見られないかも知れない。

 天端橋梁には直径2〜3pくらいと10pくらいの円が一見ランダムにあしらわれている。これもデザインの一種なのだそうだ。初めはこの○に色を塗るという話もあったとか。しかし塗らない方が良いだろう。T作業所長も同意見であった。


 10時の放流開始の時間が近づいてきた。見物人が押しかけるのかなと思っていたが、平日で、しかも今にも霙が降り出しそうな空模様のせいか、関係者以外は来ていない。
 再び下流側に降りて、越流が始まるのを待つ。10時前には少しずつではあるがシュート部下流面を越流水がうっすらと流れ始めた。
 シュート部をよく見ると、堤内仮排水路出口にコンクリートが打ってないので、裏見の滝のごとくその上を水が流れ落ちている。スケジュールの都合でこうなったわけだが、これもなかなか見ることができない光景であろう。さすがにそこに立って流れの裏側から下流を見る、などということはできなかったが。


 気づくと、減勢池から下流にバイパスさせていたポンプもいつの間にか止められ、減勢池内の水位が上昇してきた。10時40分過ぎについに減勢池からも越流が始まった。ダブル越流である。
 11時近くなると、下流面の水紋が姿を現し始めた。堤体上や右岸側から越流を眺めるなどあらゆる方向から越流を観察する。


 当初の予定では、そろそろ帰路に着く時間であったが、この日は結局一般の方は来られなかったようだ。翌土曜日にダムマニアの方達がやってくるという話を聞いたので、今夜もう一泊し、明日、ダムマニアに話を聞くことにした。
 そうと決まれば時間は充分にある。続いて午後も越流見学をすることにした。
 流れ落ちる水の模様は、見ていて飽きが来ない。美しい水の流れは人の心に安らぎを与える。


 丁度昼食を摂っていた時、にわか雨がやって来た。一番激しい降りの時が昼食時間と重なったので助かった。その後小降りにはなったものの午後は傘を差しての越流見学となった。
 雨の影響があったのか否かは定かではないが、3時頃になると、紋様が更にくっきりと際立ってきた。水紋の美しさはどのようにしたら表現できるだろうかと考えつつ、様々な構図で写真を写す。
 4時過ぎまで写真を撮って、この日はT作業所長に紹介してもらった小浜市のビジネスホテルへと引き上げた。

7.ダムマニアさん勢揃い

 翌日も、午前八時前に現場に到着。昨日から借りっぱなしのヘルメットと長靴を着用し、現場へと向かう。

 土曜日ということで、すでにダムマニアさんが2名到着し、写真を撮っていた。
 1名は一昨日丹生川ダムでお会いしたひろ@さんで、もうひとりの方は初対面だった。
 今日は昨日足を伸ばしていなかった上流の砂防ダム方面へと遠征する。
砂防ダムから沢伝いに奥へと入る道はまだ残雪に覆われていた。雪面に鹿や猪のものと思われる足跡がいくつも残っていた。


雪面に残された動物の足跡

 堤体方面へ戻ろうと歩いていると、丁度非常用洪水吐きと天端橋梁の隙間から舞鶴若狭自動車道が望めた。たまにそこを車が走る。ということは、高速道路から堤体も見えるという事になる。機会があったら見てみたいものだ。他に高速道路から見えるダムを考えてみた。まず、私の故郷宮崎の天神ダム。ここは宮崎自動車道から見える。長野道は小仁熊ダムのダム湖の上を通る。長崎道からは中尾ダム。沖縄道からは完成間近の億首ダムや漢那ダムが見える。その気になって探せば結構たくさんあるのだろう。


 さて昨日は、直下流から放流を眺めたが、今日は減勢工直下河川敷のブルーシート撤去作業があるらしく、午前中は関係者以外は立入禁止であった。しかし、ダムマニアさん達が残念がっていたので、午後の作業終了後には立ち入ることができたらしい。
 そのダムマニアさんだが、時間が経つにつれて一人また一人とやって来た。私が居た間でも総勢8名のダムマニアさんが越流の見学(撮影)に訪れていた。

8.またまた予定変更

 今日は帰らなければと思っていたところに、京都からやって来たdasheloさんから畑川ダム建設現場の横を通ってきたとの話を聞いた。道を聞くと割と近いらしい。畑川ダムのM作業所長さんは古くからの知り合いだったので、早速携帯電話で連絡を取ってみたところ、是非いらっしゃいとのこと。

 ダムマニアさん達に別れを告げ、教えてもらった「福井県道・京都府道1号小浜綾部線」を行く。峠越えの道で、道路脇には雪が積もっていた。途中から国道27号線に入って南下。午後3時前には畑川ダムの現場に辿り着いた。

9.畑川ダム現場見学と日吉ダム・世木ダム

 畑川ダム作業所へ到着するとパワーポイントで丁寧に事業の説明をしていただいた。その後、1時間ほど現場を見せてもらう。ダムができると下流側に貯水するので上流と下流が入れ替わる感じの止水擁壁(写真、畑川脇ダム)や、GPS信号機など、なかなか興味深いものがあった。


左から流れがあるのでこの面が「上流」。
ダム完成後は向こう側に湛水する。

 所長から今夜はどうするのか聞かれ、一晩中高速を走って帰ろうと思っていると答えると、ならば宿舎に泊まっていかないかという有り難いお言葉。そこで素直にご厚意に従って、一泊させていただくことにした。そうと決まれば時間が若干ある。ということで、日吉ダムに行ってみようとのM作業所長の提案に一も二もなく乗っかり、日吉ダム、そして日吉ダムの上流でダム湖に水没しながらもダムの役目を全うしている世木ダムの見学となった。途中で若干雨にたたられもしたが、夕方には雨も上がり、翌3月11日は良い天気となった。

 京都を通るので、世界大ダム会議の会場を下見しておこうかと考えたが、丁度京都マラソンの日で、京都市内は交通規制が敷かれていた。仕方なく京都市街地を掠めるように走り、大津ICから、新名神、東名と乗り継いで帰宅した。

[関連ダム] 畑川脇ダム  大津呂ダム
(2012.5.22、池ちゃん)
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