味噌川ダム(長野県)で、去る5月14日洪水吐きゲートからの点検放流が行われました。ゲートの点検は、これまでにも定期的に実施されてきましたが、ダム湖側の予備ゲートを下して行なってきたため放流は見られませんでした。今年は予備ゲートを使用せず、はじめて放流を伴う点検を行うことになりました。また、管理開始20年を記念して、特別のシールが貼られたダムカードも配布されました。
味噌川ダム管理開始20周年
1.点検放流・発電所見学
点検放流は、10時〜12時までの各正時から40分間と13時00分から60分間の予定です。このゲートは、常用洪水吐きという位置づけです。非常用洪水吐きは自由越流式の越流堤が用意されています。
常用洪水吐き設備の説明
非常用洪水吐き越流部 シャトルバスで現地に着いた時には、すでに10時からの放流が終わりかけている頃でした。
第1回目の放流終了直前の味噌川ダム この点検放流と同時に、奥木曽発電所(長野県企業局)の見学会も実施されます。奥木曽発電所は、景観に配慮して茶系統の外壁としたそうです。また、長野県企業局の管理する県内すべての発電所で作られた電気は中部電力に売電され各家庭で使用されるということでした。
発電所施設の概要説明 発電所施設は、長野県企業局の管理となりますが、送電鉄塔は中部電力が管理しています。
奥木曽発電所 発電所では、最大毎秒4.7トンの河川維持放流を利用して水力発電を行っています。一方、今回ゲートからの放流は、最大で毎秒2トン程度の放流ということでした。
通常この時期には、選択取水設備からの利水放流が行われ、利水放流用トンネルを経由して発電所下流から減勢池に流しているということです。今回の点検では、その利水放流と同量の放流を洪水吐きゲートに振り替えるものです。おおまかに言えば、ダムサイトにおいて利水放流を上から行うか下から行うかの違いだけであることなります。
ゲートから放流中(利水放流停止) ゲートから放流している間は、利水放流が停止され、ゲート放流が停止されると利水放流が始まりました。
ゲート放流停止(利水放流開始)
2.ダムカード
水資源機構が管理する味噌川ダムでは、2007年「森と湖に親しむ旬間」のダムカードファーストラインナップ登場時から配布されています。初回配布Ver.1.0(2007.07)の裏面を見ると、ランダム情報に『(天)端標高EL.1130.00mは、国内の多目的ダムで第1位を誇る。』と記されています。
ダムカード裏面Ver.1.0(左)とVer.1.2(右) 現在、味噌川ダムでは、Ver.1.2(2009.12)のものが配布されています。この最新のカードのランダム情報には、『天端端標高EL.1130.00mは、国内の多目的ダムでは第2位。』となっており、順位が変動したことがわかります。1位と2位では、大きな差がありますが、「第1位」から「第2位」に変更されたのは誤植を修正したものではありませんでした。 その理由は、2008年3月に天端標高1,464mを持つ琴川ダム(山梨県)が誕生したことによるものです。それまで、多目的ダムとしては国内で最も標高の高い位置にあった味噌川ダムは琴川ダムにその地位を渡し、国内2位となってしまいました。しかしながら、その後も、このダムが木曽川最上流部のダムとして大活躍していることに何ら変わりはありません。
味噌川ダム いずれにせよ、想像を絶するような場所にダムがあって、私たちの生活基盤を支えているのです。新しく国内第1位となった琴川ダムは、東京スカイツリーを2本縦に重ねた高さよりも、はるかに高い天空に位置しています。私たちは、なぜそのような過酷な環境にダムを建設せざるをえなかったのか、またその目的や役割について正しく理解してゆかなければなりません。
琴川ダム(撮影:萃香)
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