平成30年5月12日、(独)水資源機構が管理する一庫ダムで非常用洪水吐き(クレストゲート)からの放流が行われました。一庫ダムでは平成15年より下流河川改善を目的としたフラッシュ放流を毎年行ってきました。一方、ダムの重要設備であるクレストゲートの点検も毎年実施されています。今回はフラッシュ放流とクレストゲートの点検を同日に行うことになりました。こうして、平成18年以来12年ぶりに放流を伴うクレストゲートの点検が実現しました。また、当日は「のせでんハイキング」(能勢電鉄主催)が開催され大勢の見学客が一庫ダム下流広場に来場しました。
利水補助バルブからの放流。
クレストゲートからの放流を待つ来場者(通常は、立入禁止区域)。
午前10時過ぎに、一庫ダムに到着します。利水補助バルブによるクロス放流が行われていました。もう、これだけで十分満足です。ところが今日はとても贅沢なことに、このクロス放流に加えてクレストゲートも開かれます。盆と正月がいっぺんにやって来るのです。すでに減勢工の周囲は満員電車さながらの活況を呈していました。
堤体直下の様子。
一庫橋付近の様子。
そして、待ちに待った11時にクレストゲートからの放流が始まりました。
クレストゲートからの放流。
これまで、このような点検放流では、顔を知ったダム愛好家仲間が見学に来るのが常でした。しかし、今回はハイキングに参加された一般の皆様が圧倒的に絶対多数です。
ダムカードの配布状況。
また、この日は、3種類(公式・プライベート「春」バージョン・点検放流)のダムカードも配布されました。
配布された3種類のダムカード。
点検放流(当日限定)のダムカードは、前回平成18年に実施したときの写真です。画像をよく見ると、今回の放流とは少し様子が異なることがわかります。相違点は、減勢工副ダム上の突起物です。
当日の放流の様子。
減勢工副ダム。
この構造物は、その後、新設された減勢工ゲートの制御装置(一部)ということでした。ダムの減勢池からの放流は自然調節式が一般的であり、一庫ダムもかつてはその方式でした。
改修前の一庫ダム。
洪水期には減勢工ゲートを全閉し減勢池の水位を高くして備えるそうです。また、事前に洪水が予想される場合には、減勢池をほぼ満水状態にすることで、ダムからの放流による下流河川の急激な水位変化を防ぐ効果があるそうです。
洪水調節中(コンジットゲートからの放流)の一庫ダム。
非洪水期にはゲートを開き、ダムの点検等に支障のないように減勢池の水位を低くすることもできるようになっています。
このゲートの巻上機は右岸側(通常立入禁止区域内)に設置され、操作は手動で行うそうです。この日は、右岸側も開放されていました。
減勢工ゲート巻上機。
ゲートの開度と水位・放流量。
今回の点検放流は、能勢電鉄が企画したイベントに参加された方に大きなインパクトを与えたことでしょう。また、ダムカードを通じて一庫ダムの役割を一般に広く知らしめることができたはずです。能勢電鉄は阪急電鉄との乗り継ぎがスムーズで、一庫ダムへは公共交通機関で行くことが比較的容易です。関西三都からアクセスが便利な場所に位置しています。ひとりでも多くの方に一庫ダムの魅力を知って欲しいと思います。このダムを訪れれば、四季を通じて変化する自然の美しさと、心優しい管理所職員の皆様があなたを迎えてくれます。
一庫ダム。