《このごろ》
浅瀬石川ダムの試験放流

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 浅瀬石川ダムで非常用洪水吐ゲート点検のための試験放流が、4月27日(水)と29日(金・昭和の日)に行われました。試験放流は両日とも同じ内容で実施されました。このレポートは、29日に実施された放流に基づいたものです。この日は、発達した低気圧の影響で、時々強い雨や風の吹くあいにくの天気となりました。
 当日、八戸からレンタカーで浅瀬石川ダムに向いました。道路情報に『山間部降雪注意』の文字が表示されていました。少し過剰な警告かと思いましたが、国道103号線の山間部は注意表示通り雪が降っていました。凍結や残雪は覚悟していましたが、この時期になって新雪が降るとは思いもよりませんでした。レンタカー会社にスタッドレスタイヤ装着車を念押ししておいて良かったと思います。


国道103号線の状況


1.午前の部

 まず9時30分に2号クレストゲートからの試験放流が始まりました。浅瀬石川ダムに設置されているクレストゲートは、左岸側から順に1号・2号・3号・4号となっています。


2号クレストゲートからの放流


 2号ゲートからは30分間放流を行い、3号ゲートの放流に切り替わりました。


3号クレストゲートからの放流

 さらに30分経過した後、1号ゲートからの放流となりました。強い雨が降る中、職員の皆さんが点検作業を進められています。時々、雷鳴も聞こえました。


1号クレストゲートからの放流

 1号ゲートからの放流はそれまでのものと比べると、流量が少ないように見えます。職員の方に確認すると、放流量は各ゲートとも最大3m3/秒ということでした。放流は導流壁とコンジットゲートのデフレクターに挟まれて水流が横に広がらないために、流量が少ないように感じるのかもしれません。


点検作業中の職員

 最後に4号ゲートからの放流が行われ、2時間にわたる午前の試験放流が無事終了となります。


4号クレストゲートからの放流

 堤頂部から減勢工を確認すると、副ダムを越流するまでには、まだ余裕がありそうです。


堤頂部から減勢工

 浅瀬石川ダムの操作規則では、2号→3号→1号→4号の順にゲートを開き、閉じるときは4号→1号→3号→2号の順に放流を停止することになっているそうです。
 クレストゲートを開ける前には、チャイムが鳴って放流を行う旨のアナウンスがありました。そして、「5、4、3、2、1」とカウントダウンした後に放流が行われました。


2.午後の部

 午後の試験放流は、操作規則通りに各クレストゲートを開いてゲート全開にした後、順次放流を停止することになっています。この一連の試験放流を、午後1時30分からと、午後3時00分からの2回行うことになっています。


下流広場の駐車場付近

 予定通り、2号クレストゲートからの放流が開始されました。堤体下流の駐車場は当然満車状態です。警備員の方が発電所敷地内(通常は立入禁止)の方へ車を誘導していました。悪天候にもかかわらず「想い出の橋」にも多くの見学者が来ていました。


想い出の橋からの浅瀬石川ダム

 午後の試験放流は、一度開けたゲートを閉じることなく次のゲートを開きます。3号ゲートからの放流が開始されました。


2・3号クレストゲートからの放流

 続いて、1号クレストゲートから放流が開始されました。午前と同様にカウントダウンの放送の後に放流が行われます。放流開始の瞬間を見たいという方は、次回の試験放流に期待してください。


1・2・3号クレストゲートからの放流

 タイムテーブルでは、午後2時00分にゲート全開となるはずでしたが、悪天候の影響のためか実際は少し遅れての放流となりました。


1〜4号クレストゲートからの放流

 全ゲートからの放流が開始されましたが、この時点でも副ダムからの越流は見られませんでした。本来4門で最大1,550m3の放流可能なゲートから約12m3(3m3×4門)程度の放流ですが、この光景は圧巻です。
 副ダムからの越流が見られたのは、全てのゲートが開いてから、4〜5分後のことでした。


減勢工副ダムからの越流

 ゲート全開後、20分ごとに操作規則にしたがって1門ずつ放流が停止されます。ゲートを閉じる際には特にアナウンスはありませんでした。
 放流を背景に記念写真を撮ろうとしていた地元の方が
「あれ、終わっちゃったよ」
などと会話をしていました。


4号クレストゲートの放流停止

 さらに20分後、1号ゲートからの放流も停止され内側の2本のみとなりました。


1号クレストゲートの放流停止

 その後、3号ゲートも停止となり、2号ゲートからの放流のみとなりました。この時点でも副ダムは越流しています。


3号クレストゲートの放流停止


2号クレストゲートのみの放流

 洪水調節の目的を持つダムも、異常な降雨による洪水を完全に防御することは不可能です。この試験放流で副ダムの状況を観察すると、ダムには確実に「遅らせ効果」があるということを実証しているようです。ダムは、どんなに極限の状態でも、住民の避難時間を確保する役割を持っています。

 天候には決して恵まれない環境の中で、午後の第1回目の試験放流は終了しました。


2号クレストゲート放流停止

 今回は、発電所敷地内の一部が臨時駐車場として開放されたため、堤体直下からの放流も自由に見学することができました。


 いくつかのダムでクレストゲートの点検放流(試験放流)が行われるようになりましたが、これほど放流のバリエーションが豊富な例は他にないと思います。また、操作規則上、浅瀬石川ダムでは、2号ゲート以外のゲート(1号・3号・4号)から単独で放流することは通常の運用ではありません。大変貴重なシーンを見学させていただくことができました。
 次年度以降も、定期的に試験放流を行いダムが常に適切な状態で運用されることを願います。


1号クレストゲートからの放流開始

【追記】

 なお、浅瀬石川ダム管理所の公表によると、4月27日(水)の見学者が約700人、29日(祝)の見学者が1,001人という集計結果になったそうです。実際、駐車場には、関東方面のナンバープレートやレンタカーが目立ちました。この放流を一目見ようと各地から大勢の方が訪れた証です。


ライトアップ中の浅瀬石川ダム


「森のあかり」様で販売された浅瀬石川ダムカレー

[関連ダム] 浅瀬石川ダム
(2016.5.2、ダムマイスター 01-024 安部塁)
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