私は平成20年から3年間ダム工事総括管理技術者会(CMED会)の会長職にあったがその当時リーマンショックで経済的に社会が混沌となり、政治的には民主党が政権を取りダム事業の検証が決まりダムの発注が止まった。そういう時期にCMED会としてダム事業の必要性を訴えるために何をしたらよいのかを幹事会で議論してダムの必要性をあらゆるところで訴えたことをつい昨日のように感じている。
その逆風もようやく止み、気候変動、エネルギー問題から少しはダムの必要性も議論できる時代になってきた。また少なくはあるが新規発注も実現してきた。ダム技術者としてやっと活躍できる時代が来たことは非常に喜ばしく感じてはいるが、この数年が何のためにあったのかをつい考えてしまう。もしこの期間が必要であったとするならダム技術者としてこれまでの活動の反省をする期間であったと考え、その失敗を繰り返さないことであろう。その最も大きい失敗はやはりダム技術者として立派なダムさえ作っていればダムの必要性は理解してもらえると考えたことであろう。
ダム技術者はダムの整備が治水、灌漑、発電に大きく貢献していることを丁寧な説明なしに世間に理解されていると信じ、ただひたすらいいダムを作ることに集中し、ダムがどのように社会貢献しているかの説明を疎かにしてきた。ダムが整備されずに日本各地で洪水被害が頻発していた頃はダムのおかげで洪水被害が減少したことは容易に理解できたが、ダム整備が進み、特に東京など大都会では大きな洪水被害がほとんど起こらなくなった現在、ダムの恩恵を感じダムの必要性を実感している人はほとんどいないのは当然のことかも知れない。
このような失敗を繰り返さないようダムの必要性をこれからも企業者にだけ任せるのではなく、ダム現場に携わるダム技術者も現場見学等あらゆる機会を通じて積極かつ丁寧にダムの必要性をアピールしていくことが重要である。このことはダムに限らず土木事業すべてに通じることと考えられるので、仕事が順調に増加し、忙しい中にあっても土木技術者としての義務と戒めていきたい。
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