with Dam☆Night 第一夜(10月25日)の「ダム歴史的構造物」では、「雀の社会科見学帖」の夜雀さんが「ダム史年表の備考欄」と題して講演。いつもながらの全国をくまなく回った事例報告、ダムへの愛にあふれる語り。
 「日本で一番古いダム」、「日本で最初の発電用堤体」、「黎明期の役割ハイブリッド」・・・と続き、最後は「100年たっても働く為に」。これは、大分県豊後大野市の沈堕ダムの話。
 沈堕の滝、背後のダムが分かるだろうか 沈堕ダムは高さ5.5m、幅115m、ダムと言うよりは取水堰。取水された水は、3km下流の沈堕発電所まで運ばれる。前面が滝になっていて、ちょっと見ると滝に見えるが、よく見ると背後にダムがある。滝の高さは水面から20m。
沈堕ダムとその全面の沈堕の滝には歴史がある。水墨画の天才といわれる雪舟も室町時代にこの地を訪れ、「鎮田瀑図」を描いているという。その滝は長年、岩盤の崩落をくり返し、上流に移動した。150年ほど前には、滝は今より240メートル下流にあったらしい。
沈堕発電所は、大分〜別府間を走る電車の動力源として豊後電気鉄道株式会社が建設。1909年(明治42年)に竣工。竣工時には500kwの発電機を2台備えていたが、大正2年にはもう1台増設。その取水堰として建設されたのが沈堕ダムで、建設当時は高さが4.9mだったようだ。その後、大正12年に3km下流に新しい沈堕発電所が建設され、明治の発電所の建物は沈堕ダムの近くに外壁だけの姿を残している。
滝が時とともに上流に移動し、ダムに近接してきたため、ダムを管理している九州電力では平成10年、岩盤の崩落防止対策を実施した。滝の壁面にロックボルトを打込んで補強、河床は根固め工により洗掘を防止、ダム下流のエプロン部も補強。あわせて自然石や擬石を施して沈堕の滝の特徴であった11条の落水を再現。
こうして、ダムも守られ、滝も守られ、人の英知と努力で100年たった今でもダムは働き続けている。
 一段高いところで越流しているのがダム
 ダムの直ぐ下流に滝が迫る、滝の岩盤崩落防止対策が施された
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