《このごろ》
「with Dam☆Night」が九州でも

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 4年ほど前、ダム工学会は20周年を迎えて、一般公開シンポジウム「ウイズダムナイト(with Dam☆Night)」を開催したが、これが最初の with Dam☆Night だった。東京大学工学部1号館で、四夜構成の意欲的な取り組み。ダム技術者と一般の方々との対話を目指し、出演者のほぼ半分は一般のダム好きの方々だった。早いものでそれから4年あまり、京都、名古屋、大阪でも開催されて、今回九州での開催となった。12月12日(金)、場所は福岡市の九州大学西新プラザ。


最初の with Dam☆Night の様子(2010.10.26)


「with Dam☆Night in Kyoto 」の様子(20012.6.3)

 初めて九州で開催されるというので、様子を見に行った。会場の西新プラザは九州大学の施設で、とても立派なもの。会場となったホールの入り口にはポスターが張ってあったが、これがなかなかのできばえ。「ダムのドラマを語る夜」というのもいい。聞くところによると、プロに作成を依頼したらしい。


九州大学西新プラザ


「ダムのドラマを語る夜」

 開演前の慌ただしい中、準備にまた運営にご尽力された九州大学の矢野真一郎先生に簡単なインタビューを試みた。ざっと以下のようなお話だった。
 昨年、東京などの動きを踏まえて、九州でもという話が出て、だんだん盛り上がってきた。それで今回開催の運びとなった。難しかったのは、出演者捜しで、本来は九州在住の一般の方に出て頂けたらよかったのだが、探しても見つからなかった。それで、ご紹介もあったので、関西の著名なダム好きの夜雀様にお願いした。百名以上の参加者があって、よく集まってくれたと思っているが、純粋に一般の方はたぶん10名程度にとどっまっている。来年もやりたいと思っており、九州でもダム好きが育ってくれることを願っているし、次回は九州のダム好きの方にご出演いただけるようになればいいと思っている。


開演前に打ち合わせをする矢野先生と夜雀さん

 当日のプログラムは、次の通り。

16:00〜16:05
開会挨拶
ダム工学会 会長 岡本 政明

16:05〜16:30(プロローグ)
九州のダム
ダム工学会九州連絡会 太田 達雄

16:30〜16:55(講演)
九州のダム事業について
国土交通省九州地方整備局 河川部長 古賀 俊行

16:55〜17:20(講演)
耳川水系ダム群の取り組み(地域共生)
九州電力株式会社 耳川水力整備事務所 副所長 朝崎 勝之

17:20〜17:45(講演)
美しい石のダム
ダム愛好家 夜雀

17:55〜18:45(トークショー)
【ダムの魅力】
司会 
九州大学工学研究院 環境社会部門 准教授 矢野 真一郎
パネリスト
古賀河川図書館長(ダムマイスター)      古賀 邦雄
九州地方整備局 元嘉瀬川ダム工事事務所長 桑野 修司
ダム愛好家 夜雀

18:45〜18:50
閉会挨拶
ダム工学会九州地区連絡会 会長 大塚 久哲

19:00〜
懇親会


会場風景

 全体として講演などは多岐にわたり、盛りだくさんな内容だった。一聴衆として楽しく聞かせていただいた。その内容全てを紹介するのは困難なので、いくつか印象に残った点のみご報告。

 九州は「ダム王国」ではないか。九州地整の古賀河川部長の講演によれば、九州には、大分川ダム、鶴田ダムなど現在事業中のダムが多数ある。また、九州電力耳川水力整備事務所の朝崎副所長の講演によれば、耳川では複数の発電用ダムについて改良工事が行われている。既設のダムについては、夜雀さんの講演で、九州の魅力的ダムが写真付きで多数紹介されていた。一方では、なぜそれなのに、一般のダム好きさんは少ないのだろうか。いるのかもしれないが、よく知られた著名なダム好きの方はおられないようだ。何人かの方にその理由を問うてみたが、明確な答えはなかった。


九州のダム事業(古賀河川部長の講演より)

 トークショーの中で、古賀河川図書館館長の古賀さん報告があったが、他の出演者のお話とは観点が異なっていて、興味深かった。古賀さんは「三つの水循環」があると言う。自然的水循環、社会的水循環、文化的水循環の三つ。自然的水循環は水が海で蒸発し、雨となって陸に降り、川を流れて再び海へ、と繰り返す自然の循環。社会的水循環は、水を人が水道や、農業やその他に利用し、再び川や海に戻るといった人間社会を通した循環。これら水循環の過程で、神を祭り、歌を詠み、物語ができるなど、様々な文化的営みが生まれる。それが文化的水循環。ダムは、三つの水循環に深く貢献している重要なものだ。だからもっと元気を出さなければいけないと古賀さんは言う。そして、古賀さんは、ダムを扱った小説を紹介し、九州のダムをうたった俳句・短歌を紹介した。ダムといえば従来工学的視点から語られることが多かったように思えるが、より視野を広め、ダムの持つ多面的価値に着目することも必要ではないか。


トークショーの様子

 九電の朝崎副所長の講演や夜雀さんの報告などを聞いて、「耳川に行きたい」と強く思った。上椎葉ダム、塚原ダムなどすばらしいダムが並んでいる。前々からそうは思っていたが、今回話を聞き、写真を見て、一層その感を強くした。来年は是非、見学会を耳川でやりたい。東京からすれば遠方で、難しい点があるだろうが、あのすばらしいダム群の誘惑をとどめることはできなさそうだ。


耳川のダム群(九電朝崎副所長の講演より)


九電朝崎副所長の講演(上椎葉ダムの建設)


上椎葉閣下(夜雀さんの報告より)

 最後にダム工学会九州地区連絡会の大塚久哲会長の挨拶があった。会長は、土木の先生のようで、大学の土木教育について、今は効率をい重視して、コンクリートか、構造とか部分部分に分解して土木教育がなされているが、今日の話を聞いて、ダムとか、トンネルとか、対象に即したトータルな教育が必要なのではないかと感じた、という趣旨のことをおっしゃっておられた。大学で是非ダムを取り上げてほしいし、学生にダムに興味を持ってほしいと思う。幸いにも、今回の with Dam☆Night には、たぶん10名ほどではないかと思われるが、大学生が参加していた。


ダム工学会九州地区連絡会の大塚会長の挨拶

 こうしてプログラムは終了、その後場所を変えて懇親会があった。皆さん来年も実施したいとおっしゃっているので、期待して待ちたい。九州のダムのすばらしさが全国に知られるように。


懇親会の様子

(2014.12.17、Jny)
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