with Dam☆Night 第4夜(11月29日)は、テーマが「利根川・荒川の治水と利水」。核心に迫るテーマで、講師陣もそうそうたる顔ぶれ。
虫明功臣(東京大学名誉教授)「緑のダムの迷信」 宮村忠(関東学院大学名誉教授)「線(堤防)から点(ダム)へ」 休憩時上映:「これより本則操作を離れる」(作・夜雀) 横塚尚志(日本ダム協会)「氾濫原について」 土屋信行(東京都江戸川区)「今、迫り来る大災害の危機」
この日の進行役は、ダム協会の中野さん。冒頭、ダム工学会の入江洋樹会長の挨拶があった。
入江会長の挨拶 講演の中から、東京都江戸川区の土屋信行土木部長の「今、迫り来る大災害の危機」について、内容の一部を紹介する。もっとも、なにぶん知識不足、記憶不鮮明、その上つまみ食い的紹介にとどまる点、ご容赦頂きたい。そして、何より、あの熱意のこもった、名調子が再現できないことが大変残念だ。
土屋信行土木部長の講演の様子
(ゼロメートル都市・江戸川区)
江戸川区は、江戸川、荒川放水路、中川放水路などに囲まれた低地で、水害の起こりやすい所だ。これまで、繰り返し洪水が起こってきた。昭和22年9月のカスリーン台風では、死者行方不明1,930人、損壊家屋9,298戸、浸水家屋384,743戸の大被害が発生している。
江戸川区の陸域面積の7割はゼロメートル地帯だ。この原因としては、地下水の汲み上げが大きかった。もともと河川に囲まれた洪水の起こりやすい地域だったことに加えて、このような地盤沈下が進行し、ゼロメートル地帯が拡大してまします危険性は増大している。
(洪水ハザードマップ)
このように、洪水の危険性が大きいので、区民に水害に関する情報を提供し、事前の備えに役立ててもらうため、「洪水ハザードマップ」を作成した。ポイントは、江戸川、利根川、荒川が氾濫したときの最悪のケースを想定し、長距離移動で68万人が全員避難してもらうこと。避難場所として3か所の「地域防災拠点」(@大島小松川公園A葛西南部地区B市川市国府台台地)を定めた。
一時的な避難場所とするため、区内の小中学校や建物をくまなく調べたが、小中学校で22万人、建物で15万人、合計37万人の収容能力しかない。 68万人の区民に対して、避難できる高台がない0m地帯。
(八ッ場ダムがなくても江戸川区は大丈夫?)
カスリーン台風以降、それを超える大雨が降っていないので、幸い大洪水には襲われていないが、今後とも洪水にならない保証は何もない。台風は毎年来るし、日本のどの地域にも来る可能性がある。過去の台風経路図を重ねてみれば、このことは明白だ。
カスリーン台風のような台風が来たらどうなるか、シミュレーションをしてみた。カスリーン台風を再現すると、利根川の八斗島基準点での最大流量は、16,900m3/sになる。
もし台風のコースが北へ50キロ移動したらどうなるか。八斗島基準点での最大流量は、22,400m3/sへと大幅に増大する。北西に50キロ移動したとしたら25,000m3/sへとさらに大幅に増大する。このような大きなリスクを看過していいのだろうか。大災害が起きてからでは遅い、今対応が必要だ。
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