平成29年7月15日から新潟県柏崎市のダムを巡るスタンプラリーが始まりました。
新潟県のHPによると、県の柏崎地域振興局の企画であり、「柏崎地域の個性的な8つのダム(建設中2基)を巡りながら柏崎の観光を満喫できるスタンプラリーです」との説明があります。
(参考:http://www.pref.niigata.lg.jp/kashiwazaki_kikaku/1356873610264.html)
スタンプラリーは柏崎市にある8つのダム(赤岩ダム、市野新田ダム、鵜川ダム、後谷ダム、川内ダム、鯖石川ダム、谷根ダム、栃ヶ原ダム)のうち、鵜川ダムを除く7つのダムを回って写真を撮り、管理所や周辺の施設でスタンプを集めます。最後に柏崎駅の観光案内所に行くと鵜川ダムのカードがもらえるという流れとなっています。
また、スタンプの設置場所は道の駅や観光施設の売店などとなっており、ラリーのチェックポイントでお土産や地元での食事も楽しめるため、適度な休憩をとりながら進めることが期待できそうです。スタンプラリーの開始から若干遅れて、ダムカレーなどの提供も始まっています。
新潟県では魚沼や新発田でも県の地域振興局によるダム関連のスタンプラリーが開催されており、ダムマニアの宮島咲さんがアドバイザーとして参加されているようです。今回の柏崎の取り組みにおいてもアドバイザーとして協力しているようで、スタンプラリーの地図に記載されたダムへのコメントは、宮島咲さんの著書と同じ気配を感じることができました。
スタンプラリーの開催が公表されたのは7月11日と開催直前でしたが、7月15日に遊びに来た知人に柏崎を案内しつつ早速スタンプラリーに参加してきました。
知人とは朝8時すぎに新幹線長岡駅で合流のため、そこを起点としたスタンプラリーのコースをどうするか考えました。コースを組むにあたってのポイントは以下の3つです。
・一つだけ離れている後谷ダムを最初と最後どちらにするか
・食事と観光にどの程度重きをおくか
・ゴールの柏崎駅には17時までに行かねばならない
関東からわざわざ遊びに来てくれた知人をしっかりともてなそうと思い、スタンプラリーに柏崎観光を入れ込み以下のコースで回ることにしました。なお、これはかなりタイトなスケジュールです。
- 藤井堰で「用水の一滴は血の一滴」の石碑を見て意識を高める
- 阿部酒造直営店で朝一から地酒を購入して高まりすぎた意識を適度に下げる
- 栃ヶ原ダム見物でダム巡り開始
- 高柳じょんのび村でスタンプラリー開始
- 鯖石川ダム見物で公式と特別のダムカードを入手
- 鵜川ダム建設現場を展望台から見物
- 綾子舞会館でカードを入手
- 市野新田ダム建設現場を展望台の東屋から見物
- 川内ダム&谷根ダム&赤岩ダム見物
- 日本海フィッシャーマンズケープでカードをもらい、B級グルメのサバサンドで昼食
- 原酒造で酒蔵見学
- 後谷ダム見物&カード入手
- 柏崎駅の観光協会でスランプラリー終了
- 藤井堰
この施設は現在農林水産省最後のダムとして建設されている市野新田ダムと同じ、柏崎周辺地区農業水利事業の一環で再開発された堰ですが、そこに立つ石碑には「用水の一滴は血の一滴」の文字があり、この地域の水事情が大変だったということがうかがい知れました。今回のダム巡りの最初にふさわしい場所であり、これからのダム巡りへの意識は高まります。
(石碑から堰を挟んだ対岸には、確保された用水で生産された米を乾燥貯蔵する「柏崎カントリーエレベーター」が見えます)
- 阿部酒造直営店
藤井堰から数百メートルのところにある酒屋に寄りました。最初から意識が高まりすぎたため柏崎の水と米を使った日本酒「あべ」を購入し、高まりすぎた利水への意識を少し下げてスタンプラリーに挑もうという考えです。
今日巡るダムは治水目的よりも上水道及びかんがい目的のダムの方が多く、ご当地の水と米を使っている地酒はある意味ダムの集大成の一つであり、藤井堰と同じく今回のダム巡りでは重要な意味を感じ取れる場所ではないか?と考えるなど、まだ高まった意識の残渣がお気楽なスタンプラリーの邪魔をしてきますが、何はともあれ最初のダムに向かいます。
- 栃ヶ原ダム(農林水産省)
国道252号に入り、チェックポイントである道の駅「じょんのび村」を通り過ぎて栃ヶ原に向かいます。
栃ヶ原の集落からダムに入る道には早苗マーク(美土里ネット・土地改良区のシンボルマーク)の付いた看板があるため「土地改良区の施設がある!」ということがわかるため間違えにくくなっています。
ダムに着くと既に先客がおり後からも何台か車が来ます。何度か来たことがあるこのダムにこんなに人がいるのは初めての体験ですが、おそらくスタンプラリーの参加者であり、今日はこの人たちといろいろなところで遭遇するのだろうという考えが頭をよぎります。
ダム自体は灌漑用ということでシンプルな重力式コンクリートダムですが、若干の放流が見ることができました。スタンプラリーのチェックポイントではダムに訪問した証拠として写真が求められますので、何枚か写真を撮って次の鯖石川ダムに向かいます。
(栃ヶ原ダムは少し放流していました)
- 高柳じょんのび村
栃ヶ原ダムの写真を携えて、じょんのび村でスタンプラリーの地図とスタンプをもらいます。「じょんのび」とは新潟の方言で「余裕がありリラックスした状態」を指すようで、温泉・休憩施設にはいい名前です。
施設の入口には柏崎のゆるキャラ「えちゴン」のイラストを使ったスタンプラリーののぼり旗が設置されていました。また、柏崎市のスタッフの方がスタンプラリーに関するアンケートを取っていました。
この道の駅はお土産や農産物の直売所、食事処に温泉施設といろいろ揃っていますが、今回は受付でスタンプのみをいただいて先に進むこととします。
スタンプラリースタート時はダムカレーは提供されていませんでしたが、現在は栃ヶ原ダムカレーが提供されており、下流側にはサラダとがんもどきが配置されています。そういえば栃ヶ原ダムの下流側は結構草が茂っていた気がしますが、そこを忠実に再現しているのかもしれません。
(えちゴンののぼり旗が目印です)
(下流の草の繁茂も再現した(?)栃ヶ原ダムカレー)
- 鯖石川ダム(新潟県)
鯖石川ダムは新潟県営の治水目的のダムであり、大きな赤いクレストゲートが印象的です。見学できる場所は少なめですが、ある程度よく見えるダムなのでそれなりに満足できます。新潟県の新発田地域にも赤いクレストゲートが一門のダムが幾つかありますがこれはこだわりがあるのでしょうか。
管理所は常駐で公式のダムカードが貰える他、今回のスタンプラリー用の特別製のカードももらえます。
春には雪解け水の流入を利用して排砂放流も行っているのでその時期も見学に来るといいのではないでしょうか。
また、じょんのび村とダムの間にある門出(かどいで)郵便局では鯖石川ダムの風景印をもらうことができます。
(特徴的な赤い一門のクレストゲート)
(管理所にはスタンプラリーのぼり旗が設置されています)
(門出郵便局でもらえる風景印(ねっす〜 (@n_type )さん提供))
- 鵜川ダム(新潟県・建設中)
鵜川ダムは新潟県により建設が行われており、現場には近づけないものの、右岸のダム軸あたりに設置された展望台から見下ろすことができます。展望台への道は冬季閉鎖でありわかりにくい上に駐車スペースがほぼなく、基本的に車と会うことはないような道でした。これはそこそこの人が一斉に訪問すると大変なので、今回のスタンプラリーからは除外されているのもやむをえないかと思いました。
展望台にはダムの原料であるコア材やフィルター材が箱に入って展示されていました。眺めは良く、建設現場が一望できるのですが、いかんせんまだ盛り立てが始まっておらず、建設現場自体はあまり動いている様子はありませんでした。今後も定期的に訪問して様子を見たい場所です。
(建設現場が一望できる展望台)
(材料が展示されています)
- 市野新田ダム(農林水産省・建設中)
市野新田ダムは農林水産省最後のダムとして建設中で、昨年定礎式が行われており、現在盛り立ての真っ最中です。向かう途中の道からは大きな洪水吐が間近に見え、さらに盛り立てている下流面も道路から見えるため、運転中に興奮が抑えられない方もいるかもしれません。また、盛り立てが見えやすいようにとこのスタンプラリーの開催に合わせ展望台の設置が行われており、今現在、新潟県で最も近づけるダム建設現場だと思います。
ダムの現場の道を挟んで左の丘の上に道は狭くわかりにくいですが、ダムサイトを俯瞰可能な東屋があります。見学の際は少し離れた綾子舞会館に車を止め、道路に駐車しないようとの案内がありますので、訪問の際はこちらに車を停めて落ち着いて上から見学をすることをお勧めします。本ダムは傾斜コア式のフィルダムであり上から見下ろすことで中央にコア部がない状況を確認することができます。これは建設中しか見ることができないことからも一見の価値はあると思います。
(東屋から建設現場が一望できます)
(下流側は車に注意しながらの見学となります)
- 綾子舞会館
綾子舞とはこの地域に伝わる伝統芸能の名称です。ダムの建設現場からは少し離れたところにあり、市野新田ダムの建設現場見学の際はこちらに車を停めていくことをお勧めされています。
訪問した日はJAと農林水産省の名札をした方が窓口でダムカードを渡してスタンプを押してくれました。この2つの組織が対応してくれるという点でも「建設中の農林水産省のダム」が感じとることができるかもしれません。
(建物が二つありますが、のぼり旗の設置された奥の建物が綾子舞会館です)
- 川内ダム&谷根ダム&赤岩ダム(柏崎市)
柏崎市の上水道を担う3つのダムは柏崎市の西の方にまとまっており、ここから各地域に給水するのはあまり効率的ではないような気がしますが、このことからもこの地域で水が貴重であることがうかがい知れます。
綾子舞会館から向かうとまずは川内(こうち)ダムにたどり着くことになります。下流は浄水施設があるため立ち入れませんが、天端を渡ったところにある洪水吐は震災後改修されており、このダムの見所の一つです。また、ダムサイトには桜が多く植えられており、地元では「水源地」と呼ばれているもののその名前の持つ意味よりも春の花見の場所として認識されているようです。
川内ダムから上流に向かいトンネルを抜け、隣の谷に出たらそこはすでに谷根(たんね)川です。5分ほど上流に向かうと谷根ダムがあり、その天端からはダム湖の上に赤岩ダムを見ることができます。川内ダムも谷根ダムも難読のダム名が続きます。
(川内ダムの堤体は綺麗に管理されています)
(川内ダムの洪水吐は草が茂っていました)
(谷根ダムはシンプルな構造です)
谷根ダムの更に上流にある赤岩ダムは、谷根川の最上流にあるダムであり、ここより上流には人家どころか道もありません。水源である米山の麓のダムであり、上水道の水源としてふさわしい立地だということが感じられます。
谷根ダムの下流から水源である米山への登山道の入り口がありますが、20分ほど登ると谷根ダムと赤岩ダムを同時に見ることができる展望所がありますので、時間と体力に余裕のある方は是非訪問してください。
また、谷根ダムの下流にある谷根郵便局では谷根ダムの気配を感じる風景印をもらうことができます(ダム湖はしっかりと描かれていますが堤体はよく見えません)。
(谷根ダムの天端から見える赤岩ダム)
(2つのダムが見える登山道展望所から)
(風景印では河口から水源まで一望できます(ねっす〜 (@n_type )さん提供))
- 日本海フィッシャーマンズケープ
3つのダムのダムカードは谷根川の河口から近いフィッシャーマンズケープでもらうことができます。
谷根川の河口付近には、鮭の放流事業を行っており、鮭の遡上が見学できる鮭のふるさと会館があり、11月頃の鮭の遡上時期には是非訪問したいところですが、今回はタイトなスケジュールなので先を急ぎます。
(時期になると谷根川には鮭が遡上してきます)
(フィッシャーマンズケープは売店でカードがもらえます)
ここでは鮮魚の直売所があるほか、柏崎のB級グルメである鯛茶漬けとサバサンドを食べることができます。レストランで鯛茶漬け、売店でサバサンドを食べられますが、かさねがさねになりますがタイトなスケジュールなので、売店でサバサンドを購入して次に向かいます。
サバサンドはサバのフライを玉ねぎと一緒にパンに挟んだシンプルな料理です。ハーフとレギュラーがありますが、いずれもレモン果汁と塩コショウをたっぷりかけて食べるのがオススメです。
(サバサンドにはコーラが合うと思います)
(鯛茶漬けは上品な味です)
また、フィッシャーマンズケープと原酒造の間にある港には柏崎観光交流センター・夕海があり、現在はダムカレーを食べることができます(スタンプラリー開始時には提供の情報がありませんでした)。
海岸沿いの柏崎市ではついつい海のものを食べたくなりますが、海産物が苦手な方はこちらで食事をとることも検討されてはどうでしょうか。
(画像24:鵜川ダムカレーはスコップ型のスプーンで食べます)
- 原酒造
朝一番に阿部酒造のお酒を購入したところですが、酒蔵見学をさせてもらえる原酒造によって日本酒造りを見学することにしました(事前予約が望ましいです)。国道8号からは街中に入るため若干わかりにくいかもしれませんが、酒蔵の看板もあり直営でお酒などの販売も行っている「酒彩館」の広い駐車場が用意されていますので、訪問しやすいと思います。
施設を回りながら酒蔵のスタッフの方に色々なお話を伺うことができました、中越沖地震の被害からの復旧の話や、柏崎産のオリジナルのお米と地元の水を使った酒造りの話、日本酒と税金の話など内容は多岐にわたります。お米や仕込み水の話を聞くと、これまで回ってきた上水道及びかんがい目的のダムが思い出されます。
見学が終わったら試飲コーナーで試飲をして美味しかったお酒を買って帰りましょう。アルコールがダメな人や運転手の方には最近流行りの酒蔵が作った甘酒もあるので安心して見学が可能です。
(蔵の中で詳細な説明を受けます)
(柏崎のダムの恵みを試飲)
- 後谷ダム(農林水産省)
最後は柏崎市の北の端に位置する後谷ダムです。敷地内には入れないため、駐車場所や見物できる場所が限られています。閉まっている門の前に車を止め、下流側からとダム湖に掛かる橋の上からその姿を見ることになります。
下流側は綺麗に整備されたアースダムですが上流側は岩で覆われているため、一見ロックフィルダムに見えます。ダム湖に掛かる橋から見た姿だけだとカードをもらうまでアースダムであることに気づかないかもしれません。
また、このダムは万灯会と呼ばれるろうそくによるライトアップイベントを開催しており、その日は敷地内にも入れることもあるため、夜のイベントには不便な場所かもしれませんが是非参加をしてみてください。
カードとスタンプはダム湖の左岸上流にある西山自然体験交流施設ゆうぎの受付でもらえます。
ここでスタンプが集まったため、最後のチェックポイントである柏崎駅内の観光協会に戻ります。
(見える場所は限られています)
(ろうそくによるライトアップ万灯会もあります)
(カードはダムが見える交流施設の窓口でもらえます)
- 観光協会(柏崎駅)
最後に柏崎市観光協会に向かいます。柏崎駅は先ほど訪問した原酒造の近くであり、今回のスタンプラリーの効率的な周り方の難しさを感じさせられます。
駅前の駐車場に車を止めて駅舎内に入って左手の観光協会で最後のスタンプをもらってスタンプラリー完走!最後に鵜川ダムのカードをもらいました。
これで手元にスタンプラリーの特製カード8枚、鯖石川ダムの公式カード、そしてスタンプラリー完走による鵜川ダム(工事中)のカードと計10枚のダムカードが集まりました。1日にこんなにダムカードをもらったのは東北電力のダムカードを求めて只見川から阿賀野川を下った時以来でしょう。なかなか達成感があります。
(駅の中に観光協会があります)
(観光協会の受付が最後のチェックポイントです) 柏崎市は平成の大合併時に柏崎市・西山町・高柳町が合併しており、山間部から海岸部まで多岐にわたる環境を有する市となっています。今回のスタンプラリーは山間部から海岸、そして中心地までその全域を巡るスタンプラリーであり、道の駅や直売施設をチェックポイントにすることで地域の特産品などを知ることもできる作りになっており、ダムを通じた地域全体のPRの手法としては非常に良い事例ではないかと感じました。
また、ダムの事業者も柏崎市、農林水産省、新潟県と3者がいる中でそれぞれのホームページでのPRも連携して行われていることや、新潟県のホームページではスタンプラリーのオフィシャルサイトが設置され随時情報が更新されることもあり、情報発信のあり方について他の地域でも参考になるのではないかとも感じました。つまり、他の地域でもこのような形を参考にした地域全体をPRしてくれるようなスタンプラリーが開催されるといいなあ、という私の希望です。
この内容が、今後柏崎のダム見物に訪れる人の参考となれば幸いです。なお、柏崎市は海岸が近いとはいえ、山間部は豪雪地帯であるため冬季閉鎖のダム(赤岩ダム、鵜川ダム、栃ヶ原ダム)もあるため訪問は秋までが勝負ですので早めの訪問をお勧めします。
※冒頭の「適度な休憩をとりながら進めることが期待できそうです。」の記載とは裏腹に、今回ご紹介した行程はスケジュールがタイトな上に交通量の少ない山道や海岸沿いの道を多く通ります。参考にされる方はくれぐれもスピードを出し過ぎないよう安全運転でお楽しみください。
(1日でもらったダムカードとすべて押されたスタンプラリー台紙)
(お土産に買った日本酒)