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宮島咲さんにインタビュー
『ダムカード大全集』を出版

 国土交通省や独立行政法人水資源機構などが「ダムのことをもっと知ってもらおう」という目的で作成したダムカードは、ダムを訪れた人が一人1枚だけ入手することができるという貴重なもの。2007年に配布が始まり、当初は111ダムからスタートしたが現在は200を超えるダムで配布され、人気が高い。そのダムカードの全貌が一覧できるガイド本「ダムカード大全集」を、宮島咲さんが新しく出版することになり、新刊の紹介をして頂けるとのこと。今回は、宮島さんに加えて、2011年11月時点のいわゆる公式ダムカードを全種収集し、今回のガイド本にも画像の提供や紹介コラムの執筆をしている吉川慎平(ダム吉)さんと、さらに出版社の中村孝司さんにもご参加頂き、「ダムカード大全集」が発刊にいたるまでの道のりをお聞きしました。

(インタビュー・編集・文:中野、写真:廣池)


 
ダムカードを一堂に集めて見るというアイデア



中野: ダムカードを全部一覧にして解説するという、今回の出版企画は、どういうきっかけで始まったのでしょうか。アイデアは、宮島さんからの提案ですか?出版社さんからやってみてはと依頼があったのですか?

宮島: 去年の10月頃、出版社の方からお話を頂きまして、これは面白い話だと思いました。

中野: 以前に出版された「ダムマニア」と同じ出版社さんですか。

宮島: いえ、全く違う出版社の方でして、突然メールを頂き面白い話でしたので、一度お会いすることになり企画書をお持ち頂きました。かなり具体的なことが書かれていました。

中野: 出版者の方は、宮島さんが本を出されておられることはご存じだったのですか。

宮島: そうですね。処女作の「ダムマニア」もすでに読んで頂いていているようで、またダムについてもご理解があるような方でした。
中野: 企画書をご覧になってどのように感じられましたか。

宮島: もちろんやってみたかったので即決で「はい、やります」と返事をしました。(笑)

計画から施工へと急ピッチで進む

中野: 昨年 10月頃から始まって、単にダムカードを並べて紹介するだけでなく、それぞれのダムの見所や周辺施設の紹介なども収録されているとのことですが、取材に行かれたりしたなら、相当ハードスケジュールだったのではないですか?

宮島: ダムの見所解説は、1基あたり160文字で書きました。これはダムにまつわる情報や特徴の解説などです。その下の周辺情報、この2つの原稿を書きました。正直、自分の好きなダム、知っているダムだと1時間くらいで書けるのですが、あまり知らないダム、これという特徴のないダムだと、あれこれ調べたりして数時間も試行錯誤するみたいなことになってしまいました

昨年11月時点の全212枚の公式ダムカードを掲載



中野: 今回、改めて取材に歩かれたところもあるのでしょうか。

宮島: 公式カードは原稿作成時点で212枚あるわけでして、北は北海道、南は沖縄までありますから、全部行っているわけではありません。(笑)そこで、先輩方のHPを見たり、ダム便覧などを参考にして原稿を書いたダムもあります。

中野: 宮島さんもご自身のHPにもアップされておられますが、ダムカードはどのくらいお持ちですか。

宮島: 自分では90枚ほどもっています。

中野: 足らないものは、どうやって集められたのでしょうか。どなたか協力していただいた方がおられるのですか?
宮島: 本のタイトルが『ダムカード大全集』ということであれば、手に入るすべてのカードを掲載しないと成り立たないので、ダムカードを持っている方がいらっしゃらないとこの本はできませんでした。そこで、ツィッターを駆使して、同じ趣味の人で、大量にお持ちの方はいらっしゃるのかと捜してみたところ、ダム吉さんと巡りあうことができました。この本はダム吉さんにご協力いただけなければできなかったと思います。(笑)

ダムカードの助っ人、現る

中野: 宮島さんがお持ちのカードが90枚ということは、それ以外はダム吉さんのカードが掲載されているわけですね。

宮島: この本で使用したのは、私が所有している90枚と出版社の方の90枚。重複してるものやバージョン違いも多いので、そこにダム吉さんが持っている350枚などを合わせて揃えました。

中野: なるほど、共同で集められたのですね。ダム吉さんがいらしておられるので、お話を伺ってよろしいでしょうか。ダム吉さんはダム巡りがお好きなんですか。

吉川: そうですね。ダム巡りは、関東圏のダムを中心に高校生の頃からまわっていました。地方のダムを本格的にまわるようになったのは、就職してからです。

中野: 宮島さんとお会いになったのはいつ頃ですか。

吉川: 直接お会いしたのは、去年の with Dam Night の時でしたが、その時はあまりお話する時間もなかったかと思います。


全公式ダムカードを入手済み



吉川: 本に載っている公式カードは新しく増えたもの意外、ほぼ揃えました。実際に自分で足を運び、コレクションしました。

中野: ダムカード配布場所一覧に出ているダムを全部一人でまわるとなると大変かと思いますが、どうやってまわられたのですか?

吉川: 非公式のダムカードも含めると全部で350種類くらいあります。これは、だいたい3年間かけて北海道から沖縄までまわりました。旅行がてらにダム巡りの旅です。

中野: それはすごいですね。一番行きにくいところはどこでしたか。
吉川: 東京に住んでいますので、すぐ飛べる沖縄は意外と簡単でしたが、東京から車で出掛けた九州地方、特に佐賀県などです。行った時期が悪くて雪が降っていたりしたので…。四国の高速道路が整備されていないエリアも車で行くのが大変でした。

中野: 3年でよくまわられましたね。ダムカードのあるダム以外も入れて全部でどのくらい行かれたのですか。

吉川: 恐らく450基以上はまわっていると思います。

中野: カードをもらうのが目的ですね。

吉川: カードの入手をもちろんですが、写真撮影や資料収集もします。カードは遠方のダムに足を運ぶきっかけを与えてくれています。


 
ダムカードを見てもらうための情報を提供

中野: 宮島さんは、今回、全てのダムカードをご覧になって、どんなふうに感じられましたか。特別に興味を引かれたダムカードはありましたか?

宮島: 逆に興味を引かないカードというか、ピンと来ないというか、どうも良い解説フレーズが浮かばないダムというのがありました。(笑)

中野: 解説で気を使った点はどういうことですか。

宮島: 一応、ダムカードに記載されていることについては触れないようにして原稿を起こしたので結構苦労しました。本を見て、カードを貰いに行った人が自分でダムを見て納得できるように配慮しました。同じ内容だとつまらないですから、自分がこのダムを見たらどう感じるか、ここを見たら楽しいよというふうに書こうとしたので、そこが苦労したところです。


 
オークションより自分の足で集めて欲しい



中野: ダムカードがきっかけになって一般の人がダムに興味を持ってくれたらいいのですが、今はダムカードが人気になって、ネットオークションで取引されているとも言われます。その辺りはどう思われますか?

宮島: ダムカードをきっかけにダム巡りをしてもらうのは良いですが、ダムカードを貰って帰ればそれで良いと、そこでダムへの関心が止まってしまう場合もあるので、今回の本では、それを防止する意味でも、カードを貰って集めるだけじゃなくて、このダムのここを楽しんでほしいという意味で、原稿を書いています。カード収集については、単にコレクターという人もいると思いますが、本当にダムが好きという人なら、オークションは絶対に利用しないと思います。それから、管理所にぽんと置いてあって、ダムカードのつかみ取りみたいな所でも、必ず一人一枚を厳守して頂きたいです。後から来られたかたや、ダム管理所への配慮のためにも。
好きだからこその出版企画

中野: 出版社の中村さんにもお話を伺いたいと思います。ご自身もダムがお好きなのでしょうか?



中村: ダムはもちろんですが、特に放流とダムカードが好きです。

中野: 宮島さんがダムマニアで、すでに本も出されているのはご存知で、今回の企画を出されたのですか?

中村: もちろんです。ダムカードはすべて集めるのがとても大変なので、その全体像を見ることがなかなか難しいと思いました。そこで本というもので、その一覧をフルカラーで見ることができたらどんなに素敵だろうと思ったのがそもそもの企画意図です。そして宮島さんのダムに関するお仕事は以前よりよく知っていましたので、今回真っ先に執筆のお願いをさせていただいたという次第です。

中野: 昨年10月頃から今年3月頃までが編集期間ですか。企画からけっこう短期間でまとめられたようですが、お疲れ様でした。
宮島: 毎日ダムカードとにらめっこで、エクセル三昧でした。わからないことがあるとすぐ、ツイッターでつぶやいてみたりして。けっこう助けられました。それと、ダム吉さんと出会わなかったら今回の本は出ていませんね。

吉川: ちょうどタイミングがよかったからだと思います。まるまる1年前だったら難しかったかもしれません。

まだまだ増えているダムカード

中野: 昨年の11月で国交省が扱っている公式カードが212枚。今だとどれくらいでしょうか。

宮島: おそらく250枚くらいになっているのではないかと。非公式カードも増えているでしょうし、Jパワーさんも出しました。農水省関連のダムではまだのようですが、ダムの中の人にとっても、こういうもので一般の人も興味を持ってくれ、見学者が増えてくれれば、それも良いのではないかと思います。子供が興味を持つのでお父さんにしてみれば連れていきやすいというのもあります。一応、この本も旅行に持っていける大きさで、行ったダムをチェックする欄もついています。

中野: なるほど、親切な構成になっているのですね。一般の人にもっとダムのことを知っていただくには、こういう本があるとやはり興味を引きやすいと考えます。これからダム巡りを始めてみようかという初心者も、これから暖かくなってダムめぐりにも良い季節になりますので、ぜひお出かけいただければと思います。


 今日は、楽しい話題をありがとうございました。



(参考)

ダムカード大全集」

2012/4/20 書店で取り扱いスタート(4/7 三州家で先行発売)
2011年11月までに発行された全てのダムカード全212枚+αを掲載。

宮島咲著
スモール出版
定価1800円+税
A5判並製/フルカラー/144ページ
ISBN 978-4-905158-06-6

(2012年5月作成)
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 (Damkichi(吉))
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