先月、金山ダムの話で凍上のことを書いたが,これは実は伏線で、ソフトバンクがつくるというメガソーラーの実験施設について、いささかの意見を言いたいと思っているのである。それでもこの欄はダムに関わるものでないといけないと言われているので、まずはダムにかこつけた話をする。
1970年に十勝ダム調査事務所が発足した。この時代になると、さすがに国道は完全舗装されているので、本部のある帯広には1時間、本局のある札幌には、狩勝峠を越えて金山ダムの脇を通って行くにもかかわらず、昔の金山からと同じ5時間で行けた。
十勝ダム工事誌より ダムサイトは国有林で、新得営林署の管轄であった。この営林署は面積も大きいが、木材の産出量が全国一ということもあって、おおらかだった。だいたいダムの事務所と営林署は敵対することが多いのだが、ここでは和気藹々と仕事を進めることができた。
国有林内の調査横坑のずりなど、厳密に考えると誰のものであるかややこしいことになるのだが、林道に敷きたいから使っていいかなど紳士的にこられると、国有地から国有地に移動するだけだからなんの問題もないとして自由に使ってもらったし、逆に国有林内のちょっとした木など、もらっていって官舎の庭に植えていいかときくと、同じ理屈でOKしてくれた。ただし、事務所の敷地は借地だったので、事務所の庭には持っていけなかった。
十勝地方はカラッとした気候で、特に冬は晴天が続き、日当たりのいい部屋だと、陽の照っているうちは暖房なしで、半袖で過ごせるほど暖かかいが、そのぶん陽が落ちると放射冷却のためグングン気温が下がり、夜明け前にはマイナス十何度まで下がる。17℃まで下がると小学校は休みになり、ダイヤモンドダストが朝日に照らされてキラキラ輝く。
積雪は少なく、普段はおよそ20cmから30cm程度つもっているだけだが、時には一晩で1mもつもるなどということはある。土地も広々しているし、日照時間が長いということで、メガソーラーの実験施設の場所として選ばれたのだろう。地元も歓迎しているというし、大変結構なことだが、果たして気温のことや凍上のことは考慮されているのだろうか。
道路の凍上を防止するのはさほどむつかしくない。凍結深度まで掘り下げて路盤を造成すればよい。現在ではそのような対策がとられているので、主要幹線道路で春先の泥濘に悩まされることはない。だから街中に住んでいる限り、凍上などということを意識することはないが、ソーラーパネルを設置するなら、同様の対策をとっておかないと、設置したパネルが春先にグチャグチャになり、雪も積もらず、日も当たらない場所は永久凍土になる可能性がある。
また低温ではバッテリーの働きが悪くなるのも周知のことで、バッテリーと一体でなければ機能を発揮できない太陽光発電には過酷な条件となろう。そういうことも含めて実験で実証しようとしているのなら結構だが、単に日照時間の長さに惚れて選んだのであれば、想定外の事故に悩まされることになろう。老婆(爺?)心ながら注意しておきたい。寒冷地北海道の自然をあまりバカにしてはいけない。
(これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事の転載です。)
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