《このごろ》
ダム随想 〜 ルジオン値と透水係数

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 ダムの基礎地盤の水の通しやすさを表わすのにルジオン値というものを用いる。地盤の中に掘った孔の中に10kgf/cm2の圧力をかけた水を注入し、深さ1m当たり毎分何リッターの水が注入されたかを測定し、その値をルジオン値というと定義している。
 孔の径や測定する区間長で同一箇所でも値は変わるが、そのあたりは標準的なものとして径は66o、区間長は5mと一応は定めてあるものの、地盤の性質により、最も適切なものを選べばよい。標準と違った測定をするときは、それはそれなりの理由があるはずだから、その理由もデータのひとつであるとして解釈をすればよい。かなりいい加減なもののように思えるが、十分に実用性がある。

 一般的なアースダムの基礎のように、ほぼ均一な土とみなされるような地盤の場合は、そのような媒体の中を流れる水の状況はほぼ解明されていて、ダルシーフローと呼ばれる。この場合は、ある区間の水圧の勾配に透水係数と呼ばれる数値をかければ、流速が出ることになっている。コンクリートダムを載せるような地盤は一般に硬い岩盤であるから、亀裂の中をあちこち流れる複雑な流れになる。
 それでも透水係数とルジオン値を結びつけたくなるが、ダムの基礎地盤として目安となる1ルジオンが、透水係数でいえばおおむね10-5ということに計算上なる。透水係数の単位はm/sであるが、ルジオン値は何かの計算に用いるわけではないから単位は付けない。

 さて、ルジオン値はその程度に適当なものではあるけれど、実際に測定してみると困ったことが出てくる。圧力を縦軸に、注入量を横軸にとってグラフを描いた場合、直線になれば問題はないが、途中から注入量に関係なく急に圧力が大きくなったり、逆にどうしても圧力が上がらなくなったりする。
 圧力が上がらなくなったのは、多分基礎地盤の強度(一つひとつの石の強度ではなく、地盤全体としての強度)以上の圧力をかけたために地盤を破壊してしまったのではないかという仮説が成り立ち、そうであればそれ以上の圧力をかけないで止水処理をしようという方針を立てられる。

 急に圧力が大きくなる場合は、10kgf/cm2の時の値をルジオン値としていいのか自信が持てない(過小評価しているのではないかという疑問がある)ため、変曲点のところで接線延長をして、10kgf/cm2の注入量を読み取り、換算ルジオン値としている。これがどうにも気持ちが悪くて、なぜ急に圧力が上がるのかという研究が数多くなされている。
 一般的には、層流から乱流に変わるためだろうといわれているが、そこばかり水理学的に追求されても、止水処理をしようとしている現場にはどう関係があるのかわからない。最近もダム工学会誌にそのような論文が出ていたが、透水係数10-12付近の数字で議論をされても、止水処理とどう関係するのかわからない。


換算ルジオン値を求めるP-Q曲線

 「土木学会」の場合、「土木・学会」なのか「土木学・会」なのか疑問に思うことがあるが、「ダム工学会」の場合は「ダム工学・会」でしかありえないと思うので、現場的視点を忘れないで発展してもらいたいと思うのである。

(これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事の転載です。)

(2013.8.28、中村靖治)
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