村沈み思い出だけが宙に舞う 捨てた村訪えば青葉に風騒ぐ 父母眠る湖底の村に続く道 前川元巳
この3句は、前川元巳著「川柳つれづれ」(ブックショップマイタウンー・平成元年)所収。作者は徳山ダムの水没者、岐阜県北方町に移住した。
徳山ダムは独立行政法人水資源機構によつて、木曾三川揖斐川上流岐阜県揖斐郡徳山村(現揖斐川町)に建設された。総貯水容量6億6000万m3は日本一を誇る。だが、ダム建設のため徳山村、全村民1500人、8地区466世帯が移転せざるを得なかった。
湖底には父母が眠り、村を捨てさった悔恨ばかりが残る心情をよむ。故郷徳山村の鎮魂の句である。徳山村は、神山征二郎監督「ふるさと」(加藤 嘉・長門裕之・樫山文枝ら出演)で、映画の舞台となった。ありし日の徳山村の風景美が映しだされる。
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