《このごろ》
ダムをうたう(11) -補償交渉の精神-

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  反対派賛成派てふ色分けを吾は好まずただに説くべき
                          新海五郎

 新海五郎著『歌集只見川』(東北アララギ会郡山・昭和29年)に所収。
 著者は、東北電力株式会社の只見川における柳津、片門、本名、上田の発電所建設に係わり、現地での補償問題を解決し、昭和29年6月から電源開発株式会社に移り、田子倉発電所の補償交渉に全力を傾けた。しかしながら、翌年29年3月過労のため、宿舎で倒れ、東京事務所に配転となった。約10年間ダム補償業務に携わり、この間932首を詠んだ。

 この書で、新海五郎は「敗戦によって、大陸その他ことごとく資源を失った日本の産業は地下資源を始めとする豊富な東北の天然資源によって起きあがらなければならない。そしてそれらの資源によって立つ諸産業は必ずや電源と結ばれなければならない。」と電源開発の重要性を論じる。さらに新海はこのことを基調として、「只見川の補償は私の会社生活を通じてもっとも心血をそそいだ業務であった。」と述べる。

 ダム補償交渉は複雑な人間関係を含んでおり、それぞれに誠意を持って対応しなければならない。新海は関係者に対し、常に、公正な考えをもって事に当たった。ここにひとりの用地マンの真摯な態度が甦ってくる。まさしくこの歌にこそ、ダム補償交渉の精神が貫かれている。

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(2008.10.7、古賀邦雄)
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 (古賀 邦雄)
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