《このごろ》
ダムをうたう(39) -新区画ダム-

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 北海道を歩くと至る所で、開拓の碑に遭遇する。明治新政府が誕生するやいなや、全国各地から沢山の人たちが北海道へ入植し、荒地を血の滲むような人力によって、開墾していった。その祖先の苦悩の歴史が碑に刻まれている。ここ美瑛町新区画地域は、大正4年嵯峨甚平が嵯峨農場を開き、入植者が増加していく。新区画の地の開拓の道もまた平坦でなかったであろう。

 先祖が造り上げたこの地に、新区画ダムが北海道開発局によって、昭和38年に着工し、昭和45年に竣工した。嵯峨貞蔵編『美瑛町湖底のふるさと−新区画とダムの歴史−』(新区画とダムの歴史編纂委員会・平成元年)には、水没者の一人鴻上とし子さんは、次のように歌っている。

  〇開拓の鍬に疲れし硬き手をさすりやりたき父は世になく
  〇血と汗もて父が拓きしふるさとは思い出のこしてダムに沈めり
  〇水乾く湖底に佇ちて一本の枯木に涙そそらむ一族

 新区画ダムは、石狩川水系ニタチパウマナイ川の北海道上川郡美瑛町字新区画に位置する。目的は農業用水である。型式はアースフィルダムで、諸元は堤高32.3m、堤頂長274.7m、堤体積48.2万m3、総貯水容量560万m3、有効貯水容量522.3万m3となっている。


新区画ダム(撮影:ふかちゃん)

 作者鴻上とし子さんの歌は、父母の苦難の跡が偲ばれ、それがそのまま故郷への想いでとなって詠まれている。父母もふるさとも永久に戻ってこない。

 美瑛町は平成26年12月現在、人口10594人。富良野町と共に北海道を代表する観光地として発展。ケンとメリーの木などの丘陵風景と花の風景が人気を呼んでおり、「日本一美しい村」に認定されている。

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(2015.6.22、古賀邦雄)
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 (古賀 邦雄)
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