鈴蘭やアイヌ聖地はダムの底 福永法弘
「北海道212俳句の旅」(北海道新聞社・平成14年)所収。作者は銀行勤務の転勤族。平成13年、週末に北海道212の市町村をすべて回り俳句を詠む。
ダムの底とは平取町の二風谷ダムのこと。季語鈴蘭は夏。平取町はアイヌの聖地、英国人宣教師バチラーがアイヌの人たちの救済のため学園を建てた地でもある。二風谷ダムは、北海道開発局によって昭和57年着手、平成9年完成。アイヌ文化を守るため、二人の土地所有者が補償契約に応じず、土地収用法の手続きを経た。
ダムによってアイヌの聖地は沈んだが、夏には鈴蘭が咲き誇る。そこには新たなアイヌ文化の息吹が感じられる。決してアイヌの精神は失われないことを示すように。
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