田水沸く筑後大堰雲の峰 種田 恵月 筑紫次郎捌く大堰秋近し 堤 三津子
二句とも、筑後川下流用水事業施設見学俳句大会実行委員会編・発行『句集 筑後・佐賀揚水機場』(平成9年)に掲載されている。平成9年8月3日水資源開発公団筑後川用水建設所が筑後大堰や筑後川下流用水施設の見学会を行い、俳句会を開催した。お二人は、福岡県大牟田市の俳句誌『さわらび』に所属する。
種田氏はこの句について、「車を下りて大地に立った途端一望の筑後平野の青田の景に、久し振りに緑の大地と云ふものを感じました。水資源など余り関心のなかったが、この筑後大堰や導水路を見ながら、青田の生育の良さがはっきりうなずけた」、と自解する。 一方、堤氏は、「筑紫次郎の悠久の流れを巧みに捌き、筑前、筑後、佐賀へ分かち合い揚水場、取水口、分水工、クリークを通じて人間のいとなみを潤してくれる筑後大堰、その美しい自然の空と水の流れにいつしか秋の光が満ちて来てをります。」と語る。
筑後大堰は、水資源開発公団(現・水資源機構)によって、昭和60年3月筑後川河口から上流23km地点(右岸佐賀県三養基郡みやき町大字江口、左岸福岡県久留米市安武町大字竹島)に完成した。堰の型式は可動堰、堤高6.4m、総延長501m、5門の主ゲートのほか閘門1門(舟通し)と魚道2ヶ所を設置。総貯水容量550万m3、有効貯水容量93万m3である。
筑後大堰の設置により、河道の洪水疎通能力の増大と河床の安定、筑後川下流部の塩害の防除、既得灌漑用水の取水安定を図っている。利水として、筑後川上流の寺内ダム、江川ダムなどで開発された水を上水道として、福岡都市圏、佐賀市及び鳥栖市、久留米市、柳川市などに供給し、さらに、筑後川独特のアオ取水を合理化して、この大堰の貯水区域内から灌漑用水の取水を行っている。掲載句のように筑後大堰は、まさに水を巧みに捌くカナメである。
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