《このごろ》
ダムをうたう(9) -静寂な湖面-

→ 「このごろ」一覧   → 「このごろ」目次
 
  ほととぎす鳴いて北山ダム広し  平田縫子

 猿渡晴雨主宰、福岡県大牟田市の俳句誌「さわらび」に所収。作者は、福岡県朝倉郡筑前町出身。平成20年3月没、96歳。

 ほととぎす(時鳥)は夏の季語。30センチぐらいのカッコウ科の渡り鳥、5月中旬ごろに飛来し、鳴き声は「トッキョキョカキョク」と聞こえる。
 北山(ほくざん)ダムは、佐賀県を流れる一級河川嘉瀬川の上流佐賀市富士町井田地崎に、農林水産省によって昭和31年に完成した。すでに半世紀を経て、風格がある。
 ダムの諸元は堤高59.3m、堤頂長180m、湛水面積200ha、総貯水容量2225万m3、型式は重力式コンクリートダムで、目的は農業用水と発電用水の供給であり、佐賀県の発展に寄与してきた。

 掲句は、湖水面にほととぎすの鳴き声だけが聞こえてくる。広々とした静寂な湖水の風景を、見事に詠みあげている。
 ところで、植物の時鳥草も同じように、ほととぎすと呼ばれる。季語は秋である。ユリ科の多年草で林の中の湿った崖などに自生する。ガクと花弁に紫の斑点があり、その模様が時鳥の胸腹の模様に似ていることから、この名が付いたという。北山ダムには時鳥も時鳥草もともによく似合う湖である。この北山ダムの下流に、国土交通省の嘉瀬川ダムが建設中である。

[関連ダム] 北山ダム
(2008.7.22、古賀邦雄)
【 関連する 「このごろ」「テーマページ」】

 (ダムをうたう)
  [こ] ダムをうたう(1) -ダムの底-
  [こ] ダムをうたう(2) -雪に眠る-
  [こ] ダムをうたう(3) -ダム湖に浮かぶ湖上駅-
  [こ] ダムをうたう(4) -湖底の村-
  [こ] ダムをうたう(5) -慰霊碑-
  [こ] ダムをうたう(6) -東京沙漠-
  [こ] ダムをうたう(7) -感謝をこめて-
  [こ] ダムをうたう(8) -水源祭-
  [こ] ダムをうたう(10) -戻れない故郷-
  [こ] ダムをうたう(11) -補償交渉の精神-
  [こ] ダムをうたう(12) -小春かな-
  [こ] ダムをうたう(13) -春の光をあびて-
  [こ] ダムをうたう(14) -未来を信じて-
  [こ] ダムをうたう(15) -ああ黒部川 第四発電所-
  [こ] ダムをうたう(16) -感謝の水・愛知用水-
  [こ] ダムをうたう(17) -故郷への回帰-
  [こ] ダムをうたう(18) -ダム竣工を祝う-
  [こ] ダムをうたう(19) -渡鳥さえ巣は恋し-
  [こ] ダムをうたう(20) -県を分かつ-
  [こ] ダムをうたう(21) -補償妥結の寂しさ-
  [こ] ダムをうたう(22) -大井川上流へ-
  [こ] ダムをうたう(23) -鳥たちの安らぎ-
  [こ] ダムをうたう(24) -風薫るダム-
  [こ] ダムをうたう(25) -大斜面を仰ぐ-
  [こ] ダムをうたう(26) -ふるさとが映る-
  [こ] ダムをうたう(27) -こころ休まらず-
  [こ] ダムをうたう(28) -さくら吹雪-
  [こ] ダムをうたう(29) -大鶴湖と鳴く蝉-
  [こ] ダムをうたう(30) -水を巧みに捌く-
  [こ] ダムをうたう(31) -渡る老鶯-
  [こ] ダムをうたう(32) -オスプレイ-
  [こ] ダムをうたう(33) -下久保ダム-
  [こ] ダムをうたう(34) -耕す-
  [こ] ダムをうたう(35) -奈良俣ダム-
  [こ] ダムをうたう(36) -ダム灼くる-
  [こ] ダムをうたう(37) -四季の風光-
  [こ] ダムをうたう(38) -鏡ダム-
  [こ] ダムをうたう(39) -新区画ダム-
  [こ] ダムをうたう(40) -滝沢ダム-
  [こ] ダムをうたう(41) -奥利根水源憲章の歌-
  [こ] ダムをうたう(42) -下筌ダム-
【 関連する ダムマイスター の情報】

 (古賀 邦雄)
 「このごろ」の関連記事(55 件)
 「テーマページ」の関連記事(159 件)
ご意見、ご感想などがございましたら、 までお願いします。