ほととぎす鳴いて北山ダム広し 平田縫子
猿渡晴雨主宰、福岡県大牟田市の俳句誌「さわらび」に所収。作者は、福岡県朝倉郡筑前町出身。平成20年3月没、96歳。
ほととぎす(時鳥)は夏の季語。30センチぐらいのカッコウ科の渡り鳥、5月中旬ごろに飛来し、鳴き声は「トッキョキョカキョク」と聞こえる。 北山(ほくざん)ダムは、佐賀県を流れる一級河川嘉瀬川の上流佐賀市富士町井田地崎に、農林水産省によって昭和31年に完成した。すでに半世紀を経て、風格がある。 ダムの諸元は堤高59.3m、堤頂長180m、湛水面積200ha、総貯水容量2225万m3、型式は重力式コンクリートダムで、目的は農業用水と発電用水の供給であり、佐賀県の発展に寄与してきた。
掲句は、湖水面にほととぎすの鳴き声だけが聞こえてくる。広々とした静寂な湖水の風景を、見事に詠みあげている。 ところで、植物の時鳥草も同じように、ほととぎすと呼ばれる。季語は秋である。ユリ科の多年草で林の中の湿った崖などに自生する。ガクと花弁に紫の斑点があり、その模様が時鳥の胸腹の模様に似ていることから、この名が付いたという。北山ダムには時鳥も時鳥草もともによく似合う湖である。この北山ダムの下流に、国土交通省の嘉瀬川ダムが建設中である。
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