高橋悦男編『俳句カタカナ語』(文学の森・平成17年)という俳句書がある。カタカナ語とは、たとえば、レクリェーション、バカンスと言ったカタカナ表記の単語のことだ。この書にはカタカナ語ばかりの俳句が並んでおり、ユニ−クものとなっている。 その中に「ダム」も掲載されている。ダムという項を見ると、ダムを詠んだ5句が載っている。
新設のダムに波立つ青嵐 宮田富昭 ダムに水湛へ全山夏に入る 高野清美 赤とんぼ現場に拾ひダムに放つ 沢木欣一 粧(よそ)へる山を映してダムの水 小林真弓 ダム工事して氷に上る魚もなし 高橋悦男
ダム建設には、たくさんの方が携わる。完成までにそれぞれにダムへの想い出が残っている。新設となったダムサイトに立てば、青葉のころに吹く青嵐に出会う。爽快感と清涼感をもたらす。季語は夏である。 赤とんぼをそつと、ダムに放つ。おそらくダム現場では、修羅場のような苦難の連続だったと、推測される。何とはなしに心が和んでくる句である。
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