《このごろ》
ダムをうたう(10) -戻れない故郷-

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  死のごとしふたたびこの地に戻ること無しダム移転
                         
山口美智子

 山口美智子著「村とダム−水没する秩父の暮らし」(すずさわ書店・平成9年)所収。
 作者は秩父市から吉田町塚越地区に居を移し、合角ダムで水没する日尾、合角、塚越、女形地区の人たちの生活を取材した。その時の歌である。

 合角ダム(西秩父桃湖)は、荒川水系吉田川の上流埼玉県秩父郡吉田町大字上吉田字松山地先に、埼玉県によって、多目的ダムとして30数年を経て平成15年に完成した。このダムの諸元は堤高60.9m、堤頂長195m、堤体積約17万m3、総貯水容量1025万m3、型式は重力式コンクリートダムである。

 この書によれば、75世帯の移転者たちは、当初「ダム建設は絶対嫌だなぁ」、「ふんとに嫌だなぁ」と嘆いていた、という。時を経て、次第に「都会の人に水をくれるために、ここから出て行くだけど、これから大勢の人のためになるなら、これも仕方ねえことなんだなぁ」とダム建設を容認する。
 しかしながら、新居に移転しても望郷の念はつのるばかりであった。

 ダムの水没地吉田町、小鹿野町は、明治17年「秩父事件」の舞台となったところであった。
 秩父地方には合角ダムをはじめ、昭和36年大滝村に二瀬ダム(移転世帯30)、平成11年秩父市、荒川村に浦山ダム(移転世帯50)、平成20年大滝村に滝沢ダム(移転世帯112)がそれぞれ竣工している。これらの四つのダムを合わせると、267世帯が住み慣れた故郷をあとにした。

[関連ダム] 合角ダム
(2008.9.18、古賀邦雄)
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 (古賀 邦雄)
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