炎天に挑みてダムの水真青 西村静恵
岡部六弥太・平田羨魚共編「福岡吟行歳時記」(りーぶる出版・昭和54年)所収。この句は甘木市(現朝倉市)の江川ダムの項に載っている。
江川ダム(上秋月湖)は、筑後川総合開発事業の一環である両筑平野用水事業の基幹施設として、水資源開発公団(現水資源機構)によって、昭和47年に完成した。その目的は農業用水、水道用水、工業用水を供給することでである。江川ダムの諸元をみてみると、堤高79.2m、堤頂長297.5m、堤体積26.1万m3、総貯水容量2530万m3、型式は重力式コンクリートダムで、施工者は西松建設、大林組である。
江川ダムは完成後間近、昭和53年に脚光をあびた。それは福岡都市圏における、昭和53年5月〜54年3月の287日間に及ぶ給水制限がなされた時のことである。福岡大渇水であった。連日、干上がった江川ダムの姿がテレビ等に映し出された。
平成20年6月2日現在、ダムの貯水率は83.7%で、この掲句のように湖水面は真青に染まっている。福岡都市圏200万人の生命の水である。江川ダムでは75世帯が水没した。水没された方々の恩を決して忘れることはできない。毎年6月、その恩に感謝するために上秋月湖では水源祭が行われている。
それは江川水源祭という。昭和48年から開催され、今年は36回目。6月7日に、ダム建設に伴う水没者など地元関係者と、朝倉市、両筑土地改良区、福岡市、福岡地区水道企業団、水資源機構などの関係者が出席して、江川ダム堤体上で清酒注ぎの式などを行うとのことである。
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