《このごろ》
ダムをうたう(33) -下久保ダム-

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   ダムとなる故郷(ふるさと)かなし麦の秋  坂井三嶺子句碑

 この句碑は、神流川の中流域の左岸群馬県多野郡鬼石町(現・藤岡市)、右岸埼玉県児玉郡神泉町(現・神川村)に建設された下久保ダム菅原神社境内地(鬼石町坂原)にある。ダム湖が眼下に見える。昭和42年句碑は三波石に刻まれた。作者は、おそらく、下久保ダムにおける水没者の一人であろう。


菅原神社(撮影:若林高子)

 長年住み慣れた、想い出の地が湖底に沈んでいくのは、あまりにも哀しい。麦秋をすぎると完全に故郷は沈む。誰にもその悲哀感は伝えられない。麦の秋は麦の穂がみのり、黄色に熟していく、5月〜6月ごろ、季語は夏である。

 さらに、同氏による<夜は夜のダムの底より祭笛>の句碑も、鬼石町坂原神戸に、自然石の側面に刻印されている。


上流側(撮影:若林高子)

 下久保ダムの型式は、重力式コンクリートダムで、堤高主ダム129m、補助ダム73m、堤頂長主ダム310m、補助ダム295m、総貯水容量13000万m3で、起業者は水資源開発公団(現・水資源機構)である。


下流から(撮影:星野夕陽)

 下久保ダムの一つの特徴は、ダムが上流に向かってアルファベットの『L』字型に折れ曲がっていることである。これは貯水量の確保と技術的問題があったと言われている。ダムは、洪水調節、不特定灌漑用水、都市用水、発電と、4つの目的を持っている。

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(2013.9.19、古賀邦雄)
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 (古賀 邦雄)
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