「近畿地建は ”たとえ地元の反対派あってもダムは建設する”と宣言した。京都府は ”水没農家の補償をはじめ、事後の営農振興に責任をもって処理する”と勧告してきた。われわれは下流の切実な要望にも応えて、府が全責任をもつなら協力する方向に進みたいと、その勧告を受諾した」
「われわれ被害者は再三繰り返しているように、大野ダムの公共性について、敢えて反対するものではないが、祖先伝来の家を失い、昔からの百姓よりしたことのない農民が、その基盤である田畑を奪われることは明日からの生活をどうしょうかとの不安は勿論、生活の見通しすら樹たないがためであって、去る昭和26年から過去6年絶対反対を続けてきた所以もここにある。しかし前述の通り府の親心を持った勧告と下流の誠意に期待して条件闘争に切り換え今日の段階に至った……地建側が今後われわれの切実な要求に応えてくれるものと信じ、今後の交渉で円満解決を図りたい」
「由良川改修問題は多年の懸案であり、洪水調節を大野村に設け、発電と両方面使用するかどうか、これは今日両方とも使用することが必要だと思う。最近電力会社の電気料金値上げによる、一般府民の迷惑は国民経済的に考えて重要なことである。技術面は不明だが、この工事による多少の犠牲は出ると思うが、これは止むを得んと思う。しかし、これに対する住民の経済生活の基盤を失うことは、即ち農民から土地を奪うことはできぬ。これに対する補償について国のはっきりした線を出す必要があり、十分なしかも適正な補償をしてもらう。住民が今までより一層よくなる対策を講じてやってこそ私は工事をやれると思う。国家補償は国家補償、府は府としての対策を講ずる必要ありと考える。」
・府としては国の補償以外に犠牲者に補償を出す。今までのやり方は国の補償だけであるが、私としては知事として犠牲者の生活ができるようにしたいと考えている。・従来の農業経営を継続できるよう十分考えるが、今までの経営方法ができなければ別の方途を講ずるようにする。・由良川を何んとかして京都府の立派な河川としてもっていきたい。国からも十分維持施設をして貰いたいと思っている。そのため犠牲者が出た場合は国よりも十分な補償をしてもらうし、知事としても皆様の生活と経済を守るため努力する。