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ダムの書誌あれこれ(93)
〜九頭竜川 九頭竜ダム〜

 これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事を一部修正して転載したものです。著者は、古賀邦雄氏(水・河川・湖沼関係文献研究会)です。

◆ 1. 九頭竜川の流れ

 福井県において、九頭竜川は最も重要な河川である。福井県の政治、経済、文化の発展の土台を九頭竜川が担っているからである。福井県の河川は、嶺北地方の九頭竜川と嶺南地方の北川に大別できる。

 九頭竜川は岐阜県境油坂峠にその源を発し、加越山地を北西に流れて大野盆地に入り、越美山地を水源とする左支川真名川(流域面積356.9km2、流路延長47.1q)を勝山市下荒井地先で合わせ、志比地溝を西流して、鳴鹿地先で福井平野に出る。笹ヶ峰を水源とする最大左支川日野川(流域面積1,275.5km2、流路延長71.5q)は武生盆地を北流し、福井市西郊で足羽川(流域面積415.6km2、流路延長61.7q)を合わせ、低平な福井平野の西端を流れ、三国町地先で日本海に注ぐ流域面積2,930km2、幹川流路延長116q、北陸地方屈指の一級河川である。

 なお、真名川、日野川、足羽川など145河川を合流し、その流域面積2,930km2は福井県総面積4,189.24km2の7割を占め、流域内人口約67万人は、総人口80.5万人の8割を占める。また、流域面積2,930km2の内訳は山地面積2,280km2(77.8%)、平地面積650.0km2(22.2%)となっている。


 気候は北陸の気候特性をもち、年間降水量も全国平均を上回り、山間部で3,000oを越え、平野部でも2,000oに及び、全国的にみて、多雨、多雪地帯である。このことから九頭竜川などの水量は豊富で、平野部では奈良時代から荘園の農業用水や物資輸送の舟運に利用されていたが、最近では都市用水にも利用されている。また、山間部では明治32年には水力発電が行われ、現在では九頭竜・真名川ダムなどによる水力発電は約52万kWに達している。

 九頭竜川流域の地質は、南側に主として二畳・石炭紀に属する非変成岩古生層(丹波層群)が分布しているのに対して、北側には飛騨片麻岩を基盤として、その上にジュラ紀〜白亜紀に属する中生代の手取層群、足羽層群が広く被覆している。大野・勝山盆地の西縁部を南北に通る線の東側地域には主として中生代、西側地域には主として新生代が分布する。勝山市北谷地区の中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて形成された手取層群と呼ばれる地層から、昭和57年(1982)にワニ化石と一緒に約1億2千年前の恐竜化石が採集された。

 九頭竜川流域の植物種は101科638種で、ツルヨシ、タチヤナギ、ヨシ、ヒメガマ、マコモ、オギ、チガヤなどが生育している。特定種として、絶滅危惧種のフジバカマ、危急種のタコノアシ、ミクリ、キンガヤツリなどである。魚類のうちカマキリは九頭竜川中流域の代表種であり、福井では、カマキリは「アラレガコ」と呼ばれ天然記念物として保護されている。トゲウオ科の「イトヨ」は大野市本願清水、トミヨは武生市に生息する。

 近年、関西・中部経済圏を結ぶ主要幹線である北陸自動車道、国道8号線、157号線、158号線や県内主要地方道などが整備され、また、福井臨海工業地帯などの発展もあって、越前和紙、漆器などの伝統地場産業や繊維、めがね枠などの軽工業を含め産業基盤も整備され、新しい産業の創出を図っている。

◆ 2. 九頭竜川洪水の特徴

 九頭竜川水系の洪水については、建設省九頭竜川ダム統合管理事務所編・発行『九頭竜川のダム管理』(昭和63年)に、次のように記されている。

 九頭竜川水系の洪水は、流域の気候が複雑で変化にとみ、6〜7月の梅雨期および8月〜10月にかけての台風期による降雨、1月〜2月の降雪などにより、年間降水量も全国平均1,800oと比べて大きく、九頭竜川本川上流部では3,000oを越え、支川日野川・足羽川上流部で2,600〜2,800oとなっていることから、

@ 3月〜4月上旬 融雪による洪水
A 6月〜7月上旬 梅雨による洪水
B 6月下旬〜7月上旬 梅雨末期の豪雨による洪水
C 8月〜10月 台風に伴う豪雨による洪水

となっている。


『九頭竜川のダム管理』
 このうち、梅雨末期および台風にともなう豪雨は大洪水になる場合が多い。九頭竜川水系が、九頭竜川本川と日野川・足羽川・真名川の3大支川および南北に広く分布する多くの支川からなり、また扇型の流域を奥地に向かって広げていることから、九頭竜川本川と各支川流域の降雨時に降水条件が異なり、出水時に合流点におけるピークをずらすことが多いなどの特徴を持っている。また、台風については、台風の通過経路によって流域の降水パターンが異なり、流域の東側を通過する場合は日野川上流部が多雨域となり、北側を通過する場合は九頭竜川本川上流部が多雨域になる。九頭竜川本川と日野川および足羽川が同時に大洪水になることは非常に稀である。

◆ 3. 九頭竜川の洪水とその治水対策

 九頭竜川における越水・破堤を伴う洪水、その治水対策ついて、国土交通省福井工事事務所編・発行『九頭竜川治水100年のあゆみ』(平成13年)から見てみたい。

@ 昭和23年(1948)7月の梅雨前線による洪水

 昭和23年6月の地震によって被害を受けた九頭竜川本川の堤防は、7月22日からの降雨による洪水で25日の夕方、左岸中藤島村灯明寺地先で約300mにわたって決壊した。福井市の西北部および西・中藤島村一帯は、浸水深さ約2.4mにもなり、福井市内の浸水家屋は約7,000戸、被災人口約28,000人、浸水面積は約1,900haに及んだ。九頭竜川右岸では、木部村 (現・三国町)池見〜川崎間の堤防が約1,500m決壊し、兵庫川の左岸堤防に至る区域が浸水した。
 福井地震によって、九頭竜川本川・日野川・足羽川・竹田川などの堤防が約1m〜5m沈下・陥没し、その延長が約140qにも及んだ。復旧工事は、築堤約210万m3、護岸・根固工約254千m2、水制工約1,800m、悪水樋門35ヵ所など、約8億5千万円の工事を進め、昭和28年3月に完成した。

A 昭和28年(1953)9月の台風13号による洪水

 9月23日からの前線にともなった台風13号による暴風雨で、九頭竜川流域の日野川及び嶺南地方の南川、北川で大災害となり、4市7町38村に災害救助法が発動された。日野川では各所で破堤、浸水した。特に、日野川右岸三郎丸地先の破堤によって福井市西北部の一部が泥海化した。

B 昭和34年(1959)8月と台風7号による洪水

 8月12日からの前線と、13日夜からの台風7号による豪雨により2山洪水となり、布施田地点で計画高水位を、また中角地点、深谷地点で警戒水位を超え、九頭竜川上流や日野川で堤防の破壊、決壊が続出した。福井市、鯖江市、森田町、三国町、今立町、清水町で災害救助法が発動された。 九頭竜川再改修工事は、昭和31年(1956)4月の告示を受け、建設省が「九頭竜川改修総体計画」を作成して工事に着手した。改修工事は九頭竜川および日野川の河道浚渫、堤防嵩上げおよび補強を主体とし、河道掘削土を農地に客土して乾田化を図る目的で進められた。
 浚渫工事は、昭和31年(1956)11月に日野川の三郎丸地先で200馬力のポンプ浚渫船を用いて工事に着手し、三郎丸地区の耕地に良質の砂壌土のみを客土した。堤防の裏腹付工事は翌32年秋までに黒丸地区の工事が完成した。

C 昭和34年(1959)9月伊勢湾台風(台風15号)による洪水

 伊勢湾台風(台風15号)による豪雨で、雨量は嶺南東北部と西部の山地に多く、各河川とも計画高水位を超えるか、またはこれに近い増水となり、布施田地点、中角地点で計画高水位を、深谷地点では計画水位を超える出水となった。特に和泉村大谷では、2時間降水量が104oに達する強雨のため、和泉村では鉄砲水となって一瞬にして20数名が流死した。
 昭和34年、昭和35年と続く洪水によって大きな被害が生じたため、災害助成工事として九頭竜川五領ケ島の裏川の締め切りが決定され、それに関連する工事が昭和35年度より進められ、昭和43年7月九頭竜ダムの完成を待って、昭和43年度に締め切られ現在の姿となった。
 また、足羽川の水越・明里〜大瀬の放水路は、昭和38年(1963)度に水越地区での旧河道閉塞や旧足羽川の埋立てが竣工し、放水路工事が完成した。

D 昭和36年(1961)9月の第二室戸台風(台風18号)による洪水

 第二室戸台風によって、水源山間部が豪雨に見舞われ、布施田地点および中角地点、深谷地点が計画高水位を超える大洪水となり、流失家屋等107棟、浸水家屋4,361棟などの被害を受けた。

E 昭和40年(1965)9月の洪水(三大水害)

 九頭竜川流域では、昭和40年9月8日から18日までの10日間に台風23号、前線による集中豪雨(奥越豪雨)、台風24号と連続して豪雨に見舞われ、特に、13日〜14日の奥越豪雨は、本戸で日雨量844oを記録し、西谷村に壊滅的な被害をもたらした。大野市、勝山市、西谷村、和泉村に災害救助法が発動された。布施田地点、中角地点、深谷地点では、警戒水位を越えた。
 洪水を防ぐため、昭和44年3月日野川右岸底喰川樋門、昭和47年10月九頭竜川右岸磯部川樋門、昭和48年1月九頭竜川左岸片川樋門がそれぞれ完成した。
 昭和53年3月に真名川に真名川ダムが完成。53年4月真名川砂防事業が着手された。
 また、内水対策として、昭和52年度に磯部川排水機場、昭和53年度に片川排水機場、平成3年度に江端川水門・排水機場がそれぞれ完成した。

F 昭和56年(1971)7月の梅雨前線による洪水

 梅雨前線と雷雨により、2日までに、100oを越す降雨があったうえに、3日夜半からの短時間の大雨で、中角地点、深谷地点では警戒水位を越え、竹田川では堤防が越水し、浸水被害を生じた。また、勝山市の滝波川や宮前川、永平寺川、美山町の大谷川等の小河川では氾濫や堤防決壊による被害が生じた。福井市の市内低地では浸水被害が生じた。
 日野川の九頭竜川合流点〜足羽川合流点の川幅の引堤工事が実施され、昭和62年度安武地区、平成7年度三郎丸地区、平成12年度大安寺地区がそれぞれ竣工した。

G 平成10年(1998)7月の梅雨前線による洪水

 雨は10日午前5時頃から降り始め、午前11時までの6時間に武生122o、織田117oなど記録した。24時間最大雨量は、鯖江で170o、今立で172oであった。集中豪雨によって浅水川で、一部の区間において堤防が越水した。このため鯖江市に陸上自衛隊115名が緊急派遣された。日野川では、三尾野、久喜津地点で警戒水位を越えた。
 福井工事事務所は、福井県が実施する浅水川改修に併せて、日野川の深谷から久喜津までの6.8qを対象に、上流部における災害復旧等に伴う流量増に対し、下流部においても流量増加に対応できるように、河道掘削や築堤などの河川改修を実施した。

◆ 4. 九頭竜ダムの建設計画の経緯

 以上、九頭竜川の洪水とその治水をみてきたが、昭和43年7月に完成した九頭竜ダムの建設について、前掲書『九頭竜川のダム管理』、九頭竜ダムおよび長野発電所のパンフレットにより、追ってみる。

 九頭竜ダムは、九頭竜川総合開発計画の一環として、九頭竜川本川の福井県大野郡和泉村(現・大野市長野)地先に、洪水調節並びに発電を目的とする多目的ダムとして建設省(現・国土交通省)と電源開発(株)とが共同して建設したものである。

 九頭竜ダムの建設計画の経緯については、次のとおりである。

 ダムによる洪水調節計画立案の契機となったのは、昭和34年9月の伊勢湾台風による出水で、九頭竜川本川の既定計画を著しく上回る出水規模で、未曽有の被害をもたらした。そのため昭和35年に計画高水流量を見直し、改修計画は下流沿川の市街地が進んでいる現状と将来の状況を考慮し、九頭竜川本川上流の下山地点にダムを建設して、洪水調節を行う抜本的な改訂が図られ、昭和35年12月に九頭竜川本川中角基準点地点で、基本高水流量5,300m3/s、計画高水流量3,500m3/sとする改修計画が決定され、九頭竜川上流でダムによる洪水調節計画の調査を開始した。


 一方、従前より九頭竜川本川上流部に大規模な電源開発計画が検討されていたので、この計画に洪水調節容量を付加する案と、九頭竜川本川上流部下山地点に洪水調節を主体とするダムを建設する案の2案について検討することになり、その検討の結果、九頭竜川本川上流に長野ダム(後日、九頭竜ダムに名称変更となる)、右支川石い徹と白しろ川がわに後のち野のダムを建設し、湯ゆ上がみ発電所240MW、西勝原発電所50MW計290MWの発電に、洪水調節容量の検討を行い、九頭竜ダムに3,920万m3、後野ダムに5,800万m3の洪水調節容量を上乗せする多目的ダムとして計画することに昭和36年3月に一応決定した。

 この計画を、昭和37年2月に地元和泉村に提示したが、補償などに問題があるとのことで、開発に絶対反対の意志が示されたために、福井県の斡旋と、同年9月通産省の指示により、北陸地方の電力需給が、今後、火力発電所の建設により水主火従から火主水従に移行されることになったことから、需給および経済性から揚水発電を加味することにし、九頭竜ダムの建設と長野・湯上・西にし勝かど原はら第3発電所を新設し、後野ダム築造は一応見おくることとなった。

 最終案として、九頭竜ダムは越美北線や鉱山が水没することを避けるために、建設地点を当初の湯上地点から上流の長野地点に移動し、高さを125mから128mに変更し、九頭竜ダム直下に長野発電所を建設し、揚水発電を加味した結果、出力22万kWに設定した。下流には揚水発電の下池兼調整池として鷲ダムを建設する。鷲ダム下流で九頭竜川に合流する石い徹と白しろ川がわの水も有効利用するために、石徹白川上流に石い徹と白しろダムおよびいくつかの取水堰を建設し、取り入れた水を九頭竜ダムに送水する。石徹白ダムで取りこぼした水は、下流の山やん原ばらダムで取水し、鷲ダムからの水と合わせて湯上発電所に送水する。湯上発電所の下流に仏原ダムを建設し、西勝原第三発電所に送水する。

 九頭竜ダムの工事は、このような経緯を経て、昭和40年に着工し、昭和43年に完成した。


◆ 5. 九頭竜ダムの諸元

 九頭竜ダムは、九頭竜川の上流福井県大野市長野に位置する。その諸元は、堤高128m、堤頂長355.0m、堤頂幅12.0m、堤体積630万m3、基礎岩盤高EL.440.50m、堤頂標高EL.568.50m、基礎地質 千枚岩質粘板岩・礫岩、集水面積184.5km2、湛水面積8.9km2、総貯水容量3億5,300万m3、有効貯水容量2億2,300万m3、堆砂容量 死水容量1億3,000万m3(内堆砂容量1,178万m3)、洪水調節容量3,300万m3、発電容量1億9,000万m3、サーチャージ満水位EL.564.0m、常時満水位EL.560.0mで、型式は土質遮水壁型ロックフィルダムである。

 九頭竜ダムのロック材料の特徴について、電力土木技術協会編・発行『改訂新版 最新フィルダム工学』(昭和56年)に、次のように記されている。


『改訂新版 最新フィルダム工学』
「ダム上流約2qの原石山からロックとダム付属構造物の掘削ずりを利用した。原石山の主体は角れき質凝灰岩、礫岩、凝灰質砂岩などであり、大塊を含む粒度分布のよい材料だった。ダム周辺構造物の掘削岩ずりのうち、洪水吐きのものは大半が粘板岩であり、仮排水路トンネルのものは輝緑凝灰岩及び頁岩が多い。

 九頭竜ダムのロック材料の特徴を列記すれば、
@ 大塊を含む粗粒から細粒までの各種の粒度を持つ材料が得られ、主として盛立て前半に使用する材料は洪水吐き掘削ずりおよび原石山の地表に近い部分で、細粒ロックが多い。
A 原石山ロックは摩耗にはかなり強い。
B ロックの形状は概して角ばったものとやや球状のものが多い。

 ロック材料のうちから、大塊を含まない比較的細粒の材料をトランジション用として選定し、フィルターとロック間の急激な粒度変化の融和を図った。

 また、ダムの法尻付近にウエィティングゾーンを設け、これを土捨場代わりに用いるとともに、ダムの一層の安定を図った。このウエィティングゾーンには他のいずれのゾーンにも使えない土岩を主体として、部分的に原石山ロックが使用されている。上流側の捨石張りと下流の法面はロックフィル中最も大きな岩石を並べたもので、その多くは直径2mを上回っている。」

 なお、起業者は国土交通省・電源開発(株)の共同、施工者は鹿島建設で、総事業費は約266億円を要した。主なる補償として水没戸数529戸、農地191ha、山林868haで、水没世帯の過半数は岐阜県・愛知県といった中京圏に移転した。残念なことであるが、ダム建設によって30名の殉職者がでた。その慰霊碑が建立されている。


◆ 6. 九頭竜ダムの目的

@ 洪水調節

 九頭竜ダムの洪水調節は、ダム地点における計画高水流量1,500m3/sを、270m3/sの一定量放流を行い、貯水池水位EL.564.0〜560.0m間の利用水深4mの洪水調節容量3,300万m3を利用して、ピーク流量で1,230m3/sを調節し、また、他ダム群と合わせて、九頭竜川本川中角基準点における基準高水流量8,600m3を計画高水流量5,500m3/sに低減させ、九頭竜川下流沿川地区の洪水防御をするものである。
 完成後9年目の昭和51年9月の台風17号の出水により、既往最大流入量1,031m3/sとなり、貯水池水位が常時満水位を越えたため、洪水吐ゲートにより放流を行い、洪水調節を行った。


A 発電

 九頭竜ダム左岸直下の地下式長野発電所は、九頭竜ダムの常時満水位EL.560.0〜529.0m間の利用水深31mの発電用貯水容量1億9,000万m3を利用して最大出力22万kW(常時1.06万kW)の発電を行う。また、九頭竜ダム直下の鷲ダムの調整池を下池として、揚水式発電を行っている。

◆ 7. 長野発電所・鷲ダム・   湯上発電所のしくみ

 電源開発(株)の長野発電所の型式は、既に述べてきたようにダム・揚水式である。その諸元は、最大使用水量は、発電(最大)266.0m3/s・常時24.47m3/s、揚水266.0m3/s、有効落差(最大)97.5m、年間発生電力量355,800MWH(内 揚水165,000MWH)、水車 立軸フランシスポンプ水車2台・最大出力113,000kW、発電機 立軸三相交流同期発電発動機 2台となっている。

 長野発電所の直下、大野市鷲に位置する鷲ダムは、電源開発(株)によって昭和43年に完成した。型式重力式アーチダムで、その諸元は、堤高44.0m、堤頂長277.0m、堤体積11.3万m3、流域面積191.6km2、総貯水容量965万m3、有効貯水容量610万m3となっている。

 鷲ダムは、谷間に美しい弧形の姿をみせるコンクリート重力式アーチダムで、長野発電所で使った水を鷲ダムで貯め、九頭竜ダムに汲み上げ長野発電所で使用する下池の役割を果たしている。

 また、鷲ダムで貯められた水は、下流6qにある湯上発電所に導かれ発電に利用される。湯上発電所は、九頭竜川水系石徹白川の大野市西勝原に位置し、使用水量53.0m3/s、最大有効落差120.0mをもって、最大出力5.4万kWの発電を行う。湯上発電所で利用した水は、その後、北陸電力(株)仏原ダムに放流されている。


◆ 8. おわりに

 私は平成23年7月22日九頭竜ダムを訪れた。JR福井駅から越美北線に乗って、一輌のディーゼル列車は朝倉氏の一乗谷、水の都越前大野市を過ぎ、終点九頭竜湖駅に到着。ここから国道157号線をのぼると、ほどなく、美しいアーチ式の鷲ダムに着く。さらに長野発電所と九頭竜ダムが右側に見えてきた。一目万本の桜並木の急な坂道をのぼりつめると雄大な九頭竜ダム湖である。この湖底には529世帯が昭和30年代まで暮らしていた。

 おわりに、服部勇次著『ダムと水の歌102曲集−ダム湖碑を訪ねて−』(服部勇次音楽研究所・昭和62年)により、「九頭竜ダム」と「長野発電所の歌」を掲げる。

○ 九頭竜ダム(服部勇次作詞・作曲)
 1. 春は花見と 人々が
   万本桜に 見とれている
   湖底に沈んだ 村人に
   声などとどく はずがない
   九頭竜ダムに わが家は沈んだ
 2. 山の仕事に 明け暮れて
   身をよせあって 生きてきた
   山菜採りに 魚取り
   冬はいろりで 毛糸編み
   九頭竜ダムに わが家は沈んだ
 3. カヤぶき屋根に 別れ告げ
   犬山城の 街へ来た
   木曽川堤を 見るたびに
   ふるさとの川 思い出す
   九頭竜ダムに わが家は沈んだ

○ 長野発電所の歌(服部勇次作詞・作曲)
 1. 大雨降れば はんらんし
   くずれ川と 呼ばれたる
   総合開発 叫ばれて
   造りし長野 発電所
 2. 九頭竜ダムの その地下で
   水車は回り 発電す
   北陸中部へ 送られる
   揚水長野 発電所
 3. 湖水に浮かぶ あの笑顔
   現場に散った 労働者
   眠り給えよ 安らかに
   桜の長野 発電所

[関連ダム]  九頭竜ダム  鷲ダム
(2013年8月作成)
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  [テ] ダムの書誌あれこれ(38)〜高知県のダム〔下〕(鎌井谷、大渡、桐見、中筋川、坂本)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(39)〜青森県のダム〔上〕(目屋、久吉、早瀬野、二庄内)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(40)〜青森県のダム〔中〕(浅瀬石川、浪岡、小泊、下湯)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(41)〜青森県のダム〔下〕(浅虫、川内、天間、世増)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(42)〜山形県のダム〔上〕(白川、長井、前川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(43)〜山形県のダム〔中〕(蔵王、寒河江、白水川、新鶴子、神室、田沢川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(44)〜山形県のダム〔下〕(月光川、荒沢、月山、温海川、横川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(45)〜千葉県のダム〔上〕(山倉、高滝、亀山)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(46)〜千葉県のダム〔中〕(片倉、郡、矢那川、保台、山内)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(47)〜千葉県のダム〔下〕(印旛沼開発、利根川河口堰、東金、長柄)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(48)〜ダムの事典、ダムの紀行〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(49)〜ダムの切手、ダムの話、緑のダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(50)〜ダムの景観〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(51)〜ダム湖の生態〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(52)〜ダムの堆砂〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(53)〜茨城県のダム(飯田・花貫・小山・緒川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(54)〜矢作川のダム(矢作・雨山・木瀬)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(55)〜埼玉県荒川のダム (上)(二瀬・有間)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(56)〜埼玉県荒川のダム (下)(浦山・合角・滝沢)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(57)〜長崎県のダム (上)(本河内高部/低部・土師野尾・萱瀬再開発)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(58)〜長崎県のダム (下)(相当・川谷・下の原再開発)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(59)〜熊本県のダム (上)(竜門ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(60)〜熊本県のダム (下)(石打・上津浦・緑川・市房)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(61)〜鬼怒川のダム (上)(五十里・川俣)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(62)〜鬼怒川のダム (下)(川治・鬼怒川上流ダム群連携・三河沢)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(63)〜揖斐川のダム (上)(川浦・川浦鞍部・上大須)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(64)〜揖斐川のダム (下)(横山・徳山)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(65)〜長野県・味噌川ダム 〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(66)〜飛騨川のダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(67)〜木曽川水系阿木川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(68)〜桃山発電所、読書第1発電所、賤母発電所、落合ダム、大井ダム、読書ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(69)〜木曽川水系丸山ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(70)〜牧尾ダムと愛知用水 (上)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(71)〜牧尾ダムと愛知用水 (中)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(72)〜牧尾ダムと愛知用水 (下)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(73)〜呑吐ダム・加古川大堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(74)〜一庫ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(75)〜利根川水系神流川・下久保ダム、塩沢ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(76)〜阿武隈川水系白石川・七ヶ宿ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(77)〜利根川水系渡良瀬川・草木ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(78)〜利根川最上流・矢木沢ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(79)〜利根川水系楢俣川・奈良俣ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(80)〜神流川発電所(南相木ダム・上野ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(81)〜雄物川水系玉川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(82)〜北上川水系江合川鳴子ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(83)〜北上川水系雫石川・御所ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(84)〜北上川四十四田ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(85)〜米代川水系森吉山ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(86)〜阿賀野川水系大川ダム・大内ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(87)〜東京都のダム(村山上貯水池・村山下貯水池・山口貯水池)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(88)〜東京都のダム(小河内ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(89)〜筑後川水系・藤波ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(90)〜江の川土師ダム、太田川高瀬堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(91)〜遠賀川福智山ダム・遠賀川河口堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(92)〜江の川水系馬洗川支川上下川 灰塚ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(94)〜九頭竜川水系真名川 笹生川ダム・雲川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(95)〜九頭竜川水系真名川・真名川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(96)〜ダムマニアの撮った写真集〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(97)〜吉井川水系苫田ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(98)〜旭川水系旭川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(99)〜利根川水系薗原ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(100)〜淀川水系琵琶湖支川野洲川ダム・青土ダム・姉川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(101)〜川内川・鶴田ダムとその再開発事業〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(102)〜筑後川・筑後大堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(103)〜阿武隈川水系大滝根川・三春ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(104)〜豊川水系宇連川宇連ダム・大島川大島ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(105)〜安里川水系安里川 金城ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(106)〜荒川水系中津川 滝沢ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(107)〜鹿児島県の川辺ダム、大和ダム、西之谷ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(108)〜肝属川水系串良川支川高隈川 高隈ダム〜
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 (古賀 邦雄)
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