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ダムの書誌あれこれ(106)
〜荒川水系中津川 滝沢ダム〜

 これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事を一部修正して転載したものです。著者は、古賀邦雄氏(水・河川・湖沼関係文献研究会、ダムマイスター 01-014)です。

◆ 1. 荒川の流れ

 荒川の流れについては、水資源開発公団滝沢ダム建設所編『荒ぶる川の恵み−滝沢ダムものがたり』(水資源協会・平成8年)から追ってみる。

 荒川は甲武信ヶ岳(標高2,475m)を水源として、中生層の大滝層群の山地に深いV字谷を刻みながら「真の沢」を下り、柳小屋付近で「股の沢」の水を入れ、その後「赤沢」と出会う。ここが一級河川としての「赤川起点」である。沢の水は河川水となり、川又発電所付近で滝川を、やがて大洞川、中津川、大血川を合わせて秩父盆地に至る。

 盆地ではその中央、荒川がかつて第三紀層や秩父中・古生層をU字形に刻んだ河岸段丘の間を北流する。安谷川、浦山川、横瀬川、蒔田川、赤平川を合わせて皆野町を流れ、ここから寄居町まで日野沢川、滝の入川、三沢川、坂東沢川などを合流し、流路を大きく東に転じる。


『荒ぶる川の恵み−滝沢ダムものがたり』
 寄居町をすぎると櫛挽台地と呼ばれるかつての荒川扇状地の南縁を東流し、新吉野川や吉野川を合流して熊谷地先、荒川大橋に至る。ここで向きを大きく南東に変え、通殿川、和田吉野川、市野川などを合わせながら大宮台地の西北縁に沿って南流し、古谷本郷で入間川を合流する。その先は、ゆるやかに東南東に向きを変えながら鴨川、笹目川、菖蒲川などを合わせて岩淵水門に至る。ここで隅田川を分派した後、すぐに芝川を合流し、流れを大きく南へ転じながら、左岸の東京都葛飾区辺りから荒川に並行して流れる綾瀬川、中川とともに東京湾に注ぐ。流路延長173q、流域面積2,940km2である。

 なお、隅田川は分派してまもなく新河岸川を合流し、さらに東京都内を流れる石神井川と神田川を合流し、東京湾に注いでいる。荒川の水源から河口までの平均河川勾配は1/68、山地部分では急で1/30、反対に平地部分では1/1,400となっている。荒川の一つの特徴をあげるとすれば、中流域の川幅が2.5qで、日本一である。河口付近の川幅は0.75qに過ぎない。この広い河川敷は江戸時代すでに河口一帯に広がった都市を氾濫から守るための遊水機能をはたしてきた。

◆ 2. 荒川の水害

 荒川の流域は、全体的に標高が低く、斜面が東向き、北東向きが多く、南東向きの多い多摩川に比べて大雨の降りにくい地形となっている。荒川における洪水の原因となる雨は、ほとんど台風性の降雨による。

 特に、大水害をもたらした、明治43年8月の暴風雨、昭和22年9月のカスリン台風、昭和33年9月の狩野川台風、昭和49年9月の台風16号、昭和57年9月の台風18号の被害をみてみたい。

(1) 明治43年の暴風雨
 8月1日以来晴雨が定まらず、連日の降雨は8日にいたり激しくなり、10日には暴風雨となり、荒川流域は未曽有の大洪水となった。荒川流域内の堤防決壊178ヵ所、延長4,892間、欠損136ヵ所、延長4,029間、道路毀損43ヵ所、延長932間。埼玉県では、利根川筋の被害と合わせ、死者324名、家屋被害として流失全壊1,679戸、毀損16,468戸、浸水84,538戸、被害田畑5,000町余、また、東京市の被害は死傷者29名、行方不明3名、建物流失58棟、床上浸水89,495棟、床下浸水32,271棟などに達した。この水害を受けて、荒川放水路の事業が進んだ。

(2) 昭和22年のカスリン台風
 9月15日12時台風は御前崎南方100qの沖を通過し、20時頃房総半島の館山を通過して16日3時には銚子東に去った。9月8日ごろから本州付近に停滞していた前線の影響により降っており、台風が近づくにつれさらに激しくなった。このため総雨量は三峰で568.8o、名栗で570.7o、川越で276.7oに達した。最高水位は寄居で15日17時9.20m、最高流量は寄居で5,316m3/sを記録した。この出水のため、荒川左岸熊谷市久下区新田地先の破堤は、浸水被害を甚大にして利根川、荒川右岸の北埼玉郡東村新川通地先の破堤と合わせて埼玉県下のみにとどまらず埼玉県界大場川旧桜堤を打ち破り、たちまち東京都葛飾区、江戸川区に侵入した。床上浸水124,896棟、床下浸水79,814棟に及んだ。

(3) 昭和33年9月の狩野川台風
 24日頃から降り始め、26日9時より強く降ったが、台風が東京に近づいた夜半すぎ峠を越した。総雨量は三峰で292o、名栗で305o、川越で305o、岩淵で424.6oと下流部で多かったのが特徴である。岩淵で最大流量4,405m3/sとなり、上流部で支川が4ヵ所破堤し、10ヵ所で越水し、床上浸水135,189棟、床下浸水69,982棟の被害に及んだ。

(4) 昭和49年9月の台風16号
 台風16号と17号の二つとも日本海にあり、関東地方には前線が停滞していたため台風16号のレインバンドが関東地方にかかっており、山岳部に大雨を降らせた。8月31日10時頃より降り始め9月1日1時頃まで続いた。降り始めよりの総雨量は三峰で378o、名栗で329o、川越で139o、岩淵で84oであった。最高水位は岩淵で5.35m、最大流量3,676m3/sを記録した。荒川では、護岸や堤防法面の破損等が43ヵ所生じ、床上浸水168棟、床下浸水3,162棟の被害を被った。

(5) 昭和57年9月台風18号
 台風18号は、12日18時頃御前崎付近に上陸し、山梨県東部、熊谷付近をとおり本州を縦断して津軽海峡に抜けた。雨は台風の北上とともに10日午前から降り始め、12日の夜半にはほとんど止んだ。この雨は短時間に集中して降ったのが特徴といえる。総雨量は三峰で336o、名栗で348o、川越で338oであった。この降雨のため、最高水位は岩淵で5.65m、最大流量5,268m3/sを観測した。荒川本川に比べて入間川筋の流量が多い洪水であった。被害は、23ヵ所、延長4,100m、床上浸水6,931棟、床下浸水12,363棟であった。川口市の三領水門に漏水事故が起こり、緊急復旧工事を行った。

◆ 3. 滝沢ダム建設の必要性

 荒川における秩父地域には、昭和36年に二瀬ダム、平成11年に浦山ダム、平成15年に合角ダムが完成している。滝沢ダムの建設について、独立行政法人水資源機構荒川ダム総合管理所編・発行『滝沢ダム工事誌』(平成24年)から追ってみたい。

 滝沢ダムの必要性については、次のように述べられている。

 明治以降の治水事業は、明治44年に荒川下流改修計画が、大正7年に荒川上流改修計画が策定され、その計画によって施工された。その後、昭和40年に寄居地点の計画高水のピーク流量を5,570m3/sとする荒川水系工事実施基本計画が策定された。昭和48年には、基準点を寄居から岩淵に変更し、基本高水のピーク量を14,800m3/sとし、上流山間部に洪水調節用のダム群を建設すると共に中流河道の一部を調整池化することによって7,800m3/sを調整し、岩淵地点における計画高水流量を7,000m3/sとする基本計画の改訂がおこなわれた。
 荒川に水源を依存している農業用水は、不安定な自然流況によって、しばしば渇水被害を受けていた。二瀬ダム及び玉淀ダムにより用水補給が図られたが、計画を上回る渇水に見舞われた。また、荒川沿岸は首都圏域として人口増と工場進出に伴う都市用水の需要の増大及び下流域の地盤沈下を抑制するための地下水のくみ上げの規制もあって、荒川水系の水資源開発が要請された。滝沢ダムは、これらの水需要に対処する利水、併せて水害の減災を図る治水としての役割を持つダムして計画されたものである。


『滝沢ダム工事誌』
◆ 4. 滝沢ダムの諸元

 滝沢ダム(奥秩父もみじ湖)は、平成24年3月に完成した。ダムは、荒川水系中津川の埼玉県秩父市大滝字廿六木に位置する。その諸元は次のとおりである。

 型式重力式コンクリートダム堤高132.0m、堤頂長424.0m、堤体積167万m3、総貯水容量6,300万m3、有効貯水容量5,800万m3、集水面積108.6km2、湛水面積1.45km2、設計洪水位EL.566.6m、サーチャージ水位EL.565.0m、常時満水位EL.565.5m、洪水期制限水位EL.537.0m、最低水位EL.469.0m、計画最大放流量300m3/s、都市用水最大放流量4.6m3/sとなっている。貯砂ダムも築造されており、その諸元は型式:台形CSGダム、高さ13.7m、堤頂長32.0m、堤体積4,130m3、貯砂容量155,000m3である。

 起業者は水資源機構、施工者は鹿島建設・熊谷組・錢高組である。事業費は2,306.4億円を要した。
 主な用地補償は、家屋移転112戸、土地取得面積274ha、公共補償として付替道路(国道約5.0q、県道約3.3q、村道約5.4q)、消防施設、特殊補償として漁業補償1件、鉱業補償3件、減電補償1件であった。

◆ 5. 滝沢ダムの目的

(1) 洪水調節
 ダム地点の計画高水流量1,850m3/sのうち、1,550m3/sの洪水調節を行い、荒川下流地域の高水流量を低減する。洪水調節方式は、出水規模にも対応できるよう一定率一定量方式を採用し、流入量が100m3/sまでは、放流量=流入量の自然放流を、100m3/sを越えて最大になるまでは、放流量={(流入量−100)×0.114+100}の一定率放流を、最大流入量1,850m3/sに達したあとは、300m3/sの一定量放流を行う。洪水調節は、洪水期間(7月1日〜9月30日)において、標高565.0m〜標高537.0mの容量3,300万m3を利用して行う。


(2) 流水の正常な機能の維持
 荒川沿岸の既得用水の補給等、流水の正常な機能の維持と増進を図るものである。
@ 寄居地点における必要流量は、かんがい期、非かんがい期それぞれについての必要流量の最大値が「動植物の生息地または生育地の情況及び漁業」でかんがい期22.21m3/s、非かんがい期8.83m3/sであり、このことから正常流量を寄居地点において、かんがい期はおおむね23.0m3/s、非かんがい期はおおむね9.0m3/sとされた。
A 秋ヶ瀬取水堰下流地点における必要流量は、「動植物の生息地または生育地の情況及び漁業」について通年5.9m3/sであり、このことから、正常流量を秋ヶ瀬取水堰下流地点において、年間を通しておおむね5.0m3/sとされた。
B ダム直下流の流水の正常な機能を維持するために必要な流量についても、漁業、景観、動植物の保護、流水の清潔の保持の観点から0.49m3/sとされた。
 これらの維持流量を確保するために必要な容量は、滝沢ダムにおいて、900万m3(洪水期は450万m3)である。

(3) 水道用水の供給
 荒川水系では、利根川及び荒川水系における水資源開発基本計画フルプラン)において、合計13.9m3/sの新規利水開発のための施設が建設された。滝沢ダムはこれらの水資源開発施設のひとつとして、埼玉県の水道用水として、最大3.74m3/s、東京都の水道用水として、最大0.86m3/s、合計最大4.60m3/sを開発し、約130万人分の水道用水供給を可能とするものである。このための貯水容量として、洪水期に2,050万m3、非洪水期に4,900万m3を確保している。


(4) 発電
 滝沢ダム建設に伴い、東京発電(株)において滝沢ダム発電所を築造し、最大出力3,400kWを行う。発電は流水の正常な機能の維持及び水道の放流水を利用して行う。その諸元は使用水量最大4.25m3/s、有効落差106.9mである。

◆ 6. 滝沢ダムの建設経過

 昭和40年4月建設省関東地方建設局荒川上流工事事務所により、予備調査を開始して以来、昭和51年途中事業を継承した水資源開発公団(現・水資源機構)によって、40数年の紆余曲折を経て、平成24年3月に完成した。その完成までの滝沢ダム建設の経過を追ってみる。

昭和40年4月 建設省関東地建荒川上流事務所にて予備調査を開始
  44年4月 関東地建滝沢ダム調査事務所を開設、実施計画調査を開始
  47年5月 関東地建滝沢・浦山ダム工事事務所を開設
  51年9月 滝沢ダム建設事業に関する施行実施計画の認可
    10月 事業を建設省から水資源開発公団に承継
  52年3月 水源地域対策特別措置法に基づくダム指定
  53年12月 埼玉県と一般県道中津川三峰口停車場線の付替工事に関する基本協定締結
  58年4月 水資源開発公団滝沢・浦山ダム建設所を各々分離独立し、滝沢ダム建設所開設
  63年3月 滝沢ダム建設補償対策委員会(地元5協議会)に損失補償基準提示
    12月 滝沢ダム建設補償対策委員会(地元5協議会)と損失補償基準妥結
平成元年2月 水源地域対策特別措置法に基づく水源地域の指定
    3月 水源地域対策特別措置法に基づく水源地域整備計画決定
  4年3月 秩父漁業協同組合と漁業補償契約締結
    11月 地元協議会「滝沢ダム建設同盟会」と損失補償基準妥結
  5年3月 埼玉県と一般国道140号線大滝道路付替道路等工事に関する基本協定書締結
  6年2月 大滝村と付替村道等協定の締結
  8年12月 水没等移転世帯112戸の建物移転完了
  9年3月 大滝村と公共補償の締結
    12月 ダム本体工事用仮排水路工事に着手
  10年10月 一般国道140号線「大滝道路」の付替区間5q全線開通
  11年3月 滝沢ダム本体建設一期工事に着手
  12年6月 中津川転流CSG水路に通水
  13年7月 本体河床部にコンクリート初打設
    10月 本体RCDコンクリート初打設
  14年5月 定礎式
  15年2月 地域に開かれたダムに指定
    10月 独立行政法人水資源機構発足し、独立行政法人水資源機構荒川ダム総合事業所発足
  16年3月 付替県道中津川三峰口停車場線開通
    8月 ダム本体コンクリート打設完了
  17年4月 秩父市、吉田町、荒川村、大滝村合併、秩父市誕生
    10月 試験湛水開始
  21年7月 試験湛水完了
  23年3月 滝沢ダム建設事業完了
    6月 滝沢ダム建設事業完了報告会開催

◆ 7. 滝沢ダムの特徴

 滝沢ダムの建設に関して、その特徴をいくつか挙げてみる。

@ 基礎処理における動的注入工法の採用
 動的注入工法は、注入孔に動的な圧力を付加することにより、亀裂内に生じる目詰まりを抑制することで、従来よりも高濃度、高粘性のグラウトミルクをより微細な亀裂にも注入することを目的とした工法である。

A 基礎処理における逐次配合切替工法の採用
 逐次配合切替工法は、注入時の圧力や流量のデータを、リアルタイムに濃度に反映させることが可能であり、1孔毎に違う注入特性にも対応できる画期的なシステムである。

B SP-TOMの採用
 新しいコンクリート等運搬工法SP-TOMは、内側に硬質ゴムの羽根を螺旋状に取りつけた円管(輸送管)を斜面上に設置し回転させることによりコンクリートや土石等を連続して大量に下方に運搬する工法である。滝沢ダム減勢工のコンクリート打設(約28,000m3)と減勢工背面埋戻しCSGの施工(約28,000m3)に採用したが、実際の施工に用いられたのはこれが初めてである。この工法に関しては特許を取得している。

C 斜面対策工
 滝沢ダム貯水池周辺は、四万十帯大滝層群及び秩父帯中津川群に属しているために、様々な斜面に対する地すべりに係る対策工として、鋼管杭工、アンカー工がなされている。

D 環境保全対策
 滝沢ダムは秩父多摩甲斐国立公園内での工事のため、環境保全に配慮されている。
 それは、郷土種を用いての緑化を行い、多自然型渓流環境復元、昆虫類の食餌植物対策、魚類生息環境保全、クマタカ等の希少猛禽類の保全、工事用照明にナトリウム灯の採用による昆虫類の保全、貯砂ダム魚道設置等である。

E 地域に開かれたダム
 地域に開かれたダムとは、ダム地域における創意工夫を活かすと共に、ダムを地元に一層解放し、ダムが地元により密着した施設になるように、ダムの利活用を推進し、もって地域の活性化になるように資する。そのために、ダムの内部をエレベータで自由に見学、滝ノ沢地区には散策路の整備、ダム下流のループ橋、雷電廿六木橋のデザインに工夫して造られている。

◆ 8. 技術研究の論文と表彰

 そして、滝沢ダムの技術研究については、学会誌などに、おおくの論文が掲載されている。それはダム造りへの困難な技術に関する克服された証であると言える。その論文の項目をいくつか挙げてみたい。

(1) 滝沢ダム全面レヤー工法検討
(2) 滝沢ダムにおける掘削ずりを用いたCSG工法
(3) 新しいコンクリート運搬工法SP-TOMを滝沢ダムへ適用するための検討
(4) 大口径岩盤掘削機による立坑掘削−滝沢ダム原石投入立坑の施工
(5) 滝沢ダムの基礎処理工における新技術−逐次配合切替工法
(6) ダムサイト岩盤斜面の掘削に伴う変位挙動の長期観測事例
(7) 貯水池水面下におけるIT地盤傾斜計測システムを用いた斜面動態観測の試み
(8) 重力式コンクリートダムの座取りに関する検討
(9) 滝沢ダム貯水池周辺地すべりの調査と対策工の検討
(10) ダム下流河道の河床低下と粒度構成から見た土砂供給の必要性とその効果
(11) ループ橋の景観設計について

 なお、滝沢ダム建設事業に係る技術研究は、各種団体から次のように表彰を受けている。滝沢ダム建設事業に対し、平成21年度にダム工学会技術賞を受賞。構造物に対する受賞として、平成10年度に廿六木大橋・大滝大橋で土木学会田中賞作品部門作品賞とプレストレストコンクリート技術協会作品賞、同じく平成11年度に日本コンクリート工学協会作品賞を受賞。雷電廿六木橋で平成11年度公益財団法人日本デザイン振興会グッドデザイン賞と平成22年度土木学会デザイン賞最優秀賞を受賞している。

 また、ダム工学会技術開発賞として、平成12年度に「コンクリート・土石類運搬装置(SP-TOM)」、平成14年度に「コンクリート打設自動運転システム」において、それぞれ受賞している。

◆ 9. おわりに

 ダム建設には、絶対欠かせないことの一つに、水没者・地権者の理解と協力があり、それを支える県市町村行政側の協調である。秩父地域における水没移転者は、二瀬ダム30世帯、浦山ダム50世帯、合角ダム75世帯、そして滝沢ダム112世帯であった。生家を離れる心情を、〈文化文政の頃より 生まれ育った我が故郷 後に残して 出ていく 我が心かなしき〉(山中高雄)の歌碑が、滝沢ダムサイト右岸側に建っている。

 浦山ダム、合角ダム、滝沢ダムの地元との交渉については、昭和51年12月埼玉県ダム建設対策本部、昭和56年3月秩父地域ダム建設促進現地本部が設置され、ダム建設に係る補償の調整、水没関係者の生活再建、水源地の振興対策などに対処された。このことについては、埼玉県荒川水系ダム総合事務所編・発行『秩父三ダム建設小史』(平成8年)の書がある。

 滝沢ダムの移転者の写真集が発行されている。新井靖雄写真『奥秩父−ダムで移転した人びと』(埼玉新聞社・平成19年)には、真の沢、雪の中津渓谷、滝ノ沢のあぜ道の自然を写し、浜平の客待ちバス・子供たちの水泳、玉切、滝ノ沢の炭焼き・逆さぼり・味噌造り、塩沢の餅つき・小正月・大きなふき、廿六木の診療帰り道、ラジオ体操、屋根の上の遊び場などの日常風景を描く。また、ダム工事の進捗状況、ダム現場で働く人の笑顔をも映し出す。滝沢ダムは、沢山の人々の支えによって完成した。


『秩父三ダム建設小史』

『奥秩父−ダムで移転した人びと』
 おわりに、荒川に関する書をいくつか挙げる。
○埼玉県編・発行『荒川 (荒川総合調査報告書1巻〜4巻・別巻写真集)』(昭和62年)
○荒川上流事務所編・発行『荒川上流改修六十年史』(昭和54年)
○荒川下流誌編纂委員会編『荒川下流誌/本編/資料編』(リバーフロント整備センター・平成17年)
○荒川を撮る会編・発行『荒川 2000−2009』(平成21年)
○小泉定弘著・発行『荒川写真集』(平成5年)
○東京新聞荒川取材班・井出孫六著『荒川新発見』(東京新聞出版局・平成14年)
○秩父青年会議所編・発行『荒川ものがたりT〜V』(平成5年〜10年)
○朝日新聞浦和支局編『荒川 その土と心』(朝日ソノラマ・昭和52年)
○毎日新聞浦和支局編『荒川 169キロのみちのり』(さきたま出版会・平成8年)
○絹田幸恵著『荒川放水路物語』(新草出版・平成4年)
○埼玉県教育委員会編・発行『荒川の水運』(昭和62年)
○荒川クリーンエイド・フォーラム編・発行『荒川遊学ガイド』(平成17年)
○水問題総合研究所編『荒川を遊ぶ』(幹書房・平成4年)
○井出隆雄著『荒川ワンダーランド』((株)イーノ・平成13年)
○シグロ編著『あらかわ』(北斗出版・平成5年)

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(2015年10月作成)
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  [テ] ダムの書誌あれこれ(40)〜青森県のダム〔中〕(浅瀬石川、浪岡、小泊、下湯)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(41)〜青森県のダム〔下〕(浅虫、川内、天間、世増)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(42)〜山形県のダム〔上〕(白川、長井、前川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(43)〜山形県のダム〔中〕(蔵王、寒河江、白水川、新鶴子、神室、田沢川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(44)〜山形県のダム〔下〕(月光川、荒沢、月山、温海川、横川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(45)〜千葉県のダム〔上〕(山倉、高滝、亀山)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(46)〜千葉県のダム〔中〕(片倉、郡、矢那川、保台、山内)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(47)〜千葉県のダム〔下〕(印旛沼開発、利根川河口堰、東金、長柄)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(48)〜ダムの事典、ダムの紀行〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(49)〜ダムの切手、ダムの話、緑のダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(50)〜ダムの景観〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(51)〜ダム湖の生態〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(52)〜ダムの堆砂〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(53)〜茨城県のダム(飯田・花貫・小山・緒川)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(54)〜矢作川のダム(矢作・雨山・木瀬)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(55)〜埼玉県荒川のダム (上)(二瀬・有間)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(56)〜埼玉県荒川のダム (下)(浦山・合角・滝沢)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(57)〜長崎県のダム (上)(本河内高部/低部・土師野尾・萱瀬再開発)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(58)〜長崎県のダム (下)(相当・川谷・下の原再開発)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(59)〜熊本県のダム (上)(竜門ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(60)〜熊本県のダム (下)(石打・上津浦・緑川・市房)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(61)〜鬼怒川のダム (上)(五十里・川俣)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(62)〜鬼怒川のダム (下)(川治・鬼怒川上流ダム群連携・三河沢)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(63)〜揖斐川のダム (上)(川浦・川浦鞍部・上大須)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(64)〜揖斐川のダム (下)(横山・徳山)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(65)〜長野県・味噌川ダム 〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(66)〜飛騨川のダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(67)〜木曽川水系阿木川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(68)〜桃山発電所、読書第1発電所、賤母発電所、落合ダム、大井ダム、読書ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(69)〜木曽川水系丸山ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(70)〜牧尾ダムと愛知用水 (上)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(71)〜牧尾ダムと愛知用水 (中)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(72)〜牧尾ダムと愛知用水 (下)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(73)〜呑吐ダム・加古川大堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(74)〜一庫ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(75)〜利根川水系神流川・下久保ダム、塩沢ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(76)〜阿武隈川水系白石川・七ヶ宿ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(77)〜利根川水系渡良瀬川・草木ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(78)〜利根川最上流・矢木沢ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(79)〜利根川水系楢俣川・奈良俣ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(80)〜神流川発電所(南相木ダム・上野ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(81)〜雄物川水系玉川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(82)〜北上川水系江合川鳴子ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(83)〜北上川水系雫石川・御所ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(84)〜北上川四十四田ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(85)〜米代川水系森吉山ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(86)〜阿賀野川水系大川ダム・大内ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(87)〜東京都のダム(村山上貯水池・村山下貯水池・山口貯水池)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(88)〜東京都のダム(小河内ダム)〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(89)〜筑後川水系・藤波ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(90)〜江の川土師ダム、太田川高瀬堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(91)〜遠賀川福智山ダム・遠賀川河口堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(92)〜江の川水系馬洗川支川上下川 灰塚ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(93)〜九頭竜川 九頭竜ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(94)〜九頭竜川水系真名川 笹生川ダム・雲川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(95)〜九頭竜川水系真名川・真名川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(96)〜ダムマニアの撮った写真集〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(97)〜吉井川水系苫田ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(98)〜旭川水系旭川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(99)〜利根川水系薗原ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(100)〜淀川水系琵琶湖支川野洲川ダム・青土ダム・姉川ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(101)〜川内川・鶴田ダムとその再開発事業〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(102)〜筑後川・筑後大堰〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(103)〜阿武隈川水系大滝根川・三春ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(104)〜豊川水系宇連川宇連ダム・大島川大島ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(105)〜安里川水系安里川 金城ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(107)〜鹿児島県の川辺ダム、大和ダム、西之谷ダム〜
  [テ] ダムの書誌あれこれ(108)〜肝属川水系串良川支川高隈川 高隈ダム〜
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 (古賀 邦雄)
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