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ダムインタビュー(29)
萃香さんに聞く
「ダムの魅力を引き出せるような写真を撮って公開していきたい」

 萃香さんは、これまで「ダム便覧」に、たくさんの写真作品をお寄せいただいており、撮ったダム写真はご自身のホームページでも多数公開されています。頻繁にダムを訪れるアクティブなダム好きさんのお一人です。そして、この程、ダム協会が始めた「ダムマイスター」制度の第一号として、めでたく任命書をお受け取りになられました。

 そこで、ダムマイスター第一号となった萃香さんにおいで頂きました。どういうきっかけからダムの写真を撮り始めたのか、ダムのどういうところに魅力を感じているのか、ダムマイスターとして今後どのような活動をお考えなのかなど、様々にお話を伺いました。
 なお、掲載したダムの写真はすべて萃香さんが撮影したものです。

(インタビュー・編集・文:中野、写真:廣池)



ダムの写真を撮り始めたのは

中野: ダムマイスター第一号の任命式においでいただいた機会にインタビューをお願いしました。
 まずはどのようなきっかけからダムの写真を撮り始めたのかから伺います。どなたかお手本になるような方がおられたのしょうか?

萃香: まず基本的に、ダムの写真を撮り出したというより、もともと風景写真を撮っていたのです。だから、とくにきっかけというのがあったのではなく、写真を撮り歩くのが趣味でいろいろな場所を観光しているうちに、ダムも一つの被写体となっていったわけです。元来、ドライブ好きなのものですから、日本の都道府県は沖縄県と離島を除いて、ほとんど自分で車を運転してあちらこちらを回っておりました。その観光ついでのダム巡りという感じだったのですが、ダムというのは、観光地ばかりにある訳じゃありません。街道から外れて、山奥にぽつんとあったりします。そういう人里離れた所に行って撮るようになってから、本格的にダムの写真を撮るようになったということで、どんどんのめりこんで行ったんです。
 また、ダムで写真を撮っていると、他のダムマニアの方がいたりするんですよ。そういう方との出会いも楽しみの一つです。

 最近は、ダム巡りをしている人たちが多いので、ほとんどのダムは誰かが行っておられます。それとダムの写真も最近はネット等で多く掲載されていますが、どうしても同じような構図の写真が多くて、また、形式写真的なものも多かったように思います。ダムの形を知る上では、それでよいのですが、自分なりにはもっと違った視点から撮れないかと思ったりしていました。
 それで、2007年くらいからだと思いますが、ダムそのものを主体として撮るようになりました。ダムの写真を撮るときに、別に誰をお手本とするようなことはなかったのですが、ダム便覧の写真などは良く見ています。


ダムフォトグラファー

中野: ご自身のホームページではダムフォトグラファーと名乗っておられますがダムの写真を撮るようになってからそのような名前をつけられたのですか?
 また、ハンドルネームが「萃香」となっているのはダムと係わりがあるのでしょうか?

萃香: ダムフォトグラファーとした理由は、ダム好きさんの中にも、いろんなジャンルがあると思います。歴史を追う人、構造を追う人、ゲートだけを見る人とか。そういういろんなタイプがある中で私は写真を撮るのだと思ったからです。
 「萃香」というハンドルネームについてですが、ダムに限らず鉄道の写真も撮っていましたので、ハンドルネームを決める時に、たまたま「スイカ」を検索していたら「萃香」が出てきて、それで決めました。

どのダムを撮るか

中野: 週末はいつもダムにいます、とホームページにコメントされていますが、休みを利用して、あちこちのダム巡りをされるというのではなく、じっくりと一つのダムを写真に撮るというパターンが多いのですか?

萃香: 最近はダム巡りになってきています。ダムマイスターに任命をいただいておいて言うのもなんですが、自分ではダムの内容についてどれくらい詳しいかと言えば、まぁ素人よりは多少詳しい程度だと思いますが、写真でしたら今までたくさん撮ってきたというのがありますので、ある程度は詳しいと言えますね。

中野: 初めて写真に納めたのは、どこのダムですか?また、そこを選んだ理由は何ですか?


浦山ダム

萃香: 埼玉県の浦山ダムです。ここは監査廊とかエレベーターとかいろいろなところが開放されていて撮りやすいんです。下流直下にもいけますし。そういうところが良かったので、練習的な意味合いもあっていろんなアングルで撮ってみて、どの角度がいちばん見栄えがいいかな、というのを調べようと思いました。

中野: 被写体に選ぶダムは、いつもどういうふうに選ばれているのですか?

萃香: まずは日帰り圏内にある場所です。そしてなるべく立入制限のないところから選びます。重力式だとかアーチだとかいったような、構造にはこだわらないのですが、ダムとして見栄えがするというか、ちょっと変わって見える、あるいは個性があるというか、そういうものから選びます。
中野: 実際にダムを見に行くときは、どういう行動パターンが多いのですか?
 お休みの日の前日の夜から車で遠出していくとか?

萃香: 基本は日帰りです。当日朝早くから出かけて夜0時までには帰るというスタンスです。もちろん遠距離ともなれば1泊とかで予定も組みますが、なかなか前日の夜からというのはありませんね。1時間でも良いですから必ず家で寝てから出発します。
 岩手でも日帰りしたりします。私の場合は、車中泊というのはしません。必ずホテルに泊まります。
行動範囲が広がったのは、高速道路が千円になったことが大きいですね。車は便利ですし、ダムは車でないといけないところが多い。電車に乗るというのは年に3回もないかもしれません。(笑)

中野: お好きなダムはどこになりますか?

萃香: 基本的に、どこのダムということはないです。ダムは千差万別で、なにがどう好きとかと聞かれると、なかなか答えるのが難しいですね。撮りやすいダムが良いですね。逆に言うと撮りにくいダム、立ち入り禁止になっているとか、山奥で道がないとかですが、無理に撮ろうとは思いません。

中野: 今まででご自分でベストショットと思われるのは、どこのダムですか。

萃香: 自分で撮ったものは、基本的にみんな好きなんですね。(笑)だから、これが一番だという、どこのダムかと具体的に名前を出すのは難しいです。最近に撮ったのは、二瀬ダムです。あそこは、重力式アーチで洪水吐きの構造、形が珍しいのが良いです。つまり、写真栄えがするんです。そういうダムが好きです。ダム写真を撮るうえで、最近のつるっとした感じのダムというのは、へたをするとよほど特徴をとらえて撮らないと、どこのダムか分からなくなるので、それが難しいです。


二瀬ダム
ダムの魅力

中野: ダムを見ていて、どういう所が良いなぁというふうに感じますか?
 萃香さんが魅力に思うところは、ダムのどういうところでしょうか。

萃香: まず、非日常性を堪能できるってことです。それこそダムのそばに住んでいる方でない限りあまり日常的に接するものではありませんからね。こちらからアプローチしない限り見ることもないし、行くまでの道のりも結構厳しい所だったりします。苦労して行ってやっと見られる。それがいいところだったりするんです。山道を行き、崖を降りたりして行きながら、写真を撮ったりするんです。
 毎週のようにダムを見に行っていると、もはや日常なんですけどね。ただ、ダムには同じものは二つと無いですから。

もう一つの魅力はなんといっても放流です。そうそういつも放流していませんから、毎年行なうゲート訓練や放流試験などはとても魅力的です。
 ダムを見ると、まず、なんでここにダムを造ったのかなと考えますし、造る前のこと、このダムは何のためにできたのか、発電なのか、洪水防止のためなのかを考えます。ここじゃなくてはならなかった理由を考えたりしますね。

玉川ダム

黒又川第1ダム

黒又ダム
中野: なるほど、そこに行くとダムががんばって、ひっそりと佇んでいるのを見ると、魅力的ということなのですね。ただ単に写真を撮るだけということではないのですね。

萃香: 写真を撮っていると、逆にそういったことが気になりますね。なんでこの形にしたんだろうとか、どうしてこの向きなんだろうとか、このゲートはどうして選んだのだろうとか気になったりしますね。

ダム写真の撮り方



中野: ダム写真を撮る上で、何かコツのようなものはありますか?構図とかライティングととか何かこだわりというのはありますか?

萃香: とりあえずは、撮れる場所からはまず撮るということですね。右岸左岸、上流側、下流側、ダム湖を周回したり、展望台に行ったり、行ける所は行って撮ります。
 そして、よほど遠くのダムでない限り、初めて行く場合はまずロケハンからになります。撮り方としては、全体が開けているところであれば、ダムだけでなく周りの風景と絡めて撮る、またあまり視界が良くないところでは逆にダムの一部分をアップで撮る、というのが基本パターンですね。

中野: 気に入ったら何度も足を運ばれるのですか?
萃香: 私の場合、ダムに行くのは基本的に一度きりということはありません。必ず最初はロケハンで行きます。まず行って場所を見て、それから季節を変えたり、時間を変えたりして再び行ってみる。それで写真を撮ってみて、どの季節のどの角度から撮ったのがいちばん良かったか、見栄えがするかを検討して決めたうえで、最後にそのイメージを狙って撮りに行きます。

中野: ダムがきれいにみえるよう、季節を選び、時間を選び、ということでしょうか。美しく見えるには、何かポイントがありますか?

萃香: オールシーズン美しいと思いますが、基本的に風景と絡めて撮っていくのが綺麗に魅せていくのには一番簡単だと思います。
 季節などは、周りの環境によって違って見えてきます。ただ、冬のダムといっても、雪景色などは寒冷地でないと無理なわけで。また、針葉樹があるところでは紅葉は期待できないので、それなりの撮り方をしていかなければならないのですが、とくにこの季節でないとダメということはない。オールシーズン、それぞれに美しいと思います。
 それと、時間帯によっても、また堤体の向きによっても、ダムの見え方は変わります。東向きなら午前中が良いとかね。ダムはひとつとして同じものがありませんのですべてに共通するような一般的なビューポイントなどというものはありません。やはり何度か足を運んで、そのダムらしさを探してみることだと思います。


愛用のカメラ
 私の場合、近場でしたら好きなダムは季節を問わず何回も行きます。ダムの貯水率の状況によってその時々で状況が違っているので、そういうのも見にいきますね。単に光線の状態が良いとか、悪いとかいうのではなく、夜でも昼でも撮れますしね。最近はライトアップしたダムの写真も撮りますね。


藤原ダム
写真はプロ並み?

中野: この写真なんかも大変綺麗にライトアップされていて、本当にこれがダムなの?と思ってしまうほどですね。こうした綺麗なダムの写真を見ると、ほんとうに行ってみたいなと思います。

萃香: ダムの業界の人は、写真でも、ちゃんと型式や構造がわかっていないとダメなので、カチッとした写真を撮っているのが多いわけです。絵はがきとか観光ガイド的な撮り方をしているものが少ない。

中野: 以前インタビューさせていただいた「さんちゃん」はダムの写真を企業のパンフレットとか、HPで紹介させて下さいとかの依頼があるようですが、そのようなことはありますか?

萃香: 私は、HP上では連絡先も公表していないので、そういう依頼はないですよね。

中野: もし、そういった依頼がきたらいかがですか?

萃香: もちろん全然かまわないし、また私に撮ってきてほしいということであれば、喜んで撮ってきてあげますよ。

中野: そうなると萃香さんにとって、ダム写真は単なる趣味にとどまらないですね。


萃香: いえいえ、そこまでは言いませんが。基本的にはブログのタイトル(Dam Photographer)と同じですよ。アマチュアであっても、一応、ダム写真家ということで。それもダムの堤体に絞ってということで、今は考えています。そもそも私が、写真を趣味と意識し始めたのは学生時代からですし、いろいろなカメラを触ってきました。銀塩写真からデジカメの時代になるまで、とにかくカメラは何台持ったか数え切れないくらいですね。デジカメだけでもその黎明期から40台くらいは使ってきています。ダムより以前にカメラマニアなのかも知れませんね。(笑)

ダムを深く知りたくなる

中野: 写真を撮っているうちに、だんだんダムの知識が豊富になってくると思いますが、さらに深く知りたいと思うようになりましたか。

萃香: ダムのことを知っていくといろんなことが解って楽しいですが、知れば知るほどナゼこの形式なのか、どうしてゲートはこのタイプなのか、ナゼこのバルブなのか…そして、どうしてここにダムが必要だったのかと、いろいろな疑問も出てきますが、一つひとつそれを調べていくのも楽しみです。

最近、とにかくいろいろ考えるようになりました。ブログに「ダムのエレベーター」について書きました。ダムについていろんなことに気づいてくると、そこからまた広がっていきますね。
 ダムのデザインについても、よく自然との調和といいますが、そもそもそこにダムがあること自体はある意味で不自然な訳ですから、できるだけ自然に見えるように、自然と調和するようにしていくことが基本だと思いますね。
 例えば、ダムはコンクリートでできているから白いのですが、自然との調和を考えるのであれば、色を塗ってみるとか、模様を描くということも良いかもしれませんね。観光地にあるダムがひときわ目立ってしまうのはよくないですね。(笑)


他の方のHPを参考にすることはあまりない

中野: ダム好きさんはホームページを持っておられる方が多いですね。他のダム好きさんのホームページについては、どうお感じになりますか?どなたのホームページがお気に入りですか?

萃香: だいたい見ていますが、特にデータ等が詳細に書かれているものはとても参考になります。多くのホームページは内容がダム百科とかダム事典的なものが多くどうしても似てきてしまいます。参考になりますが、自分が写真を撮る上でのスタンスとしては他の方のHPを参考にすることはあまりないですね。
 いまでは、HPよりTwitter(ツィッター)のやりとりが多くて、放流に関しても、「○○ダムが越流しています」「放流中です」とか「見に行ってきました」と動画もアップされてしまうと、やっぱり見に行きたくなってしまいます。(笑)

中野: 今は情報が早いですからね。ダム工学会のイベントでtakaneさんがUstreamで講演を配信していただき、それに関してTwitter(ツィター)でのやりとりがあったとか、たくさんの方に見ていただきました。

萃香: 僕も拝見させていただきましたよ(笑)

なぜダムマイスターに応募したか


任命書を手にして

中野: ダムマイスターについて伺いますが、任命書を手にされてどういうふうにお感じになっていますか?

萃香: 最初は、気軽に申し込みんではみたのですが、選定基準というのに活動実績を重んじるというのがあったので、正直厳しいのかなと思っていました。
 それで、いざ任命書を手にしてみると、その重みというか、ホントに私にその資格があるのか、だんだん不安になってきていますよ。もらってみて、責任も重いなと感じているところです。

中野: 今回、萃香さんがダムマイスターに応募されたのは、どういう理由からですか?
萃香: まず単純にこれを持っていると何か良い事がありそうかな…と思ったこと。つまり自分の活動範囲を広げられるのではないかと思ったのが最初です。内容的にも協会さんの方でも支援していただけるというような内容になっていたので、これは普段撮りに行けないようなダムにも行きやすくなるというか、そういう気がしました。自分の撮影のために持っていた方がいいのかなというのが最初でした。

中野: つまり、管理所に行っていちいち説明しなくても、ダムを見させてもらえると。

萃香: そうですね。ダムマイスターが周知されてきて、証明書を見せれば、その人はダムマイスターだから自由に見学して下さいということになれば一番いいですよね。

 私は、ダムの管理事務所は無人でない限り、できるだけ訪ねています。最近はダムカードなども配っているところもありますが、資料やパンフレットも必要になってくるので、必ず訪ねて頂いています。だいたいダムの方はフレンドリーな方が多いので、話し込んでしまうことが多いです(笑)

中野: ダムマイスターの証明書の裏面にも「ダム管理所等の方々にお願い」と記載して、できる限りご協力いただけるようにお願いしています。

萃香: これから管理事務所などには情報を徹底して出しておいてもらわないと、こちらが、証明書を提示してもわからないようでは困りますからね。


任命書、証明書など
ダムマイスターとして今後は

中野: 萃香さんご自身はダムマイスターとして、どういう活動が可能で、どんな役割ができるだろうとお考えですか?どんなふうにできたらとよいとお考えですか?

萃香: そうですね、私の活動としては写真がメインですから、写真をなるべく多く撮って公開することで、ダムを知らない人たちにも見てもらって、こういう風景があるんだ、こういう角度から見るといいんだとか、そういうところから知って欲しい。ダムについての知識を、歴史だとか、構造やスペックなどからではなく、ダムをひとつの「風景」として、これいいなと思って見てもらえるようなものを提供できればと考えています。ダムの魅力を引き出せるような写真を撮って公開していければと思います。

中野: 確かに、一般の人にとってはダムは遠くにあって、よくわからないものなので、きれいな写真を見ることによって、いいなと思ってそこから興味をもって頂けるといいですね。

萃香: そこに行ってみたいなというような、惹きつけられる写真を撮るように心がけています。

中野: ダムの魅力を伝えるという観点で、公共の場所で写真展をしたいとお考えになったことはありますか。

萃香: 写真展、個展のようなものはしてみたいとは思いますが、ダムオンリーでは、なかなか難しいですね。工場とか、高速道路のジャンクションとかは近くにあって見ることができる被写体ですが、ダムは見ようと思ったら遠くまでいかないと見られない。そういった被写体に対して、一般の人がまず見たことない写真を見せることはできても、そこに行ってみたいと興味がもてるかどうかということです。

中野: 最近では、ダムを観光資源として考え、ダムのある町という魅力付けをしていこうという、動きもありますが、こうした地元の方の取り組みについて、ダムマイスターというお立場から、何かできるだろうとお考えになることはありますか?あるいは、何か地元の方の役に立ちたいというようなご希望はありますか?


萃香: ダムの管理が厳しいのは理解出来ますが、せめて天端くらいは開放して欲しいですね。厳しくするレベルが違っていると思います。例えば、この場所を開放すればもっと眺めがよくなって、ダムが観光資源になるとか、山登りが楽になるとか、できる範囲で考えほしいですね。観光目的に造っている訳ではないので仕方がないのですが、人の役に立つという意味でいえば、ある程度のところは開放してもいいのではないかと思いますね。

 ダムマイスターとして、私が出来ることといってもそれこそダムの専門家ではないので、例えば、地元の観光用のポスターやパンフレット用の写真を提供するとか、パンフレットそのものの製作とか、あとイベント等があった場合の案内役くらいでしょうか?

ダム造りに思う

中野: ダム建設についてですが、現在、ダム建設事業の検証が進められており、新規の着工が一時的に止まっています。また、だんだんと新しいダムを造ることが少なくなりつつあり、既存ダムの再開発が重要性を増しています。ダム建設の現状や将来像について、何か思うことがありますか?

萃香: ダムを造るのには、ずいぶんと時間がかかるといわれますが、造る前の交渉や調整に時間がかかるのが実際ですが、知らない人はダムの堤体を造るのに時間がかかってしまうと思っていますね。それは説明が足りないからではと思います。また、今は水害の被害が少なくなってきていますから、ダムの重要性があまり認識されなくなってきています。そういう情報の少なさも問題かも知れませんね。



ダムは必要以上に造ることはないと思いますが、必要なダムはまだあると思います。それと、古いダムについてのメンテナンスは必要ですね。造る技術の継承がなくなるというのも心配です。今あるダムも、いずれ補修では間に合わなくなって、解体、新規建設という、スクラップアンドビルドも考えられます。老朽化した設備を一度取り壊して、新しいダムを造るのもいいのかとも思いますね。古いダムを現在の技術で作り直せばより安全で効率の良いダムに生まれ変わることでしょう。また、日本のダム技術は世界一です。海外へ積極的に展開していくことも必要でしょう。

 ダムの議論が盛んですが、ダムについて、いいことばかりを話すのでは、いずれ拒否反応が出ると思います。マイナス面を含めて説明し、ここに造った理由などをきちんと説明していかなくてはいけない。何か伏せているところがあるとすれば、それは問題だと思います。
見学会が一番いい

中野: ダムマイスターの制度がスタートしたところですので、これをきっかけに人の輪が、これからどんどん広がっていくといいですね。何かアドバイスを。

萃香: とにかく各地のダムで見学会をどんどん開催していくのが一番かと思います。ダムに触れ、見る機会をたくさん増やしていくこと。そういう中で、なぜダムが必要なのかとか、どんな役割を果たしているのかということが伝わっていくのでは?まずは、実際にダムに来ていただかないと説明だけでは理解できないことも多いと思います。いろいろな催しを行なってダムに来ていただく。理屈による説明はそのあとです。それによって人の輪は自然に広がっていくと思います。

オススメというわけではありませんが、今後見られなくなってしまう可能性のあるダムはぜひ今のうちに見に行かれたほうがいいと思います。
 つい最近も長井ダムが竣工しましたが、それによって管野ダムが役目を終え水没しています。
同様な事例は、青森県の目屋ダムなどもそうで、直下に津軽ダムが建設中です。ここもあと何年かすると水没してしまいます。
 石淵ダムは下流に胆沢ダムが完成し、やはりいずれは水没することとなります。丸山ダムなどは堤体そのものに重なる感じで新丸山ダムが作られる予定です。

目屋ダム

石淵ダム
 こうして、解体されたり水没するダムは、今後二度と見られなくなるわけですから、ダム好きさんは、出来るだけ早めに訪問されるのが良いと思います。

中野: 本日は、楽しいお話をどうもありがとうございました。

 
(参考)萃香さん プロフィール

 

[関連ダム]  浦山ダム
(2011年1月作成)
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  [テ] ダムインタビュー(86)前田又兵衞さんに聞く「M-Yミキサ開発と社会実装 〜多くの方々に支えられ発想を実現〜」
  [テ] ダムインタビュー(87)足立敏之氏に聞く「土木の人間は全体のコーディネーターを目指すべき」
  [テ] ダムインタビュー(88)門松 武氏に聞く「組織力を育てられる能力は個人の資質にあるから, そこを鍛えないといけない」
  [テ] ダムインタビュー(89)佐藤直良氏に聞く「失敗も多かったけどそこから学んだことも多かった」
  [テ] ダムインタビュー(90)小池俊雄氏に聞く「夢のようなダム操作をずっと研究してきました」
  [テ] ダムインタビュー(91)米谷 敏氏に聞く「土木の仕事の基本は 人との関係性を大事にすること」
  [テ] ダムインタビュー(92)渡辺和足氏に聞く「気象の凶暴化に対応して,既設ダムの有効活用, 再開発と合わせて新規ダムの議論も恐れずに」
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